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35話 妹と住む

こちらの作品は、小説サイト「カクヨム」の方で最新話を更新しております。

是非そちらでもお読み頂けると妹達が喜びます。

 次の休みの日。俺は妹達と王都の住宅街を歩いていた。


「兄様、一体どこに向かってるデスか?」


「そうですわ。そろそろ教えて頂きたいですわ。どなたかに会いに行くのですか?」


「あと少しで目的地だ。もうちょっと我慢してくれ」


 妹達には目的地を秘密にしているから、ただ歩いている状況に不満が出てきてしまった。でもあの家を見れば感動するはずだ!

 あ、キュウカが珍しくワクワクしてるから、完全にバレているな。監視魔法でサプライズが台無しになってしまう点はどうしよう。


 実はもう目的地が見えている。一度建物を壊してオリジナル魔法で何となく作ってみたが、想像以上に目立つ建物になってしまった。


 俺達は新たな家へと続く一本道を歩く。

 何故わざわざ歩きかというと、単純に雰囲気を出すためだ。転移だと喜びが薄れるかと思った。


 歩いて移動すると転移に比べて遅く感じてしまうが、妹達と談笑しながら歩くと時間は一瞬で過ぎ去るしな。こうして歩いて話すのは、シロと毎朝の散歩くらいなので新鮮で良い。


 そんな状況を楽しんでいると、新しい家の門前に到着する。


「兄上、ここが本日の目的地ですか?」


「どなたの家ですの? こんな場所に見知った方はいなかったはずですわ……」


 イクスとジーコが誰の家だったかを思い出そうとしている。


「ここはな、俺達の家だ」


「私達の家? 兄さん、どういうこと?」


「ウド、そのまんまの意味だよ。今日からみんなとここで一緒に暮らそうと思ってるんだけど、どうだろうか?」


 妹達は意味がわからないといった顔をしていたが、次第に理解が追いついたようだ。喜びの表情に変わってきた。


「それは、お兄様とまた一緒に暮らすということでしょうか!?」


「ロッカ、そうですわ! 一緒にと言いましたもの!」


「ルドと一緒? 一緒におねんね!」


 ロッカ、チセ、ハーピもすごく喜んでいくれている。

 キュウカは既に知っていたので、喜ぶみんなを優しく見て微笑んでいた。


「さぁ、早速家に入ろうか」


 俺が手をかざすと門が開く。

 この家には様々なギミックを搭載しているからな。


 芝が綺麗に整理された庭を歩いて屋敷へ向かう。

 イクスが「ふむ、ここで剣の鍛錬も出来るな!」とか、シロが「お花さん……育てたいな」とか言っていた。広い庭の使い道まだ決まっていないので、好きに使って欲しい。


 庭を抜け、屋敷の前に着くとドアが開かれた。


「おかえりなさいませ、お兄様、お姉様」


 お辞儀をしながら迎えてくれたのは、この屋敷に住み込みで働く小さなメイド達。


「アル! コル! リン! マル! シーム!」


 ジーコがそこに居た子達の名前を呼ぶ。孤児院であった子達だ。


 アルは10歳の子で、5人の中では一番お姉さん。それでも妹達より幼いが、しっかりしている。


 コルは8歳の子で、親を目の前で亡くしたため、ショックでまだ声を出すことが出来ない子だ。


 リンは5歳で、前に会ったときにお姉ちゃんと呼んで良いか聞いてきた子だ。


 マルもリンと同じ5歳で、絵を渡してくれた子。活発なのが特徴だな。


 シームはなんと4歳だった。まだあまり会話にはならないが、親が居ないことと、良い人、悪い人のについては理解しているようだ。


 子供達の後ろから、一人の女性も姿を表す。


「皆様、お帰りなさいませ。私はユナです。この屋敷のメイドをしながら、この子達のメイド教育とお世話をすることになっています。先日は私の姉のユニがお世話になりました」


「ユニさんに似ていますわ! 姉と言うことは、ユナさんはユニさんの妹なのですね!」


「はい。前は王城でメイドをしておりましたが、姉とルド様に誘って頂いたこともあり、今回こちらのお屋敷でお世話になることになりました。皆様、どうぞよろしくお願いいたします」


 そう言ってお辞儀をする姿は、流石王城で勤めていたと思わせられる綺麗なものだった。


 妹達も合わせてお辞儀をする。


 立ち話も何なので、とりあえず屋敷のエントランスに入って話の続きをすることにした。


 俺達はエントランスの中央にあるソファにそれぞれ腰をかけて、メイド組は立っている状態だ。メイド組にも腰掛けるように言ったのだが、ユナさんに立ったままで大丈夫と言われてしまった。


「それにしても、どうしてアル達までメイド服を着ているのですか?」


「それは俺から説明しよう。5人には将来のために、ウチで働きながらいろいろと勉強して欲しいと思ったんだ。こんな大きな屋敷だ。俺達だけで住むにはもったいないし、管理も大変だ。であれば誰かにそれをお願いする必要がある。それならば、いっそ見知った顔の人の方が良いと思ってな。本人達に聞いてみたのさ」


「ルドお兄様の仰る通りです。お話を聞いて最初は戸惑いましたが、お姉様方のお兄様だというお話をお聞きしてすぐに決めました」


 年長者のアルが補足してくれた。


「そうだったんだ……兄さん、ありがとうね。この子達のことも考えてくれて」


 ウドがそう言ってお礼を言う。


「みんなにとってアル達が妹ならば、俺にとっても妹だ。妹に愛情をどれだけ注ぐかは、みんなが一番わかっているだろ? 俺の生きる意味は、妹を守ることだからな」


「はい……いつも……守られて……ばかりです」


 シロが顔を赤くしながら答えてくれた。


「ただ、俺の妹の教育方針は英才教育だ。それぞれの個性を伸ばすことになるとは思うが、戦闘や魔法なども一定の水準までは訓練して貰うことになる。前にも聞いたけど、やれそうか?」


「はい! 必ず皆さんのお役に立てるように頑張ります!」


「そうなのですね。では私達もフォロー致しますので、何でも仰って下さいまし!」


 屋敷に住むみんなの顔合わせも終わったところで、早速お屋敷探検だ。


「よし、それじゃ屋敷を見て回ろうか。色々と説明することもあるし」


「楽しみですわ! こんな立派なお屋敷、お父様とお母様も羨ましがることでしょうし!」


 父さんと母さんか。いずれこの屋敷に招待しよう。転移ではあればすぐだしな。

 時々手紙でのやりとりをしているが、もう何年も顔を合わせていない。


「そうだな。そのうち父上と母上も招待しよう。俺達がいなくて寂しがっているだろうし」


「良い案ですわ! 久しぶりの家族団欒ですわね!」


 ロッカとチセも父さんと母さんに会いたいようだ。他の子達も会いたいという感情が顔に表れている。


「それじゃ行こうか」


「私達は仕事に戻りますので、何か御座いましたらお呼びください」


「ください!」


「さい!」


 ユナさんとアル達には事前に屋敷の案内を終えている。

 屋敷の管理をする上で知っておいた方がいいことは多いからな。

 ユナさんに続いてマルとシームも返事をして、メイド組が業務に戻っていった。


 俺はみんなを連れて、まずは2階に上がる。

 2階には行くには、エントランスにあるサーキュラー階段を登っていく。


 2階には個室と大部屋がいくつかある。基本寝室だったり、集まってコミュニケーションを取る部屋だったりと、生活空間になる予定だ。


 他にもお風呂や、簡易キッチン、トイレなど、生活に欠かせないものは全て揃っている。ぶっちゃけ2階だけで生きていける。


 1階はキッチン、食堂、会食場、露天風呂、多目的ホールなど、おもてなしや癒しの空間がある。


 来客関係の部屋も全て1階にまとめた。その方が移動も楽だろうしな。


 そして、一番重要なのは地下だ。

 ここにはトレーニングルームや倉庫など、あまり見せられない物や、見られたく無い物を詰め込んだのだが、この国、地下に関して土地という概念がない。


 なのでどこまでも広げられる。今は地下100m付近に色々作っている最中だが、他にも作りたいものがあれば随時増やして行く予定だ。地下は全て俺のもの状態だな。


 そんなこんなで説明していったが、妹達の反応は最高。特に露天風呂なんかでは、「外にお風呂があるのっ!?」と驚いていた。大丈夫だよ見えないように作ってるから。


 一通り説明が終わったところで時計を見ると、もう夕食の時間になっていた。


『ルド様、お食事の準備が整いましたので、食堂までお越しください』


 丁度良いタイミングでユナからも連絡が入る。


 久しぶりにみんな揃って食べる夕食だ。やっぱ家を買って良かったな。

 

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