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71話 妹達の指令

こちらの作品は、小説サイト「カクヨム」の方で最新話を更新しております。

是非そちらでもお読み頂けると妹達が喜びます。

「アルちゃん、これどうにか出来そう?」


「うん、問題なさそうだよ。全く相変わらず妹使いが荒いんだから」


 俺は天空城に来ていた。今は学園のお昼休みだ。


 ここは、サンキの必殺技お披露目サード・ミッションで見つけた場所。


 サンキの「アルティメット・カタストロフィ」で少し抉れてしまった部分は既に修復済みだ。


 サンキのペットになったポチ曰く、ポチ以外は住んでいないとのこと。ちなみにポチは最近サンキに格闘術を仕込まれたおかげでメキメキと力をつけているらしい。


 天空城は、巨大な岩の上に城が建っており、中もめちゃくちゃ豪華である。


 とりあえず今日はアルちゃんを100体程連れてきて、城の掃除と調査をして貰った。


 何故こんなことをしているかというと、俺の国のシンボルとして使うためだ。


 城を一から作るのは手間がかかる。そんなにこだわりも無いし、あるものを使えばいいじゃんと思ってずっと放置していた天空城を使うことにした。


 これなら地面を掘って城を置けばいいし、緊急時には住民を乗せて脱出も可能だ。


 いい物は有効活用しないとな。


「兄さん、調査と清掃は大体終わったよー。どの部屋も家具とかは古いものばっかりだったから一旦処分して新しく作っといたよ。あと、この城が浮いてる理由は地下の飛行術が組み込まれてる魔石が原因みたい」


 飛行術の魔石か。この規模の物を浮かし続けてるのは凄いことだが、取り立てて欲しい物でも無い。このままこの城に付けといていいだろう。


「ありがとう。飛行術の魔石はそのままでいいよ。あとは土地を探すだけか」


「それも別働隊が既に終わらせてるよー」


 話が早いな。アルちゃんが独断で動いてくれたのか。


「私達が行った村の周辺の魔族を探索して、その魔族達から平均して良い感じの場所があったんだ。開けてるし、人間界とも近いから交流も出来ると思うよ」


 アルちゃん様々である。こんなだったら本当にもっと早くアルちゃんを生み出しておけばよかった。


「本当だよ! 全く!」


 さて、一旦学園に戻ろう。こっから先は授業が終わってからだ。

 俺は転移で学園に戻り、午後の授業の支度をする。


 今日は朝から生徒達の様子がおかしかったが……何かあったのだろうか?


 お昼休みの終わりを告げる鐘が鳴り響く。俺はタイミングよく教室へと入った。


「さ、午後も授業を始めるぞ」


『やっぱり昨日は何か変なもの食べただけだよ……』


『確かに……いつもの先生だ……』


 こんな感じで、何かを疑っている様子だ。アルちゃん一体何をしたんだ……


「昨日の続きで空気の圧縮について話そう。昨日はどこまでやったっけ?」


「はい! みんな圧縮が出来るようになったところです!」


「え……え?」


「あ、まだ先生程の威力ではありませんが……」


「いや……そうか、そうだったね。みんな理解が早くて助かる。素晴らしい生徒達だ」


 やっぱり理論をぶっ飛ばして空気の圧縮を教えたんだな……


〔私は兄さんのようにやったもん!〕


 ありがとうアルちゃん。それはそれですごいよ。


「よし、それじゃ次は空気の圧縮についての理論をしっかり理解しようか。これは他のことにも応用が効くから是非ちゃんと学んで欲しい」


「はいっ!」


 とりあえず軌道修正っと。



 ——————————————————————



 放課後、アーシェを送り自宅に帰る。


 本当はこの後も魔界にいって直接現地を確認しようと思ったが、それは睡眠時間を削ればいいので後回しだ。


 それよりも先にやるべきことがあった。


「あ、ユナさん。今ちょっといいですか?」


「ルド様、どうなさいましたか?」


 俺はメイド長であるユナさんに声をかける。とあるお願い事をするためだ。


「実は、この家に住む人が1人増えるかもしれません」


「そうですか。部屋数は余っていますので準備しておきます」


「はい、よろしくお願いします。あと、ユナさん含めメイドの子達にも確認して欲しいのですが、魔族と聞いて嫌悪感を抱いたりはしますか?」


「魔族ですか? 御伽噺でなら聞いたことはありますが」


 一般の魔族に対する認識はその程度か。まぁ魔王の季節もここ数十年単位で被害があったわけでは無いしな。あくまでそういう文化が残っているというだけなのだろう。


「そうですか。であれば大丈夫です。確認は一応お願いします。ダメな子がいればこの話は無かったことになるので」


「魔族の方を迎え入れるのですか?」


「はい。1人だけ面倒を見ようと思います」


 これでユナさんへのお願いは完了だ。


 俺はイツキを人間界に招こうと考えている。


 色々悩んだりもしたが、魔族と人間の交流が可能かを見極めるためにイツキには少し手伝って貰う。


 その代わりとして、イツキには魔法を教えてあげようと思う。俺の権限を使って学園に入学させるつもりだ。


 魔族の本来の魔力量を考えたら、詠唱魔法で悲惨な魔法しか出来ないなんてことはない。身体を構成している細胞の元が魔力であるだけに、人間よりも魔族の方が魔力の扱いに長けていることは間違いないのだ。


 魔族が魔法を使っていないことも気になる。


 昨日訪れた村では、魔法を生活に活かしている場面に一度も遭遇しなかった。


 単に普段は魔法を使わないのかとも考えたが、イツキとの戦闘のことを考えればわかる。単純に使えないのだ。多分教えられていないかなんらかの理由で伝わっていないと推測している。


 システム的に不可能であれば、それはそれでなんらかのアクションも起きるはずだ。


 あとは単純に魔族の生態調査だな。常識、価値観なども一緒に生活すればわかるだろう。


 さて、明日もやることが多いが今日も終わっていない。これからまた魔界へ行って調査だ。


 といきたいところだが、実はまだやらなければいけないことがある。


 それは……妹達を1人ずつ交代で寝かしつけるという、妹達の指令だ。


 何故こんなことになったのか、事の発端は今日の朝であった。


 まず朝の散歩のときにずっとシロの顔が赤かった。俺と手を繋ぐときも、人差し指で俺の掌をつんつんして何かを調べているようだった。


 シロとの散歩が終わって帰宅し、みんなで朝食を取ったときも、妹達がどこかよそよそしい。


 みんな顔が赤いし。

 熱でもあるのかと思って近くにいたジーコのおでこを触ると、「ひゃっ!? 兄様! 急に触らないでくださいまし!」と言われて俺は以前と同じように死にかけた。


 ジーコに謝られまくってなんとか一命を取り留めた俺は、昨日俺の記憶が無い間の出来事を妹達に聞いた。


 なんと、あの時俺の精神力が光となって身体から溢れ出したという。


 俺は無意識のまま妹達へ近寄り、手で頭を撫でた。


 そのとき、俺の妹達への思いが強すぎて妹達の精神力に干渉したのだ。


 こんな話を聞いたことがある。


 女性は、脳でセックスをする。


 そう。妹達は俺の精神力に呑まれた。文字通り、触れただけで昇天してしまったのだ。


 それにより、俺の精神力が収まるまで何度もそれを繰り返したという。


 なんてことをしてしまったんだ……理性が壊れるとこんなことになってしまうのか……


 それ故に、シロもジーコも触れることを躊躇ったり、妹達がよそよそしいという状況が出来た。


 だがおかげで発見したこともあった。それは俺の精神力に触れた後から、妹達の精神力も高まっているという点だ。


 流石に昨夜のような強い刺激を与え続けるのは良く無いが、ある程度であれば妹達の成長に繋がるということだ。


 その事実が判明して話し合った結果、妹達が寝るときに手を握っているという使命を与えられたわけだ。


 これであれば妹達もリラックスした状態で俺の精神力に触れられる。

 俺としても妹が寝るまでそばにいれるなんて願ったり叶ったりであった。


 ただ、現在は妹達もそれぞれの部屋で寝ているため、1日ごとに交代でということになったわけだ。


 そういうことで今日はイクスの部屋にお邪魔する。


「イクス、入るぞ?」


「兄上、お待ちしておりました」


 イクスの部屋に入ると、薔薇の香りが心地よく迎えてくれた。イクスらしいエレガントな香りだ。


 イクスは既にベッドに座っており、ベッドの横には椅子が置かれていた。イクスのネグリジェ姿。イイネ。


「さぁ兄上、こちらにお越しください」


 招かれるままベッドの横にある椅子に座る。

 一緒にベッドで寝るなんてことはしない。流石にそれだとリラックス出来ないからな。あくまで寝かしつけるだ。


 俺が椅子に座ると、イクスもベッドに横になり寝る体勢になった。


「兄上……その……手を」


 恥ずかしながらそういうイクス。昨日はその果実で俺の脚を挟んでたのに、なんで手を握るので恥ずかしがるのだろうか。


 俺はイクスの手をとった。


「兄上、昔私に話してくれたあの話を久しぶりに聞かせてくれませんか?」


「えっと、イクスが好きだったのは梨太郎だっけ?」


「はい、川から大きな梨が流れてくる話です」


 覚えていたとはな。よしっ久しぶりにお話してあげよう。本当に子守みたいになってきたな。


「わかった。それじゃお聞きください。昔昔あるところに——」


 イクスは半分くらいを聞いたところで眠ってしまった。


 こうして見ると、まだ幼さが残る微笑ましい寝顔だ。


 俺はこの顔を見る度に思う。


 俺の全てをかけてでもこの寝顔は守り抜くべき価値のあるものだと。

 こうして安らかに眠れる日々を、俺は守り抜いてみせると。


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