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38話 初めての授業

こちらの作品は、小説サイト「カクヨム」の方で最新話を更新しております。

是非そちらでもお読み頂けると妹達が喜びます。


「今日は全員出席だね……と言いたいところだけど、実は今日からこのクラスに新しい仲間が加わる。入っておいで」


 俺は教室のドアの前で待っている女子生徒を教室に呼び込む。


 ドアが開かれた先にいたのは、透き通るような純白の髪が印象的だが、それに劣らないスタイルと顔立ちを持つ女性。


「皆さん、初めまして。私はアシュレイ・ヒュトラ。この国の王女です。学園生活中は身分など関係ありませんので、仲良くしてくださると嬉しいです」


 綺麗なお辞儀をして、教室の空気を自分の物にしてしまった彼女は、アーシェだ。


 ずっと前から念願だった学園への入学がやっと出来ることになった。


「みんなも驚いているだろうけど、仲良くしてあげてくれ。席は……そうだな、キュウカの隣がいいだろう。キュウカ、アーシェのサポートをお願いしてもいいかい?」


「わ、わかったよお兄ちゃん!」


「キュウカ、今は"先生"だよ」


「わ……わかりました先生」


 キュウカの顔が赤くなっている。クラスメイトも珍しい物を見たという表情を浮かべている。

 普段クールなキュウカはここまで動揺することがないのだろう。


「よろしくお願いしますねキュウカ」


「はぁ……あなたは知っていたのねアーシェ」


「黙っていてごめんなさい。ルドと一緒に驚かせようって話してましたの」


「全く……あなた最近、お兄ちゃんに影響を受けすぎでは?」


「あら、悪いことじゃないでしょう? なにせ"婚約者"なのですから」


 二人の私語を盗み聞きしていた生徒がビクッとして、俺とアーシェを交互に見ている。


「二人とも、授業が始まるから私語は慎むようにな」


「はい、先生」


「すみません、おに、先生」


 キュウカ、もう少しでグレートティーチャーみたいな呼び方になりそうだから早く慣れようね。


「授業に入る前に、改めて簡単に自己紹介させて貰う。このクラスの担任になるルド・シスハーレだ。昨日卒業したばかりだし、生徒会長も勤めていたからみんな知ってくれていると思う。どの教科が得意とかはないよ。すべて完全に網羅しているつもりだからなんでも聞いてね。完璧にサポートしてみんなの未来を豊かにすると誓うよ」


 生徒達から尊敬の眼差しを受ける。出だしの挨拶は成功だな。生徒会長を勤め上げた甲斐があった。


「さて、早速授業を始めるよ。高学級は中学級までのレベルとは一味違うから、一歩一歩頑張ろう」


「はいっ!!」


 クラスの生徒全員からいい返事が返ってくる。よかった素直な子達で。



 ———————————————————————


「一限目はここまでだ。次は実験室で授業を行うから、遅れずに移動するように。それじゃ、授業を終わります」


「ありがとうございました!」


 ふぅ、なんとか初めての授業を終えれたな。

 皆熱心に授業を聞いてくれたおかげか、俺もいい気分で授業を行うことが出来た。


「お兄ちゃん! 言ってくれれば良かったのに!」


 授業後、真っ先に俺の元へ来たのはキュウカ。

 自慢の胸を腕に押し付けて絡まって来た。おわっふ、ここ校内。


「すまないな。みんなを驚かせようと思って」


「ほんと、びっくりしたよ。まぁ兄さんならこういうことやりそうだよね」


「全く、大人なのか子供なのかわかりませんわ!」


 ウドは俺っぽいと褒めてくれた。ジーコには反対に、そろそろ落ち着けと叱られてしまった。


「兄上が先生なのであれば、これから3年間は充実したものになりますね」


「そうですわね! 家だけではなく学園でも一緒ですわ!」


「うん……うれしい……」


 イクスとロッカとシロは、俺が担任になったことでこれからも一緒にいれると喜んでくれた。


「でも、お兄ちゃんどうやって先生になったの? 確か魔法学園の先生になるには魔術団での実技経験と試験で資格を取らないといかなかったはずだけど……」


「あぁ、それについてはアーシェにも関係するんだ」


「そうですね。私が学園に通えるようになった要因の一つでもありますわ」


「出たわね女狐……婚約者にして貰えたからって調子に乗らないで欲しいわ」


「あらキュウカ? 仮にも私は王女ですよ? そしてあなたの義姉になるのですよ? そんな口の聞き方でよろしいのですか?」


「ここでは立場関係ありませんと言ったのはあなたでしょう? こうなったらあなたがお兄ちゃんに相応しいかどうかしっかり見極めさせて貰います」


「望むところです」


 キュウカとアーシェは相変わらずバチバチだ。でも休日は二人で出掛けたりすることもある。こう見えて実は仲がいいのだ。


「で、結局どういうことなのデスか?」


「あぁ、先生になれたのは完全にコネだね。ちょっと知り合いに頼み込んだら大丈夫だった。そのかわりとして、アーシェが学園に行きたいと行っているから護衛をするようにって言われたんだ」


 知り合いとは、もちろん第一王子アーノルドだ。

 一見爽やかな好青年に見える。だが甘いマスクに騙されてはいけない。

 あいつは腹黒王子だ。


 だが、妹のことになると少し甘くなる点は俺も共感出来る部分があった。


 高学級3年になった頃、俺はアーノルドが昔出した条件を飲んで、アーノルドの仕事のパートナーになった。


 熱烈なアピールに負けたわけだ。まぁ元々悪い条件ではなかったから俺としても都合がいい。


 アーノルドが俺に頼む仕事は様々だ。情報収集はもちろん、暗殺なども行う。王家の犬って言われても言い返せない。


 そのおかげでこの国では自由な地位を確立出来ているから気にはしないがな。


「ルド、婚約者の護衛は妹達のお世話のついでですの?」


 アーシェから黒いオーラが溢れている。そういうのはキュウカの役目でしょ。


「当たり前でしょうアーシェ。お兄ちゃんにとって私達以上に大事なものなどありません!」


「ルド! もう少し私に構ってくれてもいいではないですか! 最近会いに来てくれなくて少し寂しいですよ……」


 どぅどぅ。落ち着くんだ。

 他のクラスのみんなもどうしていいかわからない気まずい感じになってるぞ。


「二人とも、その辺にして今は移動だよ。次の授業に遅れないようにね」


「わかったよ、おにい……先生!」


「わかりましたわ、先生」


 キュウカとアーシェは移動の準備のために自分の席へと向かう。


「あの二人は相変わらずですわね」


「でも仲はいいよねぇ」


 チセとハーピが二人の後ろ姿を見ながら言う。


「よし、みんなも移動開始だ」


 俺も次の教室へと移動を開始した。今回は準備もあるため転移で。

 先生になったからといって、学園で常に妹達にべったりするわけでは無い。俺はそばにいれればいいだけだからな。


 先生である以上、他の生徒達を守り教育する義務がある。

 公私混同はしない。しないはずだ。たぶん。


 実験室について、実験の準備をする。

 これからする授業は、この世界で恐らく俺にしか出来ない授業だ。


 準備をしていると続々とクラスの生徒が集まって来た。

 まだ休憩時間なので、先に着いている何人かの生徒が声をかけてくれる。なんか青春っぽいな。


「ルドせんぱ……先生は、お好きな食べ物とかありますか?」


「そうだね……甘いものは基本好きかな? 男なのにちょっと意外でしょ」


 顔を赤くして「そんなことないです!」と言う女生徒。歳は妹達と変わりないのに、妹達よりあどけなさがある。


 この歳だったらこのくらいだよな。妹達が大人びているだけだ。レースのスケスケの下着ばっかり身につけて。


 みんなと会話しながら準備していると、生徒が全員集まった。

 予鈴もなったことだし、授業をしよう。


「よし、それじゃみんな二限目の授業を始めるね」


「よろしくお願いします!」


「これからやる授業は、恐らく誰も聞いたことがない学問だ。教科書にも乗ってない。もちろん、どこの本にもね。今からやるのは、"化学"だ」


「化学?? 本当に聞いたことがありません」


 普通の生徒はポカンとしている。


「お兄様……まさか化学の授業をなさるなんて……」


「やはり兄上が先生になると飽きないな」


 妹達には英才教育で既に教えている。


「みんな、火はなんで燃えるか知ってるかい? それじゃそこの君」


 俺は一人の生徒を指名する。


「は、はい! 火魔法を使うと燃えます! あとは火の精霊が燃やすといった話も聞いたことがあります」


「うん。よく勉強しているね。この世界では、火の魔法を使うと火を使うことが出来る。火の精霊が火を起こしているのも正解だ。だけどね、それが本質じゃないんだよ。魔力が消えたら火が消えるのかい? それじゃ火の原料は魔力? そしたら魔力がある限り、火は消えないことになるよね」


 まだ生徒達はピンと来ていないみたいだ。


「見てもらったほうが早いね」


 俺は1本の蝋燭に火を灯す。そして、少し仕掛けを施した透明なコップを取り出した。


「この火に、今からコップを被せるからよく見てて。ちなみにコップ内の魔力を無くしたりはしていないからね」


 俺が蝋燭にコップを被せると、火が一瞬にして消えた。

 生徒達は、何が起きたのかわからないといった表情を浮かべていた。


「実は俺はこのコップにある仕掛けをしたんだ。それは、"火が燃える材料が無い状態"を魔法で作り上げたんだ。その材料ってのは、今みんなが吸っている空気だよ」


 正確には酸素なのだが、そこはまだレベルが早いので後に教えていこう。

 俺は目の前の教卓に腕をついて言う。



「みんな、もう少しスタイリッシュに魔法を使いたいとは思わないかい?」


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