77話 ナインズ・ソウル・バースト
こちらの作品は、小説サイト「カクヨム」の方で最新話を更新しております。
是非そちらでもお読み頂けると妹達が喜びます。
また、カクヨムの方で妹とイチャイチャするだけの物語も執筆しております。
そちらはなろうには転載しませんので、是非カクヨムでご覧ください。
「先程のは一体……」
「気持ち悪かったですわ……」
「それに、ここはどこデスか?」
「ここは、どうやら250階層らしい。ちなみに最深部だって」
「250階層ですの!? 確かここのダンジョンの最深到達階層は52階層だったはずです……」
人類はまだこのダンジョンの半分も進めていなかったらしい。
「どうしよっか? この先がボス部屋らしいけど」
「正直あまり乗り気はしませんわね……何か卑怯な手を使った気がしますわ」
確かに……正規のルートでは確実に無いだろう。だが、
「ただ、出来れば今後みんなにはこのダンジョンに立ち入って欲しくないんだ。さっきの奴に何をされるかわからないからね」
「そうだねお兄ちゃん。私達もあんなことがあれば流石に入りたいとは思わないよ。ってことは……」
「そう、今回がこのダンジョンを攻略できる最後のチャンスだ」
さて……妹達はどうするか。
「私は……行こう」
「そうですわね。私も行きますわ兄様」
イクスとジーコの言葉を受け、他の妹達も賛同する。
「いくデス!」
「うん……」
「まぁ仕方ないよね。ここに送ったやつが悪いってことで」
「しょうがないですわね」
「やるからにはボコボコですわ!」
「寝るぅ?」
「ハーピ、今回は寝てもらう必要がありそうです。流石に最深部になると何が起きるかわかりませんからね……」
よし、今回は俺も全力で行こう。
そう思って俺の愛剣である"勇者の腕"を取り出す。
「ねぇお兄ちゃん……何してるの?」
「いや、俺も全力でやろうかなって」
「兄上……申し訳ないですがここは私達に任せてはくれませんか……」
「兄さんが出て来たらすぐ終わっちゃうよ……兄さんと相対して3秒生きれる魔獣がいたら既に世界は終わってるよ……」
そんなことはないぞ。あの黒マントだって結局は逃げられたしな。
だが、魔獣という単位であれば俺が手を焼く存在はほとんどいないだろう。
「一緒に……戦いたかった……」
「それじゃほら、私と一緒に回復でもしてようよ」
そう言って俺の手を取ってくれるウド。やる! 俺回復やる!!
ということで勇者の腕はしまっていざ、ダンジョンの最終ボス攻略だ。
俺達がボス部屋の前に立つと、ひとりでに扉が開く。扉を潜るまでは先の状況はわからない。
警戒しながら扉を潜り、亜空間へと進む。
辿り着いた先は、まるで月の上のような黒い空一杯に星が敷き詰められている荒野だった。
「これは……」
「綺麗……ですわね」
「くる……」
シロがそう言うと、地面が大きく揺れ始める。
「飛行魔法」
このままでは不意打ちをくらいかねないので、影響の無い空中へ避難する。
すると、地面が裂け、亀裂から巨大な魔獣が出現した。
「あれは……ヒュドラー!?」
「いや、似ているだけの紛い物だね。現にあれは魔獣だし」
「嫌なフォルムだね……目標は九首と呼称します! 私の指示に従ってください!」
キュウカが号令と共に全体にバフをかける。おぉ、これが支配の力か!
どこかそそり立つような力を感じる!
「イクスを前衛に置き、サンキとウドは遊撃! ジーコは中距離で前衛補助! 後衛はシロ、ロッカ、チセにお願いします! 私とハーピは眠りと指揮で全体の支援です! ウドは前衛の体力管理もお願いします!」
うむ。仲間はずれだ。とりあえずキュウカの肩を叩いてみる。
「お、お兄ちゃんは……全体の補助!」
よしきたっ。腕がなるぜ。完璧な補助をしてみせよう!!
九首の姿が完全に地上に出るやいなや、巨大な咆哮をする。開始の合図か。
もちろん俺は事前に妹達に防音魔法で対策済みだ。みんな各々やってるけど念のためね。
そしてそして……魔法無効に属性攻撃無効、状態異常無効ね。空間には猛毒効果に防御力減少大に攻撃力減少大?
馬鹿者。無効もデバフも全部無効だ。
さすが最下層といったところか。極悪な効果てんこ盛りだな。さっきのモンスターハウスといい、こんなの普通の人間に突破できるわけないだろ。
ダンジョンとしての経営方針がなっていないな。もっと冒険者をワクワクさせるべきだ。無理ゲーは良くない。
どうせならバフ盛り盛りにしておこう。
妹達に魔法無効、物理無効、攻撃力増加極大、防御力増加極大、魔法力増加極大に自動回復効果極大。まぁこれ以上やると流石にヌルゲーになっちゃうからこのくらいにしておくか。
〔既にヌルゲーだよ……〕
「お兄ちゃん……やり過ぎだよ……」
そ、そうかな? でもほら! イクスなんかは喜んでるよ!
今も「兄上の加護!! いつもの50倍の力が出ます!」とか言ってびしゃびしゃ九首を切り刻んでるし、ジーコも体の周りに500本くらい矢を召喚して「串刺しですわ!!」とか叫んで楽しそうだよ。
あ、サンキのあの構え——
「空を裂き海を割り大地を滅する、くらうデス。アルティメット・カタストロフィィィィィィィィイイイイイイイ!!」
いつもの10割増しのテンションで放ってる。あぁ……九首にどデカい穴が空いちゃった。
それでもまだ終わりじゃない。流石に自動再生を無くしたら一瞬だからな。
「その穴……使う……」
お、次はシロの番か。え……穴に雷? えぐいことするな……
九本の首がぐちゃぐちゃにのたうち回っている。そうとう痛いらしい。
「兄さんのせいで体力管理もする必要ないしなぁ」
そう言って一本の首に向けて執拗に銃弾を打ち込むウド。それはそれで嫌そう。
「チセ、いきますわよ」
「ロッカ、手を」
ロッカとチセは手を繋いでいる。二人の共同魔法か。
九首の頭上に重力魔法の巨大な球が落ちていく。潰れちゃうねそれ。
全ての首に当たるのは避けたようだが、それでも四本の首は完全に潰れた。
首はすぐに再生してしまうが、それでもトラウマもののダメージだろう。
ハーピは今回は俺とキュウカの側で眠っている。念のためだな。
キュウカも一応攻撃が来る際の声がけは行っているが、攻撃に関してはもうみんなにお任せ状態だった。
「なんか今日みんなテンション高いよ……やっぱりお兄ちゃんがいるからかもね」
そう言いながらなんだかんだキュウカも扇子をぶんぶん振って風の斬撃を飛ばしている。一本の首が切れては生えて、切れては生えるを繰り返していた。
俺の補助があるとはいえここまで一方的になるか。さすがは妹達だな。
〔いや……兄さんの補助が一番……なんでもないや……〕
だが、永遠に再生するので終わりが見えない。負けることはない戦いにこれ以上時間をかけるのも勿体ないだろう。
「そろそろ終わりにしようか? 俺が後片付けしてもいいけど」
「それには及ばないよお兄ちゃん。ハーピ、起きてください。イクス! あれをやります!!」
「んん……おはよぉ」
「わかった! みんな、一旦引こう」
「拘束……してから戻る……」
シロが九首を拘束して、みんなが一度こちらに集まる。
何か秘策でもあるのだろうか?
みんながこちらに戻ってくる。そして、輪になって手を繋いだ。
「まだ試したことはないんだけどね。考えてはいたんだ」
「見ててください兄上。私達の成長した姿です」
妹達は目を瞑ると精神を統一する。9つの魂が共鳴して1つになっている。
これは……精神力を合わせている?? すごいなこの力。
〔みんながんばってるからね。兄さんが忙しい時にもこういうことが出来そうだって話し合ってたんだよ〕
なるほど……監視魔法でも最近やけにみんなで集まって話し合っているところを見かけた。こういうことだったのか。
「みんな、いけそうですか?」
「あぁ、問題ない」
「私もですわ」
「大丈夫デス!」
「うん……」
「いけるよ!」
「目に物を見せてやりますわ!」
「やってやりますわ!」
「問題ないよぉ」
妹達の精神力が合わさり、輪の中心に光の玉となった。
その光の玉を九首へと放つ。
「「「「「「「「「ナインズ・ソウル・バースト!!」」」」」」」」」
精神力の力で魂が消滅していく九首。
魂が完全に無くなったところで、九首の肉体も魔力へと還ったのだった。




