73話 集まれ!俺の国の住民
こちらの作品は、小説サイト「カクヨム」の方で最新話を更新しております。
是非そちらでもお読み頂けると妹達が喜びます。
俺の国予定地に街が出来た。
早すぎるぜアルちゃん、あれからまだ数日しか経っていない。
1000体のアンドロイドアルちゃんがぶっ通しで作業していたんだ。もちろん魔法もガンガン使っている。
そりゃこういうことにもなるか。
さて、問題は住民についてだが、既に候補者が集まっている。
アルちゃんにお願いして、近隣の魔族達に声をかけて貰っていたのだ。
やり方としては、姿を現さずに脳内に直接声を送った。
「◯日後、ここから◯の方角にある草原に、魔族に救いをもたらす者、現る。皆の集いを待つ。」
これだけで集まるか? とも思われるが、脳内に直接声が響くなんて原理がわからないし、無駄に神格化されてとりあえず見に行こうとする奴が何人かいるはずだ。
その魔族達に街並や機能を見せた上でここに住まないかと提案すれば、あとは村に持ち帰って勝手に盛り上がってくれるだろう。
ということで街の外には既に数十人の魔族が集まっている。各方面から訪れるので、アンドロイドアルちゃんが一箇所に誘導してくれたというわけだ。
「お集まりの皆さん、本日はお越し頂きありがとうございます」
ある程度魔族が集まったところで、俺はお立ち台に上がり挨拶をした。
「今日ここに集まって頂いたのは、皆さんにとある提案をしたいからです。その前に一つ言わせてください。あなた方の文化は、はっきり言って時代遅れです」
ここで集まった魔族達から怒号が上がる。おぉ、何気に元気じゃないか。怒ってる怒ってる。
『毎朝水を汲みにいき、食事は狩った動物や、育てた穀物類のみ。それも各村だけで共有していて、娯楽もない日々。やることは毎日魔王に祈り、献上品を作るだけ。それは、生きていると言えるのでしょうか?』
わざわざ一人一人の頭に語りかける。この方が話をちゃんと聞いてくれそうだからだ。
『人間は、生まれてから死ぬまでに、自分自身でやりたいことを決めて行きます。それぞれに違う物語があって、それを人生と呼びます。あなた方の人生は、魔王の為に生きることですか?』
今までは思考ロックしていたのだろう。それ以外を知らないのだから。
『皆さんにも、自分の生きたいように生きる権利があります。何が出来るかを知らないだけなのです。この街は、それを見つけることが出来ます。皆さんの人生を、豊かにしてみませんか?』
ここまで問いかけて反応を伺う。
この段階でうさんくさいと帰ってしまう魔族もいるが、それでも半分以上は残ってくれた。もしかしたら、今までの生活に不満があった魔族なのかもしれない。
「残ってくださった皆さん、ありがとうございます。それでは、皆さんの人生を豊かにする街を見て頂きましょう」
ここからは、アンドロイドアルちゃんが魔族1人につき1体同行して街ツアーとなる。ツアーが終わった後、街の中央広場に集まって最後のデモンストレーションを行って今日は終わりだ。
まず、魔族の人達にはパンフレットを渡した。意外にも人間界と同じ文字が魔界でも使われている。そして一応読み書きも出来るようだった。イツキ曰く、最低限は親から学んでいるらしい。献上品の管理簿をつけるために必要なのだとか。
もちろん伝わっていない言葉もあるので、そういったのは注釈をつけて魔族でも理解できる物にしておいた。
まず初めは住居の紹介。街にある住居は、一旦周辺の村全ての魔族に割り振ってある。もちろん調査の段階で名前などの個人情報も確認して、戸籍が既に出来ている。アルちゃんが魔族達の脳内から情報を収集して作ってくれたものだ。
それでも住居は余りまくっているし、ここに住まない人もいるかもしれないが、一旦は周辺の魔族がすぐに住める状態にしておいた。
そして次が商店街。魔族には少し難しいかもしれないが、貨幣制度を導入しようと考えている。それも、この世界には存在しない魔力マネー、通称"魔ネー"。ぶっちゃけ電子マネーと同じだ。
人間界との交流が盛んになる頃には、銀行で各国の貨幣と交換出来れば問題ないだろう。それまでに各国の貨幣を集める必要はあるが。
ここら辺の管理はアルちゃんにお任せである。俺が死んだらどうなる? 問題もあるが、アルちゃんは俺が生み出して独立してるAIなので、俺が死んでもこの世界に魔力があり続ける限り存在し続ける。
そうなると……アルちゃんって死なないのかな? それはそれで可哀想な気もする。
〔そこら辺は大丈夫だよ。自分で選べるしね〕
後にアルちゃんの未来についても一緒に考える必要があるな。今はとりあえず魔族の件を片付けてしまおう。
魔ネーの導入にあたり、ここに住む魔族全てに魔法で生み出したスマートフォンを配布する。
スマートフォンは魔道具だ。実装されている魔法を使い様々なことが出来る。
通話も可能、メールも可能。ゆくゆくは娯楽として動画の配信なども行えるといい。また、「アルちゃん」の掛け声で街で住む上でわからないことをなんでも回答してくれる機能も付けてある。
一応魔族以外にも、この街に入るときには必ず配るようにするつもりだ。魔力があればいくらでも生産可能だしな。
国外に持ち出されても解析不可能だし、解析されたらされたで上手く文明に取り入れて繁栄させてくれても構わない。どちらかといえばアルちゃんに作って貰った魔力ネットワークのシステムの方がヤバいし。
完全に今のこの世界では理解が追いつかない技術てんこ盛り。
さすがに一度の説明で全てを理解することは出来ないだろう。なので今回はとにかくなんかすごいという印象を植え付けて、他の魔族を呼び込む広告塔になってもらう。
住居はもちろん水を汲みに行かなくても水が出るし、トイレも排泄物を水に流せる。お風呂も完備しているし、キッチンもあるから火を起こす必要も無い。食材も商店街で手に入る。学問を学びたければ図書館もあるし、教育機関も作る予定。魔族にわかりやすい利点はこんなところか。
街を見ながらざっくりと説明して回る。既に興味津々でアンドロイドアルちゃんに質問ばかりする魔族もいる。彼はいいな。ここに住んでくれたら何かしら役職を与えても良さそうだ。
そんなこんなで予定していたツアーが終わった後は、中央広場に集まって貰ってデモンストレーションだ。
広場の中心にお立ち台を設置し、魔族は周りに集まってもらった。
「どうでしょうか? この街に住めば皆さんの人生がより豊かになることを少しでも理解して頂けましたか?」
まるで詐欺師のようなセリフだな。魔族達には響いたようで拍手をしてくれたが。
「最後に見ていただきたいのは、この街を象徴するシンボルです」
俺は空に向かって手を掲げ叫ぶ。
「顕現せよ。天空城」
俺の言葉に合わせて、中央広場の上空に天空城が出現する。
突然現れた巨大な物体に魔族は慌て、腰を抜かす者もいた。だが、一向に落ちてこない天空城を見て不思議がっている。
そのまま天空城を設置予定の窪みまで移動し、ゆっくり地面に降ろす。すごい、ぴったりハマった。その間魔族は理解が出来ないといった表情でずっと天空城を見ていた。
「皆さん、合言葉はこうです。"人生が欲しければ、あの城を目指せ"この建物は、魔族繁栄の象徴です」
俺の言葉を聞いた魔族は、そのままゆっくりと膝を追って祈りを捧げ始めた。
『魔王様が降臨なさったのだ』
『魔王様は私たちの希望だ』
待て待て、俺は魔王じゃないんだが……まぁ初めは勘違いして貰って、住んでから勘違いを正していくでもいいか。
そんなこんなで初めての住民募集営業は終わりを告げた。あとは一度自分たちの村に帰ってもらい、魔族を引き連れてきてもらうだけだ。
さぁ忙しくなるぞっ。魔界から人間界への道路の整備、妹達の街作り、住民の中からの代表者選出、仕事の斡旋、さらなる営業活動。
楽しくなってきたじゃないか。
世界一の国を、俺は作るっ!!




