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74話 妹達と出掛ける計画

こちらの作品は、小説サイト「カクヨム」の方で最新話を更新しております。

是非そちらでもお読み頂けると妹達が喜びます。

 学園が休みの日。


 いかん。


 暇になってしまった。


 魔界に国を作る計画は、今のところ順調に進んでいる。


 問題があるとすれば、俺のやることが無いということだ。基本アルちゃんに任せておけば問題ない。俺はいろんな物事のGOサインを出したり、重要な人物が訪れた際の対応をするだけだ。


 とはいっても今は俺が対応する問題も起きてないし、まだ周知もされていない勝手に国と名乗ってる場所に訪れる者もいない。


 ということで、完全にやることが無くなってしまった。


 思えば、生まれてから今までずっと忙しかった気がする。


 妹達を守る為に必死で力を付け、暗部として王子の影として活動し、家にいないことも多い日々。


 アポカリプスの話もあれから聞かないし、教会にも動きはない。


 勇者関連のことも一旦はストップ状態だ。

 恐らく2年後、魔王の復活と共に何かが起きると予感している。


 この2年の間にやるべきことは、世界の歯車を狂わせる国を作る、妹達の自衛能力強化、妹達の観察、妹達との触れ合い。そんなところか。


 アーシェとの結婚はアーシェが学園を卒業してからみたいだし、それまでにアーノルドがいろいろと準備してくれるのだろう。


 最も優先度の高い妹達の自衛能力強化は、毎晩俺の精神力に触れていることで叶っている。となると——


 妹達の観察と触れ合いだな。

 最近はゆっくり話す時間も取れていないほど慌ただしかった。


 そうとなれば即行動だ!


『今手が空いてる人っている?』


 念話で妹達に問いかける。すると、順番に念話が届いた。


『私は騎士団で訓練を行っておりました』


『私は精霊の森で弓の特訓ですわ』


『ポチと稽古デス!!』


『自然と……触れ合い……』


『私は貰ったアコギで路上ライブでもしようかと思ってたところだよ』


『私達はまちのゴロツキと決闘ですわ!』


『全員ボコボコにしてやりますわ!』


『お昼寝するぅ』


『私も生徒会の仕事かな』


 ふむ、みんな忙しいようだ。どうしよ。


『どうかなさいましたか兄上?』


『いや、ちょっと時間が出来たから手が空いてる人がいればお出掛けでもしよ——』


『空きました』


『今戻りますわ』


『ポチはもうダメみたいデス! なので大丈夫デス!』


『フェル……帰るよ……』


『兄さんに歌を聞いてもらうのもいいね』


『もう終わりましたわ!』


『全員ボコボコですわ!』


『どこでお昼寝するぅ?』


『よくよく見たら期限がまだの仕事だったみたい』


 おぉう。なんかちょっと嬉しい。


『よし、それじゃみんなでお出掛けでもしようか』


 そんなこんなで、今日は妹達とお出掛けをすることになった。


 家で妹達を待っていると、続々と妹達が帰ってくる。


「みんな、急にごめんね」


「兄上のためならばいつでも駆けつけます。それで、どこに向かいますか?」


「今考えてた限りだと、街に行ってお買い物か、シシ王国でカジノとかかな。海でバーベキューとかでもいいけど」


「私は何でも構いませんわ」


 でもこれといってピンとくるのが無いんだよなぁ。

 あ、そうだ。


「ヒュトラ王国のダンジョンもありだね」


「ダンジョン! 一度行ってみたかったデス!!」


「確かどこのダンジョンも最深部まで辿り着いた人はいないんじゃなかったっけ?」


「そう……」


「いいですわね! ダンジョンを攻略したとなれば目立ちますわ!!」


「そうですわ!!」


「ただ一つ問題があって、俺とロッカとチセは多分入れないんだよね」


 それは、ダンジョンを管理しているのがギルドだからである。

 少し前に俺とロッカとチセはヒュトラ王国のギルド支部で冒険者の資格を剥奪されてしまった。


 半年経てば再登録が可能だが、残念ながらまだその期間は過ぎていない。


 さて、どうしたものか。


〔そんな時に使うのが上司じゃん〕


 あ、それはいい案だ。


『アーノルド、ヒュトラ王国のダンジョンに入りたいんだけど』


『顔を出せ』


 お、すぐに返事があった。


「ごめん、もしかしたら大丈夫かもしれないから少し待ってて」


 俺はそのままアーノルドの自室に転移する。直接転移したからルルとララの襲撃はなかった。


 忙しそうにしているアーノルドが1枚の紙を取り出し、サインと押印した上で差し出してきた。


「国の推薦状だ。それをギルドに持っていけ。この国限定で効果を発揮する」


 手を止めることなくそう話すアーノルド。流石、仕事が早いぜ。


「ありがとう」


 やはり持つべきは有能な上司だ。責任は全部被ってもらおう。


「ただいま。どうにかなったよ」


「それはなんですか?」


「あぁ、コネを使って国からの推薦状を貰ってきた。これがあれば一応ギルドに登録出来るみたい」


 ギルドはどこの国にも属さない団体だが、各国に置かれている以上ある程度は融通が効く。


 今回のように国から冒険者に推薦することも可能だった。


「さて、それじゃまずはギルドに向かおう」


———————————————————————


『見ろ、シスハレナインだ』


『噂の騎士団の新しい部隊だろ?』


『9人揃うと貫禄あるな』


『てか……可愛すぎないか?』


『俺はイクスさん……いや、ハーピさん推し……あああ! 決められん!』


『おい、真ん中にいる奴は誰だ?』


『あぁ、兄らしいぜ。全く羨ましい限りだ』


 久しぶりに街を歩こうというロッカからの提案を受けて歩いてギルドに向かうことにしたが、なるほど。これが狙いだったか。


 めちゃくちゃ目立っている。


 そりゃそうだ。こんな可愛い妹達が目立たない訳がない。そして、妹達はシスハレナインとして国に認められた部隊だと国からの発表もあった。その式典を見た者であれば容姿も知っている。


「皆で一緒に歩くとやはり反応が違いますわ!」


「一度試してみたいと思っていたところですわ!」


 まぁロッカとチセが満足しているならいいか。別に危険も無いし。


 俺達は少しだけ街をざわつかせながらギルドへ向かった。



 ギルドに到着して中に入ると、街と同じようにざわつき始めた。


 そりゃそうだ。荒くれ者の冒険者達ばかりのギルドに突然花が咲けば戸惑いもする。


 以前ロッカとチセと来た時は認識阻害をしていたので、俺達がゴブなんとかを潰した新人冒険者とわかる奴はいないだろうが。


 もちろんここには国の式典なんかに出るやつもいないので、シスハレナインという存在も知らない。


 ということはだ。


「おぉ嬢ちゃん達、こんなところに何の用だ?」


「依頼か何かだろ。その依頼、このゴブリンスレイヤーが受けてやってもいいぞ」


「その代わり、報酬には晩酌を付けて貰うがな!」


 ガハハハと笑う2人組の男。あれ……何かどっかで聞いた名前だな。


 そのとき、ロッカが魔法を発動した。


「あなた方に構っている暇はありませんわ。それとも、また以前のように無様を晒したいのですか?」


 地面から鎖が数本出現する。これは、以前このギルドでこいつらを懲らしめた魔法だな。


「て、てめぇ! まさかあの時の!」


「この前の治療代でいくらかかったと思ってやがる!」


「あら、私達にそんな口を聞いてよろしくて? 私達は今冒険者では無いですので失うものはありませんのよ?」


 というかこいつらは処罰されなかったのか。Cランク冒険者だから甘やかされたか。


「そこまでじゃゴブリンファイターよ」


 その時、ギルドの奥にある扉が開かれギルド長のババンが現れた。


「じぃさん! 止めるんじゃねぇ!」


「そうだ! こいつらには借りを返さなきゃ——」


「馬鹿者! お主らでは相手にならんわっ! のう、シスハレナインよ」


 流石にギルド側の人間は知っていたか。俺達が入って来た時もギルド職員は気付いたようだし。


 冒険者達は『シスハレナイン?』『有名なパーティーか?』といった反応を見せている。


「シスハレナインはこの国の騎士団に新たに設立された部隊だ。ここにいる9人の娘達だけで騎士団を相手に出来ると聞いておる」


『えぇぇぇぇぇ!?』


 冒険者達から声が上がる。前から思ってたけど、お前らリアクションいいな。


「して、そのシスハレナインが何の用じゃ?」


「国からの推薦状がありますのでこれを」


 アーノルドに貰った推薦状をババンに渡す。ババンは推薦状を確認して、


「うむ。この推薦状の通り、シスハレナインをこのヒュトラ王国限定でAランク冒険者とすることを認める。これでダンジョンも好きに入れるじゃろう。ただし他国では冒険者ではないことを忘れるでない」


『え、えぇぇぇぇぇぇぇ!? Aランク冒険者!?』


 わお、アーノルドそれはやりすぎでしょ。

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