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55話 鍵

こちらの作品は、小説サイト「カクヨム」の方で最新話を更新しております。

是非そちらでもお読み頂けると妹達が喜びます。

また、カクヨムの方で妹とイチャイチャするだけの物語も執筆しております。

そちらはなろうには転載しませんので、是非カクヨムでご覧ください。こちらの作品は、小説サイト「カクヨム」の方で最新話を更新しております。

是非そちらでもお読み頂けると妹達が喜びます。

また、カクヨムの方で妹とイチャイチャするだけの物語も執筆しております。

そちらはなろうには転載しませんので、是非カクヨムでご覧ください。

「勇者について聞きたいとな?」


 勇者についての話を聞くために、俺はジーコの弓の師匠で、エルフ族の長でもあるアルテミスの元を訪れていた。


「あぁ。今度新しく出来たダンジョンを調査することになってな。勇者とダンジョンについての関わりが知りたい」


「ダンジョンについては妾も詳しくは無い。ここ100年くらいの出来事で、入ったことも無いからのう。勇者については……世界を救うものと言われておる」


 世界を救うもの。俺のイメージそのままだ。


 そもそも魔王という存在がいる時点で、勇者の存在は考えていた。なぜこの世には勇者がいないのだろうかと。だから勇者という存在がいることに関しては何も不思議に感じない。


 だが、封印されているという点がどうも引っかかる。


「世界を救うのに、封印されているのか?」


「そうだ。世界を救うとはどういうことだと思う?」


「魔王とかの世界の敵を倒したりするんじゃないか?」


「違う」


 アルテミスは、勇者について衝撃の事実を口にする。


「勇者の世界を救うというのは、全てを精霊に還すという意味じゃ」


「精霊に……還す?」


「そう。実態を滅ぼし、精霊に還す。その精霊を吸収し、神になる。それが勇者の狙いじゃ」


 なんということだ。この世の全てを喰らい尽くして神になるというのか。


「どうして勇者は神になりたいんだ」


「そこまではわからぬ。妾も勇者を目にしたわけではないからのう」


「それじゃなんで勇者について知っているんだ?」


「先代の長から語り継がれておるのだ。先代の時代に勇者は出現し、多くの精霊を喰らっていった。先代は、属性を司る四大精霊やドラゴンなどと共闘して、勇者を封印したという」


「何故封印なんだ? 倒せばよかっただろ」


「出来なかったのだ。勇者は不死身だったという。魔力の攻撃はもちろん、精霊の力でもどうすることも出来なかった。しかし、人間の中に勇者に有効な攻撃を行なう者がいたそうだ。それらを補助してやっとのことで封印することは叶ったが、その時には勇者に対抗出来る人間は力尽きていた」


 話が見えてきた。ということは、


「お主の想像通りじゃ。我らはそれらを"鍵"と呼んだ」


 俺の妹達が……勇者に対抗出来る唯一の手段だというのか。


「お主の妹を見た時に確信した。勇者の封印は解けかけておるとな。鍵は世界が勇者に争うために生み出した防衛本能じゃ」


 クソッ。俺の妹達がそんな過酷な運命を背負っているだと?

 ふざけるな。妹達にはただ健やかに育って欲しい。


 俺はこんな運命に立ち向かうために妹達を強くしたわけじゃ無い。

 何があっても自分の身を守れるようにという思いで強くしたんだ。


「なぁ、この話、妹には絶対にしないでくれるか」


「何を言っておる。いずれはお前の妹が勇者に対抗しなければならぬのだぞ。まだ時では無いが、いずれは伝える」


「頼む。俺が何とかする」


「無駄だ。お主も規格外だが、鍵では無い以上お主にはどうすることも出来ない」


「頼む」


 アルテミスは、数秒俺の顔を見ながら思考した。


「妹を思う兄は強いか……わかった。一旦はお主の動向を見守るとしよう。勇者もまだ復活してはいない。復活しても完全に力を取り戻すまでには時間がかかる。だが、刻一刻と状況が悪くなることは理解しておけ。妾は妾でお主の妹を鍛え上げておこう」


「ありがとう。恩に着る」


 アルテミスに深く頭を下げて感謝する。

 こうなれば本当にウカウカしていられない。一刻も早くインフェル帝国のダンジョンに向かわなければ。


「1週間に1回は顔を出す約束だが、しばらくは顔を出せそうに無い。その間、妹達を頼む」


「そのかわり、戻った時には朝まで抱いてもらうぞ」


 おっふ、こんな時に気が抜ける話はやめて欲しい。俄然早く帰ってくる気になっちゃうだろうが。


 俺はアルテミスに別れを告げ次の目的地へ転移した。



 ———————————————————————



 転移先はアーノルドの部屋だ。今回は扉から律儀に入ることはしない。


「まだ出発には早いが?」


「状況が変わった。今すぐ発つ」


「説明しろ」


「悪いがそれは出来ない。どこから情報が漏れるかもわからないしな」


「妹絡みか」


 この腹黒王子にはお見通しのようだ。俺が隠し通すことは大体妹に関係することだからな。


「まぁよい。お主がどうにかするというならば、過去の実績を考慮して自由にさせてやる。ただし失敗はするな。お主が扱っている仕事は、国や世界が動くことを忘れるなよ?」


 わかっている。結構勝手をしているということは。

 だが、この件に関してはどうしても俺だけで片付けたい。


 何故ならば、妹達がこの話を知ってしまえば、必ず鍵として戦う道を選ぶからだ。


 それだけは避けなければいけない。世界のために戦って死ぬ運命など、世界中が望んでも俺が許してなるものか。


「インフェル帝国にいる諜報員にはまだ連絡がいっていない。それを準備するための時間だからな。あとは上手くやれ」


「わかった。今回ばかりは恩に着る。ルル、ララ今夜王門に迎えに来るから準備しておけ」


 この場にいるルルとララに話しかけると、天井裏から「わかったワン!」「あいあいさニャ〜」という声が聞こえた。


 ひとまず家に帰って、今夜出ることを伝えてこよう。


 俺はそのまま家に転移する。


「ルド様、どうなさいましたか? こんな時間に帰ってくるのは珍しいですね」


「あぁ、連絡もなしにごめんねユナさん。昨日言ってた話だけど、急遽今夜発つことになったんだ」


「そうですか、それでは夕食は精が出るものを作りましょう。それまではどういたしますか?」


「ありがとう。それまでは地下に籠るから。一応誰も近づかないようにしてくれると嬉しい」


「畏まりました。そのように伝えておきます」


 メイド長のユナさんに連絡事項を告げて、そのまま地下へと移動する。


 地下には現在色々な設備が整っていた。


 戦闘訓練も行える広い空間や、魔法などに関する俺の知識をまとめた資料庫、妹達やメイド妹達専用の倉庫兼研究室や、念のための食料庫も存在する。


 今回俺が用があるのは、俺が作り出した戦闘マシンと模擬戦を行える設備だ。

 様々な状況を想定した訓練が行えるため、すごく重宝されている。


 今回は、鈍った体を叩き起こす必要があるので、夕食まで無限戦闘でいこう。


 戦闘マシンのタイプはランダムで、1秒ごとに1体追加、初期は100体、フィールドは王都を設定。擬似空間を生成。


 よし、久しぶりに戦闘訓練だ。




 ——6時間後


「お兄ちゃん、そろそろごは……」


 擬似空間で戦闘訓練を行う兄の姿を見たキュウカは、声を飲み込む。


 モニターに映るのは、血を流しながら大量の戦闘マシンを相手取り、魔法も無しで戦い続ける兄の姿だった。


 あのマシンは、妹達でも10対を相手にすると少し苦戦するくらいレベルが高い。


 こんな無茶な訓練をしているのは初めて見た。


 故に不安を感じる。


 帰宅した時に、メイド長のユナさんから兄が今日発つことを聞いた。

 予定が早まる時点で少し怪しんではいたが、この光景を見て確信に変わる。


 兄はまた私達に何も告げずに、守るために立ち向かうのだと。

 それも、今までにはない大きな敵に。ここまでしないといけないような。


「キュウカ、何をしておる。早く兄上を……これは……」


 キュウカが兄を呼ぶのが遅かったので、イクスが迎えに来た。


 だが、モニターを瞬間同じように固まる。


「私達は、お兄ちゃんの力になることは出来ないのかな」


「そんなことはない。兄上も頼ってくれている。だからこそ魔獣の件を私達に頼んで来たのだ」


「でも……そうだね」


 キュウカは何かを納得すると、装置を操作して兄に声をかけた。


「お兄ちゃん、夕食が出来たよ」


『あぁ、集中してて気付かなかった。ありがとうな。シャワーを浴びたらいくから先に戻っていてくれ』


 兄の返事を聞いて、そのままその場を立ち去るキュウカ。

 その背を追い、同じように部屋を出たイクス。



 二人の目には、強く燃え上がる決意の色が浮かんでいた。

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