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41話 最強の魔法

こちらの作品は、小説サイト「カクヨム」の方で最新話を更新しております。

是非そちらでもお読み頂けると妹達が喜びます。


「ふざっけんな! おいドラゴン起きやがれ!」


 ドラゴンはノーブルの声に反応して目を覚ます。

 むくりと起き上がると、黒い鎧に敵意を向けていた。


「どんな仕掛けを使ったのかは知らねぇが、二度は通用しねぇぞ!」


 ノーブルは再度ドラゴンに攻撃の指示を出す。


「ソレハコチラノセリフダ」


 黒い鎧は右手を前に掲げたまま魔法を発動する。

 すると、ドラゴンの口に3本の魔力の輪が出現し、ドラゴンの口を縛った。


「なんで魔法が効くんだ! 何かの間違いだ!」


 ノーブルは未だのこの状況を把握しきれていない。


「シスハレナインヨ、ミテオクトイイ。ドラゴンハ、コウタオスノダ」


 黒い鎧はシスハレナインを見ながら腕を上げる。


「ジャッジメント・フォール」


 直後、王都の夜空からドラゴンを飲み込むほどの大きさの魔力が降り注ぐ。

 ドラゴンは悲鳴のような咆哮を上げているが、やがてすべて消滅した。


「あ、ありえない……なんだお前は!!」


「オマエハネテイロ」


 続いて黒い鎧が指を鳴らすと、ノーブルを守っていた見えない壁が割れる音と同時にノーブルもその場に崩れ落ちた。


 さて、ここまでは作戦の第二段階の下準備。

 多くを語らず、見て学ばせる。とても重要なことだ。


 妹達の反応を見てみよう。


「兄上ですね」


「えぇ、兄様ですわ」


「兄様デス!」


「にぃ……さま」


「何やってんの兄さん」


「お兄様ですわ!」


「そうですわねお兄様!」


「ルドが助けてくれた」


「はぁ……お兄ちゃん!」


 待て待て待て! 何故バレた!


「ワレハ、アニデハナイ。ブラックダ」


 しまった。名前なんて考えてないから安直な名前になってしまった。

 今回は、俺自身が出動していないから魔力で感知されることもない。むしろ全く別人の魔力パターンで人形を作ったというのに!! 偽装工作は完璧だ!!


「こんなこと出来るのはお兄ちゃんだけでしょ」


「そうだな」


「そうですわね」


 なん……だと……。

 要するにやり過ぎたわけだ。自重もせずに。

 次はもうちょっと慎重にならなければな。


「シスハレナイン、ドラゴンノタオシカタ、ナニカキヅイタカ」


 とりあえず考えた作戦を失敗にしたくない為、俺は何も聞かなかったことにして続ける。


「そうですわね……魔法が効かないドラゴンに何故魔法が効いたのかがわかりませんわ」


「シロは何か気付きましたか?」


「うん……魔力が……おかしい……」


 ロッカとチセにはまだ難しかったか。

 シロは流石だな。魔力や魔法に関しての知識量が豊富だ。


「魔力がおかしいって?」


「私の……知らない魔力」


 そもそも魔力とはなんだろうか?

 魔力を用いて魔法を発動させると火を起こしたり水を発生させることが出来る。

 森羅万象を起こすことが出来る、この物質なのかも怪しい存在。


 俺は魔力をトランプのゲーム、大富豪のジョーカーのような存在だと考えている。もう少し踏み込んだ話をすると、素粒子が異なる物質。前世でいうところのダークマターの一種であらゆる素粒子に変化できる素粒子。


 他のカードと一緒に使うことで、そのカードに変化出来る万能カード。それが魔力だ。


 魔力は、完全にその素粒子になるわけではなく、あくまで素粒子の代用品としてしか使えない。本物の水と魔力で作られた水は、性質は全く同じものでも明らかに違いがある。魔力を含んでいるというのはこういうことを指す。


 そして魔法無効とは、代用品として変換された魔力を本来の魔力に戻す効果がある。


 故に魔法が効かないということが起きる。


 では、俺は一体何をしたかというと、単純に魔力だけで攻撃したのだ。


 本来魔力とはそれだけではなんの効果もない。あるとすれば魔力の濃いところは魔獣が発生するとか、魔法を使えない人が浴びすぎると人体に害を及ぼす程度だ。


 だが、質量を持っているので極限まで密度を濃くすればそれだけで攻撃が可能なのだ。


 もちろん尋常じゃない魔力操作と魔力量が必要になる。原子や素粒子といった知識も必要になるしな。


 この世界の人間では絶対に理解できない不可避の攻撃。


 という内容を俺だとバレないようにオブラートに包んで説明した。原子とか素粒子とか。


「ユエニ、シロハシラナイマリョクトイッタノダ」


「そうかも……しれない」


「やっぱり兄様ではないですか……」


 どうやらそれでも疑いは晴れなかったようだ。

 だが目的は達した。妹達にも、次元の違う強さというのを目の当たりにして貰えただろう。ドラゴンのような上位存在の倒し方のヒントも得れたはずだ。


「サテ、ワタシハカエルトシヨウ。ソイツハモラッテイク」


「え? なんで兄さんがノーブルを連れて行くの?」


 くそっ! ウドは勘がするどい。


「ソイツハモラッテイク」


「ま、いいのではないですか。お兄ちゃんも、裏で色々とやってるみたいだし。私の監視を妨害してまで」


 ギクッ。暗部の仕事をしていることまでは知られていないだろうが、何かをしているのはキュウカにはバレているようだ。そりゃそうだな。


「サラバダ。サラニツヨクナリタマエ」


 俺はノーブルを魔法で浮かせて、転移する。


 転移先は一旦王都から5km程離れた山奥にしておいた。

 そのまま王都に転移したら流石にキュウカにバレそうなので。


 山奥の森の中でノーブルを地面に落とす。


「ルル、ララ」


「ただいま参りましたワン!」


「お待たせしたニャ! 隊長!」


 とりあえず事後処理を任せるためにルルとララを呼び出す。


「ララ、この姿の時はブラックと呼ぶように。ルル、二人でノーブルの処理を頼む」


「ブラックですニャ!」


「了解しましたワン!」


 ララがノーブルを縛り、ルルがノーブルに跨り「起きるのですワン!」

 と言いながら往復ビンタをしている。


 ここはルルとララに任せて、俺はブラックを収納する。


 さて、今日の業務は終わりだ。やっと眠れる……ということにはならなかった。


「さ、お兄ちゃん詳しく聞かせてもらえる?」


 意識を自身の体に戻すと、俺の部屋には愛しの妹達が大集合していた。


「そう言われてもなぁ。ブラックさんとはただの知り合いだし……?」


「はぁ、まだ白を切るのですね! それなら私達にも考えがあります!」


 なんだ……一体何が起きるのだ……


「お兄ちゃんが事情を話してくれるまで、一切口を聞きません!!」


 え……


 え?


 死んだ。


 俺は脳が完全にバグり、白目を向いて痙攣を起こす。


 微かに聞こえるのは、妹達が心配する声。


 まさか妹達に嫌われそうになっただけでこんなことになるなんて。


「ァァァァァァァ」


「兄上! しっかりしてください!」


「お兄様! どうなされたのですか!」


「キュウカ、誤解を解くのですわ!!」


「え……お、お兄ちゃん、冗談だよ!!」


 なんだ冗談か……危ない危ない。もう少しで本当に死んじゃうところだった。


「ハァ……ハァ……すまない、少し取り乱した……」


「兄さんは本当に妹のことになると全力だよね……ちょっと突き放されたら倒れるなんて……」


「ウド、それは兄だったら当たり前のことだろう?」


「にぃ……さん……ちょっと……違う……かも?」


「ウグッ!! そ、そうか……違うのか……」


 初めて知った。妹に嫌われた兄に人権は無いと思ってた。


「しょうがないですわね。それじゃキュウカ、奥の手を使うのですわ!」


「わかりました。こうなった以上仕方ないでしょう」


 なんだ? 一体何をするというのだ?

 残念ながら俺には誘惑魔法や洗脳魔法は一切効かない。

 それは妹達も知っているはずだ。そんな俺から情報を聞き出そうとは、妹達の考えがわからない。


 キュウカはベッドに座る俺の前にしゃがみこみ、俺の膝に手を当てながら顔を見上げ、目を合わせて言葉を発した。



「お兄ちゃん、教えて?」


「アーノルドの指示でやりました」




 上目遣いでおねだりは……ズル過ぎだろぉぉぉぉぉぉおおおお!!!


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