66話 自重を忘れた軍事力
こちらの作品は、小説サイト「カクヨム」の方で最新話を更新しております。
是非そちらでもお読み頂けると妹達が喜びます。
「なぁ、国作っていいか?」
「……何を言い出すかと思えば、喧嘩を売ってるのか?」
「そうだよなぁ。国作るってことは、どっかの国から土地を奪うってことだもんなぁ」
「領地が欲しいなら手配する」
「それじゃ少し足りない。もっと今までの歴史に無いことをしたいんだよ」
俺は現在アーノルドに会いに来ていた。
それは、ふと思いついた案を相談するためだ。
世界のイレギュラーになるためには、歴史を大きく変えるようなことをしなくてはならない。
そこで建国だ。国が一つ出来るとなれば、歴史が動いたと言っても過言ではない。
「我が国の領地でないなら、心あたりは幾つかある。国が関与出来ないところだ」
「それは?」
「魔界だ」
魔界。
といえば異世界っぽい感じもするが、全然そんなことはない。
ただ別の大陸にあって、魔族が住んでいるところだ。魔大陸とか言った方がしっくりくると思うが。
逆に人間が住むこの大陸を人間界と呼んでいる。
現在、魔界と人間界は互いに不可侵となっていた。
ここは不思議だ。魔族と人間の違いと言っても、素粒子の素が違うだけであとは角があるか無いかくらいしか違わない。ほぼ人間と言ってもいい。
ただ、遠い過去には魔王が人間界を襲い、20年の魔王の季節が終わると今度は人間が魔界を蹂躙した過去などもあったみたいだ。
それで今も不可侵を貫いているらしいが、それから全く争いなどは起きていない。
そろそろ異種族交流してもいいと思うけどな。
ただ、気になるのは2年後に魔王の季節がやってくること。
ハーピの予知夢によると、2年後に俺は魔王と一緒に死ぬらしい。
だが、精神力とアルちゃんがカードとして存在する今、その未来にはならないと思うんだけどなぁ。
〔私もそう思うよ。システムの歯車である魔王が、今の兄さんを倒せるとは考えにくいよ〕
だよなぁ。
であれば、視察の意味も込めて行ってみるか。
「わかった。ちょっと魔界に行ってくるよ」
「何を言い出すかと思えば。お前にはアーシェのこともある。ある程度の勝手は許すが首輪から解き放つ気は無いぞ」
「嫌な言い方しやがって。妹は俺の首輪ですかー。アーシェが聞いたら悲しむだろうなぁぁぁ。安心しろ、日常はいつも通りだ。あくまで分身を送り込むだけだよ」
「ならば好きにしろ。国が出来た際には報告しろ」
自国のこと以外は興味無しか。まぁいいだろう。
話は終わったと言わんばかりに自分の仕事を再開したアーノルド見て、部屋を後にする。
ふは。
ふはははははは。
ふははははははははははははは!!
上司の許可は降りた。
これで俺は好き勝手やれる!!
〔今までも好き勝手しかしてこなかったけどねぇ〕
そうと決まればまずは準備だ。
俺はそのまま家に帰宅しようとしたとき、
「ルド様、アシュレイ様が自室にてお待ちです」
アーシェの付き人であるセドルに声を掛けられた。
なんだろう? ここに来る前、学校の終わりに送迎してきたところだが、その時には特に用事があるとは言われなかった。
とりあえずアーシェの部屋へと向かうか。
「わかったよセドル。伝えてくれてありがとう」
腰を折ったままの姿勢を保つセドル。将来アーシェの旦那になるからって、そんな畏まらなくてもいいけどな。
アーシェの部屋の前に着いたので、ノックを2回する。
すると、扉越しに返事が聞こえた。
「どうぞ」
この部屋はいい。入った瞬間、襲われることもないからな。
「失礼するよアーシェ。用事があるって聞いたんだけど」
「ルド、お待ちしていましたわ」
部屋に入ると、テラスにある大きなガーデンテーブルへと誘導される。ここはいつも妹達と一緒にお喋りをする場所だ。
メイドが椅子を引いてくれたので、お礼を伝えて座る。別のメイドが手際よく2人分の紅茶を準備してくれた。
その準備が終わると、メイド達は姿を消す。あれ、いつもは部屋の中に並んでたりするんだけどな。完全に2人きりになってしまった。
「それで、用事っていうのは?」
俺が質問すると、アーシェは椅子を持ってこちらに近づき座りなおす。そして、腕を抱きながら答えた。あ、おっぱい柔かぁい。キュウカと同じEランクだ。
「ルド、私は最近寂しいです」
なんと。
婚約者にこんなことを言わせてしまった。
確かに最近は俺の任務のせいでアーシェも登校出来なくなったりと迷惑もかけている。
「すまない、寂しい思いをさせてしまったな」
アーシェと婚約してからなんだかんだ1年以上が経っている。
基本はいつも妹達ラブラブラブラブラブラブラブラブラブラブラブラブの俺だが、流石にここまで一人の女性から慕われれば、愛情も湧いてくる。
この世界で20本の指に入るくらいには大事な存在だ。
アーシェのためにも、何かしてあげないたいな。
「そうだ、何かしたいことはないか?」
「したいこと……ですか?」
「そうだ。どこかに出かけたいとか、何かを食べたいとか、何かが欲しいとか?」
「それでしたら一つあります。子ど」
「どこかに出かけたいとか、何かを食べたいとか?」
「むぅ……はぐらかした……そうですね」
顎に手を当てて考えるアーシェ。そういえば妹属性だった。可愛い。
「そういえば、先日インフェル帝国に行ったと伺いました」
「そうだね。走っていったから1日半かかっちゃったけど」
「走って1日……半? インフェル帝国は馬車でも相当な時間がかかる筈ですが……それはいいのですが、その話を聞いて私もこの国の外に出てみたいと思いまして」
そうか、アーシェは国外には行ったことが無いんだったな。若干箱入り娘みたいなところがあるし。
まてよ……?
いいこと思いついた。
「アーシェ、実は俺も国外に用事があって、ちょっと国を出ようかと思っていたんだ」
「そうなんですか!? いつお戻りになるのですか?」
「いや、完全に留守にするわけじゃ無いよ。前にアーシェを連れ出した時みたいにアンドロイドを使って、切り替わりながら国外にいくつもりだ。だから夜には戻るし、昼間も半分はこっちにいる」
「そうなのですね。それでそのお話がどうしたのですか?」
これは一石二鳥の名案じゃないか。
「一緒に魔界探検に行かないか?」
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夕食後、俺は地下の秘密の部屋に来ていた。
秘密の地下だからと言って、別に巨大な蛇が住み着いてたりするわけではない。
部屋には厳重なロックがかかっており、俺の指紋認証が無いと入れない仕組みにしていた。そう、妹達でも入れない。
俺は認証盤の上に手を置き、扉のロックを解除する。
認証が完了すると、扉が自動で開く。
「アルちゃん、照明つけて」
〔ったく、AI使いが荒いね兄さんは〕
部屋の中は真っ暗なのでアルちゃんに照明をつけて貰った。
目の前に広がる光景——
ここには、1000体のアンドロイドを準備しておいた。
それらが停止状態のまま起立し、綺麗に整列している。
「それじゃアルちゃん、お願い」
〔ついにやるんだね! いっくよ〜!〕
アルちゃんの掛け声が聞こえると、アンドロイドの瞳に光が灯る。
容姿は俺の精神世界で見たアルちゃんの姿をそのまま再現した。
そして——
『おはよっ兄さんっ!』
1000体のアルちゃんが声を揃えて、微笑みながら俺に挨拶をしてくれた。
妹1000人出来たぁぁぁぁあぁぁぁあああああああ!!




