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67話 結婚前の魔界旅行

こちらの作品は、小説サイト「カクヨム」の方で最新話を更新しております。

是非そちらでもお読み頂けると妹達が喜びます。

「みんな、おっはよー!!」


「おはようございます、ルド先生。何かいいことでもありましたか?」


「何言ってるんだい! 僕はいつも元気さぁ!!」


「ふふふ、今日のルド先生面白い」


 いつもと違う雰囲気の担任に、笑みが溢れる生徒達。

 だが、妹達の目は誤魔化せない。


『お兄ちゃん、今どこにいるの?』


 ——————————————————————



 ギクッ!! バレるのはやっ!!

 アルちゃんに任せたが失敗だったか!?


「アルちゃん、なんか苦情が来てるけど」


「私はちゃんと兄さんっぽくやってるもーん」


「どうかしましたか?」


「いや、何でもない。探索を続けようか」


 俺とアーシェとアルちゃんは、3人で魔界に来ていた。


 学校にいる俺とアーシェはアンドロイドだ。操作は一旦アルちゃんに任せている。


 本来であれば魔界に来る方をアンドロイドにして、本体は日常を送る予定だったが、アーシェを連れてくる都合上そうは行かなくなった。


 事前に妹達に伝えてもよかったが、そうなるとアーシェと2人では行かせてくれなかっただろう。アルちゃんは一旦考えないものとしてね。


 一応俺なりにアーシェと2人の時間を過ごそうと考慮した結果だ。妹達には内緒で来ることにした。


 その結果、こうして


『お兄ちゃん、帰って来たらちゃんと説明してね?』

『アーシェの様子もおかしいようですが、まさか2人でどこかに行ってるなんてことはないよね?』

『お兄ちゃんのキャラ、崩壊してるけど大丈夫? 戻って来た方がいいんじゃないの?』


 とキュウカからガンガン念話が飛んでくるが、全部『ごめんキュウカ!』で返している。決して蔑ろにしてる訳ではない。


 ま、脳内に延々とキュウカの声が響いてくるから、それはそれで幸せだ。ありだな。


 現在は魔界にある適当な森に来ている。雰囲気もさほど人間界と変わりはないな。


 もう少ししたら小さな村もあるようだし、今日は一旦そこで異種族交流といこうじゃないか。


「この先に村があるみたいだ。まずはそこを目指そうか」


「魔族に会うのですね! 緊張します……文献では恐ろし種族だと言われていますから……」


「多分そんなことないと思うどね。仮に何かあっても絶対守るから安心して」


「こんなところでイチャイチャしないで兄さん、ほら見えて来たよ!」



 ——————————————————————



「さて、今日は何の授業をしよっかな!」


「今日は空気の圧縮についての授業と伺ってましたが」


「そっかそっか、そうだったね! それじゃドーン!」


 アンドロイドルドが魔法を使うと、そこには栓付きの筒が出現した。この世界にはないペットボトルだ。


「空気の圧縮っていうのはね、空気を小さくしていくと、元に戻ろうとする力が働いてすんごい力を生み出せるってことだよ!」


 そう言いながら、アンドロイドルドは密封された筒の中に魔法で水を入れた。


「こんな感じで、今この筒の中には水と空気があるのはわかるよね? この状態で、筒の中に空気を入れてあげるとどうなると思う? そこの君っ!!」


「え、え……と……」


「ブップー! 正解は空気がどんどん小さくなって詰め込まれていくんだよ!」


 アンドロイドルドを操るアルファはノリノリだった。


「今度は魔法で空気を送り込むね。目には見えないだろうけど、今この筒の中には空気がパンパンだよ! これ以上入れたら割れちゃうくらいにね!」


「……」


「それじゃ、この栓を抜いたらどうなると思う?? そこの君っ!!」


「え、ええと……水が溢れる?」


「ブップー!! 正解は」


 アンドロイドルドが筒の栓を抜く。すると、筒がアンドロイドルドの手から消え、一瞬で天井に突き刺さっていた。


「ぶっ飛ぶでした!」


「……」


 いつもと違うルドの様子に、生徒達が付いていけてなかった。


「あれれー? 凄くなかった?」


「す、凄いですよ。でもなんか……」


「先生、いつもと違い過ぎて……」


「んー今日はそういうテンションなんだけどなぁ、わかった! それじゃ、応用版を見せればみんなも納得するよね?」


「え……?」


「今空いてるのは……第三訓練かな? えいっ」


 そう言って、生徒全員を第三訓練場に転移させたアルファ。


「え、え、え?? て、て、転移魔法!?」


「クラスの全員を一瞬で……!?」


「先生って……もしかしてヤバい!?」


「そうだよー、先生は凄いんだよー!」


 なお、ここまで妹達はジト目で見つめるだけである。


「それじゃ今度は実践的な魔法を見せてあげよう!」


 そう言って魔法で巨大な岩を出現させたアルファ。


「ただの風の魔法であれを粉砕するのは骨が折れるよね? 魔力を結構使って大規模な魔法を使わなくちゃいけない。けどね、さっきみたいに」


 そう言いながら圧縮した空気を掌に集めていく。肉眼でも確認出来るほど圧縮されていく魔力。その大きさはわずか5cm程だ。


「こんな感じで空気を圧縮して、あの岩にぶつけてあげると」


 圧縮が完了した空気を、岩めがけて発射したアルファ。

 すると巨大な岩はまるで土で出来ているかの如く簡単に崩れた。


「こんな感じに必殺の威力を持った攻撃になる。どう? スタイリッシュでしょ?」


 そう言って生徒達の顔を見たアルファ。すると——


「うおおおお! 先生今日はすごい授業だ!!」


「今までもすごかったけど、こんなに実用的なのは初めてだ!!」


「早速私達も試してみていいですか!?」


「もっちろん! みんなで試行錯誤してみて!」


 なんだかんだ教師のお仕事を楽しんでいるアルファだった。


 ——————————————————————


『お兄ちゃん、大変なことになってるよ』


 キュウカに念話でそう言われた。何をしたんだアルちゃん。


〔私はただ兄さんの代わりに授業しただけだもん! 空気の圧縮のね!〕


 確かに今日は空気の圧縮の授業だが……嫌な予感がする……やり過ぎてないよね?


〔大丈夫!!〕


 まぁアルちゃんがそう言うなら大丈夫だろう。まさか運動エネルギーの概念も説明しないでいきなり実践なんてことはしてないはずだ。


〔……〕


 してないはずだ。よね?

 まぁいい、今は魔界だ。


「さぁ、お茶でも飲んでください」


 俺達は魔界の村を訪れていた。

 最初に見つけた魔族に声をかけたら驚かれたが、すぐに村長を呼んでくれて今は村長の家に招かれた。


「人族の方がこの地を訪れるのは久しぶりですのぉ」


「人族がここに来たことがあるのですか?」


「そうですのぉ、ここは人間界からもっとも近い村ですからのぉ。たまに迷い込んできた人間が訪れることもあるのですのぉ」


 独特な喋り方だが、見た目はツノが生えただけのご老人だ。


「そうなのですね。魔族の方々は、人族に対してはどのような印象を持っているのですか?」


「他のところではわからないですがのぉ、私達の村では印象は悪くないですのぉ」


「そうですか、私達は今回魔族の方々と交流を深めたいと思ってこちらに伺ったのです」


「そうだったのですのぉ」


「よろしければ村の方々と交流してもよろしいですか?」


「もちろんですのぉ。村の者も外の世界をしれるいい機会になりますのぉ」


 よし、村長の許可も取ったし早速村の人に話を聞いてみよう。


 俺達は村長にお礼を言って家を出る。すると、


「あ! 兄ちゃんがニンゲンか!」


「ニンエン! ニンエン!」


「ニンゲンだよ! ルチェ!」


「ニンエン?」


「魔族の娘でしょうか? かわいいですね、ルド」


 二人の可愛らしい魔族の女の子にナンパされた。


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