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第1話 蹴り魔女は憤慨したのでとりあえずテレビをぶち壊した

「トゥクントゥクンめもりある ガールズサイド」という恋愛アドベンチャーゲームをご存じだろうか。


ご存じないならば、是非知っておいてもらいたい。


私は「トゥクめも」シリーズの大ファンである。


6人いる素敵な殿方を自分のパラメーターを育成してアピールし、デートし、学園イベントを意中の相手と過ごし、そして卒業式の日に学園の伝説の樹の下で殿方の婚約を申し込まれる。


なんというお姫様なストーリーだろうか。


私はそのゲームにハマっていた。


1作目を小学校の頃に「ZAMAZON」で中古で衝動買いし、その魅力に惚れてしまった。

2作目は何と自分の名前を呼んでくれるシステムが追加され、燃えに燃えた。中学校はいつだって殿方と熱い夜を過ごし、寝坊していた。

3作目になると、私は「トゥクめも」の同人誌にまで手を出してしまった。そして、そこで貴婦人たちとの激論を昼夜行うようになってしまった。

そして、4作目が満を持して出たのだけれど・・・けれど・・・けれど・・・。


「ありえねぇ!!!」


私はゲームを一通りクリアしてから天井からつるしてあったサンドバックにケリを入れた。


ゴッというくぐもった音が聞こえる。


4作目はクソゲーになった。

少なくとも私にとっては……。


なぜなら……。


「なんで、男どもがみんな婚約済みなのよ!クソかよ、不倫野郎!!」


そう。4作目は巷の悪役令嬢ブームに乗っかってしまい、全攻略対象に殿方の婚約者たちがライバルとして登場した。


「なぜ、私が!よりによって元カレNTRねとられた私が人の男を攻略しなくちゃならねんだよ!!」


開発者サイドの中に、ビッチか、変態でも混ざっていたのだろうか。


攻略対象は全部で6人。6人が全員、婚約者がおり、ヒロインである私がルートを攻略してしまうと、婚約者たちは「ざまぁ」されてしまう。

王子の婚約者は一人寂しく余生を送り、

公爵の息子の婚約者は嵐の中で行方不明になり、

大臣の息子の婚約者は馬車で暴漢に殺され、

司祭の息子の婚約者は放浪の旅に出てしまい、

騎士の息子の婚約者はその後、事故で死んでしまい、

学者の息子の婚約者は他国の貴族に売られ、戦争に巻き込まれ死んでしまう。


なぜか女性向けなのに、女性にしこたま犠牲が強いられるゲームになっていた。

6人の婚約者のうち4人死亡とか、死亡率高杉!


なぜ、恋愛ものは同性同士で争わなければならぬのか……。


いや、それはわかる。

私だって、元カレをめぐって敗北した女だからだ。


ですが、世の女性たちよ。

なぜ、男は罪に問われんのだと疑問に思ったことはないだろうか。


「トゥクめも4」の舞台設定はヨーロッパ風味の異世界ファンタジー的な国。

婚約式を終えた男女は、成人を迎えれば結婚する。

ヒロインは未だに婚約者がいないため、男たちからいろいろとアプローチを受ける。

しかし、事もあろうに「婚約済みの男ども」がアプローチを仕掛けてくるのである。


『親から決められたレールよりも、自由意思を尊重してほしいと思うよ、僕もね☆』


この王子のセリフでテレビを一台蹴り壊したのはここだけの話である。


「いやいやいや! 貴様、曲がりなりにも国を背負う王子だろう!? 税金で食ってんだろう!? ノブレスオブリージュのために権力を固めて足場築くための結婚だろうが! 貴様が自由意思っていうなら、婚約者の女の方はどうなるんだよ!」


と、セリフの一つ一つがヒロインである私を不快にさせた。

今までは婚約者がいたとしても、「わかりました。私も、恋を見つけていきます」と物分かりの良いライバルしかいなかった。

しかし、この死……いや、間違えた……「4」はそんなライバルの生存をも許すことはなかった。


じゃあ、何か。

男に捨てられた女は死ねと?

唾付き女は生きる価値がないとでも!?


私は「トゥクめも4」と自分自身の体験が頭の中で錯綜し、それを忘れるために酒を煽った。

そして、歩道橋の階段で足を滑らせて死んでしまった。

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