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75話 妹達とダンジョンデート

こちらの作品は、小説サイト「カクヨム」の方で最新話を更新しております。

是非そちらでもお読み頂けると妹達が喜びます。

 何故かAランク冒険者になってしまった俺と妹達は、とりあえずダンジョンに行くための許可証を発行して貰った。


 その間もギルド支部内のざわつきは収まらかった。本当にリアクションいいなここの人達。


「こちらが許可証になります」


「ありがとうございます。早速向かってみます」


「ダンジョンへはどう行かれますか? 一応乗り合いの馬車が出ておりますが」


 それはもちろん——


「転移で」


 そう言い残してギルドからダンジョン近辺へと転移した。


 今頃ギルドでは大騒ぎだろう。あそこの人達リアクションいいし。


「ここがダンジョンの街ですか?」


 インフェル帝国の新しいダンジョンでは簡易的な建物が並んでいてお祭りのようだったが、前に発見されたダンジョンでは既に街が出来上がっている。インフェル帝国のダンジョン周辺もそのうちダンジョンの街に発展していくだろう。


「そうだね。ダンジョンを中心とした街だから、ほとんどの人が冒険者らしいよ。あとは商人とかかな?」


 ダンジョン産の素材は、その地域の魔獣からは入手できない物がほとんどなので商人も高値で買い取るという。

 まさに一攫千金の街。


「早速ダンジョンへ向かいましょうお兄様!」


「そうですわ! 先にダンジョンを攻略されたら勿体ないですわ!」


 ロッカ、チセ、落ち着こう。何十年も最深部まで辿り着けてないのにたまたま今日踏破されるなんてことはない。それが出来るとすれば俺達だけだ。


 街の警備兵に許可証を見せて街に入り、そのままダンジョンを目指す。もちろんこの街でも王都やギルドと同じように目立ちまくりだ。


 本来であればダンジョンに入る前には様々な物資を揃えた上で入場する物だが、亜空間には何かあった時のための食材なども入っているため準備も必要ない。


 ということでダンジョンの入り口へ最短に一直線に向かった。


「ダンジョンにご入場ですか?」


「はい、10人ですが問題ありませんか?」


「問題ありませんよ。それでは許可証とギルドカードの提示をお願いいたします」


 俺達はギルドで発行された許可証とギルドカードを提示する。それを目にしたギルドの職員は目を丸くした。


 そりゃそうだ。Aランク冒険者なんてほとんど訪れることはない。彼らはもっと美味しいダンジョンであるシシ王国のダンジョンなどを拠点にしているからな。


 一攫千金とはいえ、ダンジョンでも稼げる稼げないがあると聞いた。

 そういう意味ではヒュトラ王国のダンジョンは、ダンジョンの中ではあまり稼げないダンジョンらしい。入門向けダンジョンだったかな。


 それでも低ランク冒険者からしたら充分においしいのダンジョンだ。


 もしかしたらまだ誰も立ち入ったことのない階層に、もっと美味しい物が眠ってるかもしれない。


 妹達とのデートには持ってこいだな。


「か、確認致しました! い、いってらっしゃいませ!」


 国の推薦の冒険者と判明して、相当畏まってしまった。うん、仕事頑張れよ。


 さて。ついにダンジョンに入場だ。


「ここが……ダンジョンですか、まるで外の様ですね」


 ヒュトラ王国のダンジョンは、開けた草原と森林のエリアから始まりか。


「そうですわね。兄様はインフェル帝国のダンジョンにも行かれたのですわよね? そちらもこのような景観でしたの?」


「階層によっては似ているところもあったね。基本の構造は5階層ごとに切り替わっていくはずだよ。インフェル帝国のダンジョンは、5階層までは洞窟のような細い道が続いている階層だったね」


「そうなのですね。ここから、次の階層へ続く階段を見つけるのですか?」


「そうだね。探知魔法を使えばすぐだけど、どうする?」


 早く進もうと思えばグングン進んでいけるが、今日はデートで来ている。


「う〜ん、それだとなんか作業っぽくなっちゃうから、せっかくなら自力で探してみようよ」


 ウドも同じことを考えていたみたいだな。


「そうだね。それじゃ、出現する魔獣を倒しながら次の階層への階段を探そう」


「腕が鳴りますわ!」


「最速クリアですわ!」


 ここに来てロッカとチセのやる気が一段階上がったな。


 そのまま1階層を探索する。といっても浅い階層なので、出現する魔物も雑魚ばかりだ。それはつまり——


「ふん」


「はっ」


「ふん」


 イクスが全て一瞬で処理してしまうのだ。


「イクス! ずるいですわ! 一人で全て倒しているじゃありませんか!」


「あぁ、すまない。前衛として一番最初に敵とコンタクトする以上はこうなってしまう」


「これでは私達はただの散歩ですわ!!」


 確かにチセの言う通りだ。イクスは一刀両断で魔獣を斬り伏せている。

 多分どの妹でも余裕すぎるため9人が皆活躍すのは難しい。


「それじゃこういうのはどうだ? 階層ごとに戦闘員を一人決めるんだ。そうすればみんなも平等に活躍できるし、他の子がどんな力を使えるかも把握出来る。一石二鳥じゃないかな?」


「妙案ですわ! 流石はお兄様です!!」


 やった、褒められた。


 ということで戦闘員は交代制に。とりあえず1階層はこのままイクスに任せることに。


 イクスは騎士団にいるときは剣を使うけど、シスハレナインで動くときは刀を使う。最初に比べて刀の使い方も上手くなった。抜刀術なんかも使ってるし。

 もしかしたら9つの斬撃を一度に出す技とか出来るかもしれない。今度やってもらおう。


「ふぅ。余裕でしたね。早く深い階層で強者とやりたいです」


 そうだ、ちょっとバトルジャンキーだった。


 問題無く2階層に進み、次はジーコの番だ。


「私の特訓の成果をご覧に入れますわ!!」


 ジーコは弓を手に持っているが、構えることは無く空中に矢を生み出し、そのまま射る。それは精神力も混ざっている攻撃だった。いい攻撃だ。アルテミスに仕込まれているな。

 多分弓は手に持たなくてもいいはずだが、俺がプレゼントした弓を気に入っているのでわざわざ持っているらしい。可愛い。


「どうですか兄様!」


「あぁ、アルテミスに教えられてまた一段と強くなったね。命中力も威力も申し分ない。流石はジーコだ」


「そ、そんなに褒めても何も出ませんわよ!!」


 素直に褒めると照れるところは変わらないらしい。可愛い。


 2階層も難なく進み、続いて3階層。サンキの出番だ。


「サンキ、わかってると思うけどアルティメット・カタストロフィはダメだよ」


「も、もちろんわかってるデス!」


 これはやる気だったな。ダンジョンの中であんな攻撃したら何が起こるかわからない。サンキには悪いが今回は我慢して貰おう。


 アルティメット・カタストロフィを使えなくてもサンキは最強だ。

 魔獣が沸いた瞬間に詰め寄り、一瞬で粉砕する。

 あ……素材が……まぁ素材目的ではないので問題ないが。他の冒険者が見たら泣くだろう。


 グローブの使い方も上手くなっている。魔力を纏えるグローブだが、左右別々の属性を纏うことで攻撃のバリエーションが多彩だ。


「物足りないデスが仕方ないデス……」


 サンキ、下の階層にいったらもしかしたら使えるかもしれないから。最悪俺が反対側で受け止めてあげるから。


 続いて4階層。シロの番だ。


「フェル……」


「アウッ!」


 フェルに乗って全部お任せしていた。まぁダンジョンの中は本物の自然とは違うからな。見た目は草原でもそこに生命は無いらしい。シロも残念がっていた。


 もしこれがダンジョンの外で、尚且つ本物の草原であればシロは無双状態だろう。一つの軍といっても過言では無い。

 いずれ直接見てみたいな。シロが操る自然軍団。


「終わった……お疲れ様……フェル……」


「アウゥ!」


 仕事が終わってフェルの召喚も解かれた。普段は家にいて、シロはいつでも呼び出せる状態だ。


 続いて5階層、ウドの番。


「久しぶりに銃使っちゃおっかな。最近は前衛ばっかだったし」


 ウドには元々短剣と銃を渡していたが、シスハレナインの中で部隊を分けることがある都合上、イクスと同じタンクの役割をする機会が多かったので長剣も渡していた。


 ウドはなんでも一定以上はこなせるからな。それがウドの強みでもある。


 だが、単体で戦闘する場合は俺があげた銃を使って戦闘する。一人で戦闘する機会がそもそもあまり無いので出番が少ないが、ウド自身も銃を気に入っていた。


「なんかいいよね。心臓を撃ち抜く感覚って。歌と同じだよね」


「私にもなんとなくわかりますわ」


 ジーコと意気投合しているが、言ってることは野蛮すぎる。歌とは多分違うぞ……あれ? 一緒なのかな?


 どちらにせよウドは単体でも強い、パーティでも強い。ほんと、個性に悩む必要なんて無いくらいだ。



 そのまま何事もなく6階層への階段を探していたとき、アルちゃんの声が脳内に響いた。


〔兄さん、面白い物があるよ。多分これ……隠し部屋だね〕


 あらら? それは見過ごせないなぁ。


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