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83話 守護と復讐

こちらの作品は、小説サイト「カクヨム」の方で最新話を更新しております。

是非そちらでもお読み頂けると妹達が喜びます。

「住民の方々はこちらへ! 急いでください!」


「逃げろ!! あれが来るぞ!!」


 一体の異形の人が逃げている住人達の元へ迫る。


「あっ!!」


「キュウちゃん! 立って!」


 走っていた子供が転んでしまい、母親が駆け寄った。


「ギギャガギャガギャガギャガギャガギャガギャ」


 逃げている人々に気づいた異形の人が親子に迫る。


「あ……あ……」


「お願いします……神様」


 我が子を抱きしめる母親。最後の瞬間が迫っていることを察し、最早祈ることしか出来ない。


 異形の人は口を広げ、魔力を溜めている。

 散々王都の街を破壊してきた攻撃を、親子に浴びせようとしていたその時——


「結界魔法ですわ!」


「はぁぁあ!!」


 異形の人の攻撃が親子に迫るが、突然張られた結界がそれを防いだ。


 それと同時に迫る一人の女性。


 この世界では珍しい細さの剣を両手に握り、異形の人に切りかかる。


 異形の人は肩から腰に掛けて刀傷を負う。体からは緑色の血が流れていた。


「お怪我は!」


「大丈夫です! あ、あなた方は……」


「助けに来ましたわよ。早くここから逃げることをおすすめしますわ! ここは私達が食い止めます!」


「あ、ありがとうお姉ちゃん!!」


 突如現れたヒーロー、イクスとロッカにお礼をいって立ち去る親子。


「この傷でも倒れないとはな。見た目だけではなく中身まで異形と見える」


 イクスが刀でつけた傷は徐々に塞がり始め、まるで何事もなかったかのように無表情で二人を見る異形の人。


「全くその通りですわ。ですがこれだけに構っている場合ではありませんよ。異形の人は他にも多くいます」


「もちろんだ。速攻でケリをつける」


 再び刀を構えるイクスと、本気モードのときだけにステッキを使うロッカ。

 異形の人との戦いが始まった。


 —————————————————————


「ジーコ、右側から2体!」


「任せてくださいまし!」


 王都の南側にある時計台展望広場にいるのはジーコとウド。


 二人は遠距離からジーコが、中距離と近距離をウドが処理していた。

 高所で王都が一望できるため一番見通しがいいが、狙われやすい場所だ。


 右側から迫る2体の異形の人に矢を射るジーコ。矢は的確に異形の人の頭を貫く。


「やはり精神力が効くようですわ」


「そうみたいだね。それなら——」


 ウドは何かを思いついたのか、妹回線で念話をする。


『キュウカ、ハーピ手伝って! 私の歌を王都に流すよ!』


『歌……ですか?』


『そう! 精神力が効くみたいだからね。私の歌に精神力を乗せて、あいつらを弱らせられないか試してみるよ!』


『そういうことですか。ハーピ、出来ますか?』


『任せてぇ! 眠るよぉ』


 ハーピがそう言うと、ウドの前に精神力で出来たマイクが出現する。

 そして王都の夜空に浮かぶ精神力のスピーカー達。すべてハーピが夢で生み出したものだ。


「サンキュー、ハーピ。夜空の下でのワンマンライブ、悪く無いね」


 マイクをスタンドから取り、大きく息を吸い込んだウド。


「私も特等席で楽しませて頂きますわ! 迫る敵は任せてくださいまし! 存分に、おやりなさい!!」


 ジーコの言葉に頷くウド。ルドが聞いたら羨ましがるだろうなと思い、ウドは歌い始める。


 —————————————————————


 ウドの歌が王都に響き渡る。


「キュウカの精神力も使ってますわね。力が溢れてきますわ」


「奴らも弱ってるデス! これはナイスフォローデス!」


 サンキとチセは学園付近に迫る異形の人を対処していた。

 ウドの念話後、王都に響き渡るウドの歌と精神力で弱る異形の人。


「チセ、上空に向けて一直線に奴らを集めることは出来るデスか!」


「今ならいけそうですわね。引力魔法!!」


「姉御、儂はどうしたらいい!」


「ポチは地面で弱っている異形の人を上空に投げるデス!!」


「了解した!!」


 チセが上空に引力魔法を発動し、一箇所に異形の人を集めていく。サンキのペットであるドラゴンのポチも参戦していた。


「頃合いデス……王都に蔓延る悪は……私達が滅する……デス!!」


 久しぶりに中二病が全開のサンキ。ノっている時のサンキは誰にも止められない。


「くらうデス!! アルティメット・カタストロフィィィィィィ!!」


 テンションの高さに加え、キュウカの強化もあるため普段の3倍の威力で放たれる絶対の必殺技。


 王都の空を白く染める光は、王都に住む人々の記憶に残る救いの光となった。



 —————————————————————



「にいさん……」


「なんだこれ……どうなってんだよ……」


 初めて魔界を訪れたシロと、それに同行してきたイツキは言葉を失った。


 ルドの街を見つけることは難しくなかった。街にはルドの魔力の痕跡が残っているからだ。その痕跡のする方へ行けば街があった場所へは辿り着く。


 だが、街は既に本来の姿をしていなかった。


 街の八割を抉っている巨大なクレーター。残っている建物も全壊しており、瓦礫しか残っていない。


 クレーターから感じるのは、何者のものかわからない精神力の痕跡。

 そこからルドの精神力は感じられない。


「実はさ……魔界に来てからずっと頭に変な声が聞こえるんだ……」


 ふと、イツキは不思議な声について語る。


「これを見るまでは気のせいだと思いたかったけど……そうも言ってられないみたいだ……"魔王城に集まれ"ってずっと聞こえるんだよ。多分母さんやモミジやメズ、村の人がみんないないのは、魔王城に向かってるんじゃないかな……」


 なぜイツキはこの話を濁していたか。それが意味することは——


「にいさんは……魔王に……殺された……」


「いや、まだそうと決まったわけじゃないけど……これを見たらさ……」


 実際はそうではないのだが、この状況で考えられる答えはそれしかなかった。


 魔王と対峙したルド。ルドは消え、魔王は魔王城で魔族を集めている。

 普通に考えれば、魔王がルドを殺したと考えるだろう。


「許さない……」


「え……?」


 俯いているシロの小さな呟きを聞き取れなかったイツキは、思わず聞き返す。


「許さない!!」


 シロが顔を上げ、今までに聞いたことがない声で叫ぶ。その目には涙が溢れていた。


「にいさんを……亡き者にした魔王……魔族……全部……全部許さない!!」


「シロ……どうしちゃったんだよ……シロ!!」


「絶対に……絶対に……絶対に……許さない」


 シロの手からは、強く握りすぎたせいか血が滴り落ちている。

 その姿を見たイツキは、何も言うことが出来ずに圧倒されてしまった。


「一度帰る」


「え……あ……うん……」


 踵を返すシロ。その目は復讐の色に染まっていた。


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