78話 デートの終わり
こちらの作品は、小説サイト「カクヨム」の方で最新話を更新しております。
是非そちらでもお読み頂けると妹達が喜びます。
また、カクヨムの方で妹とイチャイチャするだけの物語も執筆しております。
そちらはなろうには転載しませんので、是非カクヨムでご覧ください。
「やりましたわね!」
「はい。みんなのお陰で上手くいきました。お兄ちゃん、どうだった?」
どうだったもこうだったも、
「凄すぎだよ……正直びっくりした」
ぶっつけ本番でここまでの技を繰り出すのもそうだし、その威力も相当なものだった。
9つ子だから成せる技か……くそぅ!! 俺も混ざりたかった!!
〔兄さんが混ざったらパワーバランスぐちゃぐちゃでみんなが大変だよー〕
わかってるけど……わかってるけども!!
まぁいい。今は妹達の成長を喜ぼう。
「本当に強くなってるな、みんな」
この短期間の間にも、常に精神力と向き合ってコミュニケーションを取らなければこんなことは出来ない。
今まではただ強くなるという信念のもとに頑張って訓練をしていたが、どのくらい強く? どのように強く? その力で何を成す? という部分が明確になったことで、成長の速度が上がった。
流石は妹達だ。
俺は一人一人の頭を撫でる。
いくつになってもこれが一番嬉しいみたいだな。
さて、九首を討伐したことで空間の景色が変わった。
ここは最後の部屋のようだ。奥に祭壇があり、宝箱が存在する。
表向きのゴールはここだな。ヒュドラーの様な存在がいる以上、あちらは裏ルートと考えた方が良さそうだ。
もしかしたら……別のダンジョンにもあのような存在が居るのかもしれない。
いずれ調べる必要があるだろうが、まずはダンジョンクリア報酬だ。
「宝箱ですわ!!」
「相当強敵だったから、絶対良い物入ってるよね!」
「お兄様! 早速開けてみてくださいまし!」
みんなが討伐したのに俺が開けるのか……他の妹達を見ても同じことを考えているようだな。
それじゃ、ここは代表者として宝箱を開けさせて貰おう。
見たこともない意匠の宝箱を開ける。
この大きさ……相当な物が入っているはずだ。さぁ、何が出てくる!
完全に宝箱を開ききって中を確認する。こ……これは……!!
〔えっとね……アイテム名は"海蛇の絆"だって〕
はい没収ぅぅぅぅぅぅぅぅ。
ふざけた物をクリア報酬にしやがって。
こんなものは勇者の腕と一緒に亜空間で眠っていて貰おう。
「兄さん、中身はなんだったの?」
「あぁ。良くない物だった。"海蛇の絆"だって」
「凄く……嫌な名前だね……」
「完全に悪影響がありそうだからこれは俺の方で預かるよ。みんなへのクリア報酬は俺が代わりに何か準備するからそれで勘弁してくれ」
「まぁ! そんな物よりもお兄様の贈り物の方がよっぽど素敵ですわ!」
既に思い付いてはいるんだけどな。贈れるのは妹達が卒業する頃になりそうだ。
「それじゃ、今日はもう帰ろう。あまりここに長居はしたくないしね」
「そうですね兄上。ここは嫌な雰囲気が漂っております」
イクスの言う通り、ここはヒュドラーの気配を色濃く感じる。恐らく裏ルートと何かしら関係のある場所なのだろう。
1人であれば隈なく調査してもいいが、今は妹達とデート中だ。デート中に仕事をするなんて野暮なことはしない。
今日はこのまま帰還しようと思ったとき、部屋の中央に魔法陣の様なものが浮かび上がった。あれは入り口へ直通の転移魔法陣かな?
〔調べてみたけど大丈夫みたいだよ〕
流石アルちゃん。また変な場所に飛ばされたら、たまったもんじゃないからな。
俺達は魔法陣の上に乗り、地上へと帰還した。
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「おわっ!!」
最下層の魔法陣で転移し、景色が切り替わったところでそんな声が聞こえた。
どうやらここはダンジョンの入り口のようだ。
「あ、あれ? えっと……おかえりなさい?」
「ただいま戻りました」
「ご無事で何よりです……え? 転移で……え?」
入り口にいるギルド職員さんが何やら動揺しているが、そのままその場を立ち去る。
一応ダンジョンの最下層は攻略したが、この件については秘密にすることにした。それを話す上で裏ルートへの道を説明しなければならないからだ。
あんな無限湧きのモンスターハウス、普通の人間であれば絶対に攻略不可能だろう。
知れてしまえば一攫千金を狙って突入する輩も現れかねない。無駄に死者を増やす必要はない。
運良く最下層に飛ばされたとして、どちらにせよ死ぬことになるだけだしな。
「私としては話してもよろしかったですけど」
目立ちたがりのロッカは攻略したって言いたいよね。ごめんね。
注意喚起した方が被害が減るのでは? という意見もあったが、知られてしまった方が被害が大きくなる気がした。
もしかしたら過去に奇跡的にあのルートを辿って死んでしまった人もいるかもしれないが、本当に奇跡でもない限り辿り着けないような隠し方をされていたし、四大属性の魔力を浴びせなければ開かない仕様ではあったが、尋常じゃない魔力量が必要だ。
〔兄さんはサクッと開けてたけどねー〕
尋常じゃない魔力量を浴びせる必要があるのだ。
ということで、言わない方が被害が少ないという結果に落ち着いた。
知れてしまえば、それこそ魔術団のトップを50人くらい集めて魔力を注げば開けてしまえるし。
「でも本当にあれはなんだったのでしょうか」
「海蛇を座するものって言ってましたわね……」
海蛇を座する……前世で星が少し好きだった俺にはわかる。うみへび座だ。
うみへび座は前世の神話で確かヒュドラーをモチーフにしているという話がある。
そしてうみへび座の心臓に位置するのがアルファルド——"孤独なもの"といわれる。
関係性があるとしか思えない。
だが、その関係性だと俺がシステムの一部である可能性が高くなる。そして奴は言った。【イレギュラーに取り込まれた】と。
もしかしたら、俺の魂が本来のルドを乗っ取ってこの世に産まれてきたという可能性もある。恐らく俺の魂がイレギュラーだ。
アルちゃんは何か心当たりがあるのかな?
〔……〕
返事がない。ただの屍のようだ。
何も言わないということは、言いたくないか言えないことなのだろう。知らない時は知らないって教えてくれるし。
〔兄さんの馬鹿……でも、まだ教えてあげない〕
なるほど。であればこの話は一旦置いておこう。
アルちゃんが必要なときに話してくれるはずだ。
「今考えてもわからないことかもね。それよりも、今はみんなの成長を喜ぼう。久しぶりに外で晩御飯でも食べようか?」
「いいですわね!! 私もお腹が空いてきたところでしたわ!」
「久しぶりの外食デス!!」
どうせならユナさんやメイド妹達も誘ってみんなで外食にしよう。
あれ……そうなると、男一人に女性が16人か。なんとも……ハーレムだ!!
うちも大所帯になったもんだな。
〔兄さん、夕食終わってからでいいんだけど一つ頼んでもいい?〕
お? アルちゃんの頼みか。なんでも聞くぞ。
〔ありがと。でもどちらかというと野暮用だよ。私達の街に、魔王軍の使いの者が来ているよ〕
うへぇ……仕事の話かぁ〜。
ま、アルちゃんの頼みだから、もちろんいくけどね。夕食食べて家に帰ってお風呂に入って妹を寝かしつけた後に。




