49話 四女の精霊
こちらの作品は、小説サイト「カクヨム」の方で最新話を更新しております。
是非そちらでもお読み頂けると妹達が喜びます。
「にぃさま……話……あり……ます」
毎朝の日課の散歩を終えて帰ろうかというとき、シロに呼び止められた。
「シロ、どうしたんだい?」
シロに話しを聞いてみると、どうやら草むらさん達から精霊についての話を聞いたらしい。
精霊は、自然界の憧れの存在。微精霊という格の低い精霊はこの辺にもいるようだが、格の高い精霊を見たことが無く、それを見てみたいと言っていたのだととか。
「みんなに……見せて……あげたい」
「自然達にとって精霊はアイドルみたいなものなのか」
「アイドル……?」
ぽかんと顔を傾けるシロ。可愛い。
それにしても、シロがそこまで自然達と濃い話が出来るようになっているとは思っていなかった。もはや親友と呼べるだろう。
「精霊に詳しそうな知り合いがいるけど、どうする?」
「いき……ます」
普段積極的に人と関わらないシロが、こうも意気込んでるとは。
よっぽど草むらさん達に精霊を見せてあげたいんだな。
「よし、それじゃ放課後になったら一緒に行こうか」
「おねがい……します」
今日の放課後はシロと最近知り合いになった彼女の元へ行くことになった。
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「よく来たルド。そちらは見ない顔だな? 小娘と似ているようだが」
「アルテミス、妹のシロだ。ジーコと似てるのは姉妹だからな。シロ、こちらはアルテミス。エルフ族の長で、ジーコの弓の師匠だ」
「よろ……しく」
「ルド、お主面白い妹を持っているな」
面白い? どういうことだろう。
「アルテミス、どういうことだ?」
「そうか、お主らには見えぬようだな。精霊を纏う姿が」
精霊を纏う? ジーコの師匠探しでエルフ族の里を探していたときに精霊の姿を見たと思っていたが、違ったのか? シロが魔力を纏ってるのはわかるが。
こんな時はオリジナル魔法先生にお願いしよう。
「魔法生成:精霊視」
「ほう。面白い魔法を使う」
俺はチート魔法で精霊視魔法を生成し使ってみる。すると、世界が全く違って見えた。
「すごいな……これが精霊だったのか」
まず見えたのは、森の中に漂う大小様々な光の玉。
魔力ではない何かで出来ている。これもダークマターの一種で出来ているのだろう。
次にアルテミスを見てみると、精霊が体の周囲に寄り添っているのが見える。
エルフにはこれが見えているのか。
そしてシロを見てみる。なんとシロには大量の精霊が纏わりついていた。
自然達と関わるようになってから魔力が増えているとは思っていたが、精霊を纏っているということだったんだな。
「ここまで精霊に愛される人間は勇者以外には見たことがない」
「勇者? はじめて聞いたな」
「そうであろうな。勇者は数百年前に封印されておる」
気になる話だが、今はシロの用事が先だ。
「その話はいずれ聞かせてくれ。今日は精霊について聞きに来たんだ」
「よかろう」
「あり……がとう」
ジーコと来た時の対応とは大違いだな。
「それで、妾に何を聞きたいのだ?」
「あぁ。精霊の格についてと、出来ればその精霊を連れ出したい」
「ふむ。であればまずは精霊についての基礎知識から説明しよう」
精霊とは、人間が魂や霊と呼ぶものと同じ存在らしい。
最上位は神だ。その下に属性を司る精霊がいて、段々の格の低い精霊が存在している。属性のある精霊は希少で格が高い。
実は、魔力は精霊達が生み出しているのだとか。
ちなみに俺がエルフ族の里を探しているときに見た精霊だと勘違いしていたものは、格が高い精霊が生み出した魔力とのことだ。
また、自然達も精霊の枠に入るらしい。実態を持ってるのが自然で、実態が無いのが精霊。もちろん人も元を辿れは精霊だということになる。
この世界は、精霊か、精霊以外かで分けることが出来る。
「ちなみにルド、お主の魂の格は相当高い。恐らく神に触れたことがあるのだろう。肉体を解き放って精霊になった時は楽しみな存在であるな」
魂だけでそんなことがわかるのか? 恐ろしいな。
「精霊の格については何となく理解した。それで、格の高い精霊を見つけることと、それを連れ出すことは可能か?」
「不可能ではない。が可能とも言い切れない。精霊は自身があるべき場所に留まる必要がある世界の歯車の一つである。それは格が上がれば上がるほどにだ。人間で例えれば、臓器の位置を入れ替えるのと同義」
そう言われると困難に感じる。だが滅多にないシロのお願いだ。なんとかしたい。
「しかし、自由に動き回ることが出来る精霊も存在する。それは、風の精霊だ。他にもそういった特性のある精霊はいるがな」
風の精霊はどこかに留まることはせず、常に世界中を動き回っているとのことだ。
「そういった移動する性質のある精霊を探し出すしかないか」
「そういうことになるな」
「シロもそれでいいか?」
「わかり……ました」
俺とシロは精霊探しをすることになった。とはいっても、精霊視を生み出した今、見つけるのはそれほど困難ではないがな。
「ちょっと行って来るね」
俺はエルフ族を見つけたとき同様に上空へ転移し、精霊視魔法を発動する。
すると、星が光って見えた。まるで夜の街を上空から見下ろした景色だ。
だが、夜景とは決定的に違う点がある。それは、止まり続ける光と動き続ける光があること。この星の血管のように。
美しい星の姿に数秒眼を奪われるが、目的を思い出して格の高い精霊を探す。
すると、動いている大きな精霊の反応を見つけた。あれは砂漠地帯の方だ。
早速戻ってシロと行ってみよう。
「ただいま」
「おかえり……なさい」
「動いている精霊が見つかったから行ってみようか」
「妾も行こう」
お、それはありがたい。正直精霊についてはよくわからないことが多いからな。
「ありがとう。それじゃ早速」
シロとアルテミスを連れて精霊の元へと転移する。
精霊のいた砂漠地帯へ辿り着くと、そこは不気味なほど静かだった。
「風が一切吹いていない……」
「風の大精霊がおる証拠だ。彼女のいるところは風が全く無い。その周りから世界にかけて風を送っているのだ」
意外だな。てっきり風の精霊の周りは風が吹き荒れているものだとばかり思っていた。
「かん……じる」
「ほう、ここにきて才能を開花させるか」
シロは精霊視などを一切使っていない。それでもわかるということは、昔見せた自然に愛される力に関係があるのだろう。
「何の用だ」
どこからが声が聞こえた。と思った時、目の前に女人型の精霊が姿を表した。
その姿を見て、アルテミスが膝立ちになり顔を下げる。
「風の大精霊。妾はエルフ族の長。弓神・アルテミスだ」
「そこの人間は、なぜ頭を下げない?」
そのとき、圧倒的な風の力が体に伸し掛かる。重力が掛けられている感覚に似ていた。
だが残念。その程度で俺を平伏せることが出来ると思ったなら甘い。
「ほう、面白い魂を持った人間だ。敬愛する主に見染められた魂か。興味深い。そちらは精霊に愛される人間か」
おっと、そういう魂的な話は妹達に話していないから、ネタバレしないでほしい。ここは「え? なんのことですか?」という惚け顔でスルーしよう。
シロについても見抜かれた。やはりシロの力は精霊に関することだ。
「勇者では無い様だな。そうなると鍵か」
出ました鍵。神様も言っていたが一体何のことなんだ。
「それで、何の用だ?」
ちょっと圧をかけてこちらを喋れない状況を作り出し、勝手に喋りまくる風の大精霊。こいつ性格悪いな。
「風の大精霊よ。この精霊に愛される人間の頼みを聞いてやってほしい」
アルテミスを連れてきたのは正解だな。どうやら大精霊は初見さんに厳しいらしい。俺が喋るとプライドを刺激しかねないからここは任せよう。
「人間、頭を覗くぞ」
風の大精霊はそう言うと、手をシロの頭に添える。
「いいだろう。フェンリルをお前と契約させる」
何がいいんだ。勝手に事を進めやがって。
まぁ、害になりそうな場合は俺が対処できるのでここは成り行きに身を任せるか。
そんなことを考えていると、白い狼の精霊が姿を表す。
フェンリルと呼ばれた狼は、シロの方へ近寄ると匂いを嗅いでいた。
徐々にフェンリルの尻尾がブンブンと揺れる。犬みたいだな。気に入ったのか。
最終的にシロの前でおすわりをしたフェンリルは、右前脚を上げて差し出した。
「つかんで……いいの?」
「アウッ」と返事をするフェンリル。シロはお手の要領で右前脚を取った。
すると、二人の間で魔力が行き交う。どうやらこれが契約らしい。
「これで用済みだ」
契約が終わるのを見届けた風の大精霊が言う。それだと感じ悪すぎないか?
そのまま俺たちを追い越して進む大精霊。
少し先で振り返り、こちらを向いて一言、
「人間、勇者の封印が解かれるぞ」
と言って消えた。
なんなんだあいつ!! もう少し説明とかしろっ!!
久しぶりにちょっとイラっとしてしまった。次会う機会があったらなんかイタズラをしようと心に決めた。
何にせよ、格の高い精霊とシロが契約することが出来た。アルテミス曰く、フェンリルは風の大精霊の使いでどこにいてもいい精霊とのことだ。
これでシロの願いを叶えることが出来たな。
フェンリルの首を抱き締めながら、「よろ……しく」というシロ、めっちゃ可愛い。




