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52話 八女の眠り

こちらの作品は、小説サイト「カクヨム」の方で最新話を更新しております。

是非そちらでもお読み頂けると妹達が喜びます。

「それじゃハーピ、寝てみようか」


「わかったぁ」


ベッドの上にペタン座りをするハーピは、大きなだいふくさんを膝に乗せたまま眠りにつく。だいふくさんの頭部は、上に乗る二つのメロン、いやスイカ、いや、ドリームで押しつぶされていた。


今はハーピの眠りの力を調べているところだ。


ハーピの能力を知ったのは妹達が入学したての頃。

そこから様々な調査を行ってきたが、完全な能力の解明には至っていない。


今判明していることは、


ハーピは、夢で見たことを現実に出来ること。

ハーピが夢に見た未来は現実になるということ。


だが、全てが全て現実になるわけじゃない。普段ハーピはだいふくさんや俺達兄妹と遊んでいる夢ばかり見ているしな。


能力の発動の条件としては、ハーピ自身の願いが関係してくる。

現在の状況をハーピが正確に認識した上で、ハーピが望んだ夢を見れば現実がそのままの通りになるのだ。


例えば今、夢を見ているハーピが望んでいることが現実になっている。


俺は全く意識していないのに、急にハーピのおっぱいを揉まなければいけない使命感に駆られた。


止めることが出来ない衝動に身を任せて、腕をハーピに伸ばす。


そして辿り着いた、秀峰の頂き。それを優しく手で包み込むが、全体の3割にも及ばない。神も恐るLランク。天は二物を与えずなんてことわざがあるが、ここに天にも想定外の二物がある。


そのまま揉みしだいているといると、やがてハーピが目を覚ました。


「おはよぉルド。どうだったぁ?」


おっほん。やられましたな。


ハーピが起きたことで冷静になった俺は、ハーピの胸から手を離す。あ、温もりが全然消えない。


「ハーピ、兄に何をさせたいんだ」


「だってルド、いっつも胸を見ているから」


バレていただと……!?

女性は男の視線に敏感だという逸話を聞いたことがある。


「そ、そんなことはないぞ。それより今回も夢の通りになったか?」


「うん。ルドに私のおっぱいを揉ませてあげたぁ」


純粋なナイフ……とんでもない切れ味だっ!!


「わかった。それじゃあ次は予知夢の訓練だ」


「任せてぇ」


ハーピは再度眠りにつく。だいふくさん、俺と位置変わってくれない?


今回は俺が衝動に駆られることは無い。

ハーピがただ未来の夢を見ているだけだからな。


予知夢は、自分が見たい未来を見れるわけではない。

それどころか見ようと思って眠っても見れなかったりするし、見ようとしないなくても見てしまうというなんとも博打的な能力だった。

ただ、一応見ようと思って寝た方が見れる確率が高いことは証明されていた。


ハーピが目を覚ます。


「おはよぉルド」


「おはよハーピ。夢はどうだった?」


「今日は見れたぁ。あのね、お風呂にイクスが入ってくるよ」


うん、それはいつものことだな。


「そのときにね、肩が凝っているからマッサージをお願いされるよ」


うん、それはまずいな。

イクスはあの手この手を使って俺のリビドーを刺激してくる。

今日は直接的な方向で攻めてくるようだ。


うまいこと感情をコントロールしなければ。ここ最近一番の訓練になっている気がする。


「そっか。わかったよ。それでどんな未来を見ようとしたんだ?」


「う〜ん、お兄ちゃんの死んじゃう未来……」


3年前、ハーピは予知夢を見れるのではないか? と考えるようになった最初の夢。

あれ以来俺が死ぬことになる予知夢は見ていないらしいが、その後の検証で予知夢で見たことが実際に起きることは確認済みだ。


となると俺が死ぬ未来が訪れることになる。

ハーピに夢の内容を聞くと、今でも鮮明に覚えているみたいだ。


魔王と俺が一緒にいるところに、凶悪な光が降り注いで魔王と俺は死んでしまう。

キュウカが王城でその様子を映し出し、妹達全員でその瞬間を見ていたのだとか。


妙にリアルだった。


恐らく魔王による自爆攻撃か何かだと思っているが、今から策を練っていく必要がある。時間はもう2年も無いことだしな。


ひょっとしたらその未来も回避しているかもしれない。あれから俺もそれなりに強くなったし。


だからハーピにはもう一度あの夢を見て欲しかったのだが、今のところ上手く行く兆しが見えない。


「大丈夫、俺はみんなを置いて死んだりなんてしないから」


「うん。信じてるよルド」


「よし、今日の夢の訓練はここまでにしようと思うけど、何か他に気になることはあるかい?」


「え〜とね……だいふくさん、食べる?」


ん? ハーピのだいふくさんを食べてさせてくれるの? 口に収まりきらないなぁ。なんてことが一瞬頭をよぎったが、最近ユナさんと作っているお菓子のだいふくさんのことだろう。


「ハーピが作っただいふくさんかい? 是非食べてみたいな」


「ほんと? それじゃ、厨房へいこぉ」


だいふくさんを抱えたままベッドから降りるハーピ。

テンションが上がったのか、そのままだいふくさんを頭の上に乗せて駆け足で食堂の方へ行ってしまった。


厨房へ着くと、先に着いていたハーピがメイド長のユナさんと話をしていた。


「遂にこの日がやってきたのですねハーピ様」


「うん、ルドに作ってあげる」


「わかりました、全力でお手伝いしますよ」


「俺も見学させて貰おうかな」


ハーピはくるりと回ると、魔法でエプロン姿に変身した。ちなみにエプロンにはだいふくさんが描かれていた。これはロッカとチセの共同作品だな。


まず、あんをいくつか程よい大きさに丸める。

次にいくつかの白い粉と、水を混ぜていった。

滑らかになってきたところで加熱魔法を行い、加熱したら軽く水をつけて再度混ぜる。それを行うこと数回。しっかりとしたお餅のような物が出来上がった。


驚いたのは、その過程で加熱以外の魔法を使っていたところだ。魔法でお餅が白からピンク色になっていた。ハーピの髪色と同じ色だ。


台の上に別の白い粉を敷き、先程出来上がった物を乗せて切る。切ったものは丸く広げていく。


広げたお餅のような物の上に最初に丸めたあんを乗せ包み込んでいく。

全て包み終えたら、台の上に敷いた白い粉と同じものをまぶしながら形を整える。


最後に、黒い液体? の様なものが入った細い容器で、出来上がった物に絵を描いていく。


「できたっ」


お皿の上に盛り付けて、ハーピが見せてくれた。

そこには3段に重なっただいふくさん達の姿があった。


ハーピはそこまで器用な子じゃなかったが、努力したのだろう。

家事の得意なキュウカとかに比べると効率や綺麗さは劣るものの、一流の料理人にも負けない愛が詰まっている作品だ。


「すごいなハーピ。とても良く出来ている」


「ありがとうルド。一緒に食べよぉ」


ハーピはお皿を持ったまま食堂へと向かう。俺はユナさんも誘って一緒に食堂へと向かった。


「ルド、ここに座って食べてみて」


「俺が最初でいいの?」


「うん。ルドのために作ったぁ」


俺のためにお菓子作りをしてくれる妹……くそぉ! 泣ける!!

席に座り、ハーピのお菓子を一つ手に取ってみる。出来ればこのまま部屋に飾っておきたいくらいかわいいが、今はハーピが食べて欲しいと言っているので頂くとしよう。


「それじゃ、頂きます」


だいふくさんを一口頂く。

柔らかくもしっかり弾力があるお餅の食感もいいし、あんの控えめな甘さも俺好みだ。口いっぱいにハーピの愛情が広がっているみたいだ。


「すごくおいしいよハーピ」


「やったぁ! ありがとうルド」


「こちらこそありがとう。みんなで食べようか」


「うん!!」


ハーピと俺とユナさんでだいふくさんを食べる。

ユナさんも今までで一番最高の出来だと褒めていた。


ハーピも口いっぱいにだいふくさんを含んで幸せそうに笑っている。

喉に引っかけないように気をつけてね。


前は寝てばかりいたハーピも、段々とアクティブになってきたのはいいことだ。

寝ることが悪いこととは言わないが、前はハーピとこうやってお菓子を食べることはなかったからな。新しい思い出が出来た。


これからもいろんなことに興味を持って、覚えたことを俺に披露してくれ、ハーピ。



———————————————————————


「兄上、マッサージをして欲しいのですが」


「いいよ、そこに水着を準備しておいたから着ようか。」


「え、あ、はい、あれ?」


よし、誘惑ゾーンが隠れていれば普通のマッサージだ。

ハーピには感謝しなくちゃな。


マッサージ後、気絶してしまったイクスを抱き上げて部屋に運ぶ時に、ハーピとのランクの差を確認したのは秘密だ。


「お兄ちゃん」


「あ、はい」


秘密だ。


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