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85話 魔王

こちらの作品は、小説サイト「カクヨム」の方で最新話を更新しております。

是非そちらでもお読み頂けると妹達が喜びます。

「なんて……不気味な精神力……」


「まるで嘆きですわ……」


魔王城に足を踏み入れた妹達が感じたのは、強い思いが込められた精神力だった。


「浴びているだけで不快になりますわね。早く魔王と片をつけて帰りますわよ」


「シロ、魔王はどこにいるかわかりますか?」


「たぶん……一番上……そこから精神力を……感じる」


「ひとまず正面の階段から上がっていこう」


「そうですね。道中何があるかわかりませんので、警戒して進みます」


キュウカの言葉で歩を進める。


階段を登り、次の階段を探す。まるでダンジョンのようではあるが、あの時とは何もかもが違ってしまった。今は階段を見つけた喜びも、次の階層への期待もありはしない。


慎重に魔王城を探索するシスハレナインだが、ある程度進んだところでおかしな点に気付く。


「誰も……いない」


「おかしいですわね。ここまで警備が手薄だとは思いませんでした」


「イツキの話によれば魔王軍っていう魔王に仕える奴らがいるって聞いてたけど」


「罠かもしれません。引き続き警戒して進みます」


魔族一人いない魔王城をひたすら進む。だが、結局最上階に着くまで一度も魔族に出会わなかった。


「ここに魔王が?」


「感じる……強い精霊力……」


「確かに、これはヤバいデス……」


「何故、道中誰もいなかったのでしょうか……」


「キュウカ、今は考えても仕方のないことですわ。全ては魔王に直接聞けばわかるはずですの」


遂に魔王のいる場所に辿り着いたシスハレナイン。


禍々しい意匠の扉にイクスが手をかける。


「いくぞ。皆、準備はいいな」


イクスの最終確認に頷く妹達。


遂に魔王と対峙する時が来た。


扉を開けて中に入ると、そこはどれだけ奥に続いてるか分からないほど暗闇の空間だった。


警戒しながら歩くシスハレナイン。進むごとに絨毯の脇にあるランタンに火が灯る。


およそ二十歩ほど歩いたところで、道の脇に設置されているランタン全てに火が灯る。進行方向を照らし出すランタンを目で追うと、光の終わりには椅子に座って項垂れる、仮面をつけた人の姿があった。


シスハレナインの位置からでは魔族なのか、別の何かなのかも判断が出来ないが——


「魔王……!! 貴様ぁぁぁぁぁあああ!!」


シロの魔法が魔王を襲う。


魔王は避けることも、防ぐこともせずに正面から魔法を受けた。


「シロ! まずは話を聞きます! お兄ちゃんの情報がひとつでも欲しいです!」


「今ので怒ってないといいけど……」


「私はスカッとしましたわよ。怒るなら怒るまでですわ」


魔法により発生した煙が徐々に消え、魔王の姿が再び見えてくる。


「な……効いていないのか……」


「防いだ感じはしなかったね……これはヤバいかな」


「あなたは、魔王ですか?」


シロの魔法が全く効果が無いことに驚く妹達。シロの魔法はただの魔法ではなく、精神力が込められているので魂が存在するものであれば必ずダメージを受ける。効果が無いということは、圧倒的な精神力を持っていることに他ならない。


続けてキュウカが魔王に声をかけるが——


「…………」


返事はなかった。


「兄上に……何をした!!」


痺れを切らしたイクスまでもが斬りかかる。


魔王に向けて唐竹切りを放った。だが、イクスの手には仮面を切った感触しかない。


(身体に届いた筈だ……何故……?)


その時、魔王の顔を隠していた仮面が縦に割れ、ポトリと地面に落ちた。


その顔を見たイクスは驚愕する。


「あ……あぁ……














兄、上……?」









刀は手から零れ落ち、イクスの手は自然と魔王の手を握っていた。その時——



〔イクス姉さん!! 絶対にその手を話さないで!! みんなが来てくれるって信じてたよ……本当にごめんなさい〕



聞き覚えのある声がシスハレナインの脳内に響いたのだった。


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