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44話 実家

こちらの作品は、小説サイト「カクヨム」の方で最新話を更新しております。

是非そちらでもお読み頂けると妹達が喜びます。


「見て見て! シスハレナインよ!」


「ほんとだ! すごい綺麗!」


 妹達が国から勲章を貰ってから、世間が妹達を見る目が変わった。

 ただでさえ目立つ9人だ。元々注目されてはいたが、今は異常だ。


 学園内では完全にアイドル状態だった。


「イクスさん! 握手してください!」


「ジーコさん! 今日も可愛らしいですわ!」


「サンキさん! 是非俺の腹を殴ってください!」


「シ、シ、シロさん……ぐへへ」


「ウドさん! この前出したデモ音源かっこよかったです!」


「ロッカさん! 僕はあなたのことを諦めていませんよ!」


「チセさんは今日もそっけない……それがまたいい!!」


「ハーピさん……相変わらずすごい胸だ……」


「キュウカさん今日も美しすぎる!!」


 道を歩けば誰かに絡まれる。そんな状態が続いていた。


「先生、こんなところで何をしているんですか?」


 ちなみに俺は今ロッカーの後ろに身を隠して覗いている。


「あれれ〜、ここらへんにペンを落とした気がしたんだけどなぁ」


「先生変なの」


 クスクスと笑いながらシスハレナインがいる方へ向かう女生徒。


 監視魔法があるから本来こんなことしなくてもいいのだが、可能な限り妹達を肉眼に納めておきたいのは兄として当たり前のことだろう。


 それにしても、本当に取り巻きが多いな。妹達の負担になっていないかが心配だ。


 先日聞いた限りだと特に気にしていないと言っていたが、だからといってストレスが無いわけではない。


 そうだな……丁度次の休みはみんなも予定が無いと言っていたし、旅行に行こう。たまには人目を気にせずに羽を伸ばすことも重要だ。


 そうとなれば早速準備だ!!


 ————————————————————————


「よし、みんな揃ったな」


 俺はエントランスに、旅行に行く人達を集めていた。

 まずは妹達。今回の旅行は妹達のためでもあるから当たり前だ。


「兄上、本日はどちらに行かれるのですか?」


「あぁ、それは着いてからのお楽しみだ」


 続いて、メイド妹達のアル、コル、リン、マル、シーム。

 メイド妹達もこの家で働き始めて3年経っている。

 毎日メイド長のユナさんにしごかれていたので、メイドとしてのレベルも高い。

 そしてみんな美少女に育っている。あと暗殺術を教わっているらしい。


「旅行中のお世話は私達にお任せください」


「何言ってるんだアル。今回の旅行ではメイドであることを忘れて俺の妹として着いて来て貰うんだぞ」


「しかし……」


「ご主人様がこう仰っているのですから、存分に楽しんでいらっしゃい」


「すまないなユナさん。家を任せてしまって。今度埋め合わせをするよ」


「ご主人様、私のことは気にしないでください」


 そして婚約者であるアーシェ。


「ルドとの旅行、楽しみにしていましたわ」


「ルド様、アシュレイ様をよろしくお願い致します」


「あぁ、任せてくれセドル」


 さて、行くとしよう。

 俺は全員を同時に転移するために少し大規模な魔法を発動する。

 旅行といっても転移で一瞬だから味気ないが、急に決まった旅行なのでそこは我慢してもらおう。


 目の前が白く染まり、手を振って見送るユナさんとセドルの姿が見えなくなっていく。そして新しい景色が見えてきた。


 到着した場所は、それなりに大きい屋敷の前。


「兄上……ここは!」


 イクスが声を上げると同時に屋敷のドアが開かれた。


「待っていたよ。愛しの息子と娘達よ。ご友人の方々もね」


「みんな見ない間に随分大きくなったわね。嬉しくて涙が出て来ちゃうわ」


「「「「「「「「「お父様! お母様!!」」」」」」」」」


 妹達が一斉に声の主へ駆け出していく。


「ルド、ここはまさか」


「アーシェ、その通り。俺達の実家だよ」


 今回の旅行は、里帰りだ。

 妹達が一番心休まる場所を考えていたら、実家が思い浮かんだ。

 思い出がいっぱい詰まっている大切な場所。短い期間ではあるが、ゆっくり休んで欲しい。


 それに俺も父上と母上に話さなければいけないことが山程あるからな。


「ルド、皆さん、まずは屋敷の中へ。お茶でも飲みながら話をしよう」


「はい、父上。アーシェ、みんな、行こうか」


 妹達は既に母上と一緒に中に入っていた。

 家の中から「懐かしい匂いですわ!」とはしゃいでる声が聞こえる。どうやら実家を旅行先に選んで正解だったようだな。


 俺はアーシェとメイド妹達を連れて屋敷の中でも一番広い部屋に行く。

 事前に父上に連絡していたので、色々と準備してくれていたみたいだ。


「まずは自己紹介をさせて貰うよ。私がシスハーレ子爵家の現当主、リーン・シスハーレです」


「私は妻のメリーです。ルドとイクス達のお母さんです」


 二人は優しさが溢れた表情でアーシェとメイド妹達に挨拶する。

 それからは俺がアーシェとメイド妹達を紹介をした。


 一応事前に王女が来ることは伝えていたが、アーシェの紹介をしたときはめちゃくちゃ畏まっていた。そりゃそうだよな。雲の上の存在だろうし。


「アシュレイ王女殿下はどうして私達のような者の家に?」


「皆さんとは学友なのです。魔法学園で親しくさせて頂いております。それに、義父様と義母様にもご挨拶出来て嬉しいです」


「アシュレイ王女殿下」


「アーシェとお呼びください」


「ア、アーシェ王女殿下」


「アーシェ」


「ア、アーシェ……その、義父様と義母様というのは?」


 あれ? 父上と母上は知らないのか!? てっきりアーノルドが連絡していると思ったのに!!


「ルド、これはどういうことですの?」


 アーシェが笑ったままこちらを向いた。目が笑ってない。


「あ、えっと、アーシェはその……婚約者なんだ。てっきり王子から連絡がいってると思ってたんだけど……」


「ふぁぁぁぁ」


「お母様っ!?」


 アーシェと婚約したと伝えたところ、母上が泡を吹いて倒れてしまった。

 メイド達が慌てて母上の介抱を行う。


 挨拶は一旦中断され、俺は父上と書斎で話をすることになった。本来はアーシェもいた方が良いのだろうが、アーシェから自分がいない方が父上も話しやすいだろうと気を遣ってくれた。


「はぁ……ルドは昔から規格外だったけど、まさか王女様と婚約するなんてね」


「すみません、連絡もせずに」


「いいんだよ。ルドがいれば娘達も心配ないと思っていたからね。思った通り、みんな立派に育っていて嬉しいよ」


 それから俺は色々なことを父上と話した。


 学園の先生になったこと。学園を主席で卒業したこと。生徒会長を3年勤め上げたこと。王子の元で働いていること。家を買ったこと。奴隷達を助けたこと。一部の子をメイドとして雇っていること。幼馴染のこと。学園でやらかしたこと。


 そして、妹達のこと。


 父上は相槌を打ちながら話を全部聞いてくれた。


 そして最後に。


「頑張ったねルド。みんなをよく今まで守ってくれたね。これからもよろしく頼むよ? もちろんルドのことも期待しているから」


 と言いながら頭を撫でてくれた。


 そのとき、なぜかわからないが涙が溢れてきた。

 なぜだろう。別に辛かったわけじゃない。妹達を守ることは俺の人生そのものだ。

 だけど、この生き方を誰かに認めてもらえたり、褒めてもらえたりしたことはなかった。


 過保護な兄。きっと気持ち悪がっている奴もいる。

 妹が好きで何が悪い。妹のために生きて何が悪い。

 誰になんと思われようと俺は俺の道を歩いて来た。


 でも、父上に認められて初めて俺は俺自身の生き方を誇れた気がした。

 妹が好きな自分を。間違っていなかったと。


 その時、書斎のドアが大きな音を立てて開いた。


 そこにいたのは愛しの妹達。


「兄上!!」


「兄様!!」


「兄様!」


「にぃさま」


「兄さん!」


「お兄様!」


「お兄様!!」


「ルドぉ」


「お兄ちゃん」


 妹達は泣きながら俺の胸に飛び込んできた。

 あぁ、俺は幸せ者だ。


 大好きな妹達に囲まれて生きている。


「なんだみんなそんなに泣いて、顔がぐしゃぐしゃだぞ」


「お兄ちゃんこそ! ずるいよ」


「そうですわ! 私達はいつもお兄様に感謝していますわ!!」


 そうだったな。妹達はいつだって側にいてくれた。


 俺は、妹達を守れればそれだけでいいと思っていた。

 でも、そんな俺を見て誇ってくれたり、褒めてくれたりする人達がいる。

 なれば、俺はもっとその人達に誇れるような存在になりたい。


 決めた。


 俺は、父上と母上の自慢の息子になる。

 俺は、妹達の自慢の兄になる。


 そして、この世界で命尽きるまで生きていく。最後はみんなの誇りを全部持っていこう。


 最後は、妹達に囲まれて死にたいな。


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