33話 妹が増えた
こちらの作品は、小説サイト「カクヨム」の方で最新話を更新しております。
是非そちらでもお読み頂けると妹達が喜びます。
「みんな、これを着けてくれ」
俺は9本のミサンガを掌に乗せて、1本1本配る。
「これは、ミサンガですの?」
「あぁ、今日のために準備したんだ」
「可愛いですわ! でもこれで変装が出来ますの?」
「それを付けて、"変身"と言えば服が変わる仕組みになってる。このキーワードは後で変えれるから、各々好きな言葉を設定してくれ」
「変身機能を付けてくださったのですか!?」
イクスは腕に付けたミサンガを見ながら喜んでくれた。
ヒーローごっこの延長だからな。その機能は外せない。
ミサンガをみんなが腕に付けたところで、みんながアイコンタクトをして一斉に「変身っ!!」と言う。
すると、妹達は眩ゆい光に包まれた。
次第に光が収まると、そこには俺が考えた衣装に変身した9人の妹達。
うむ。実に壮観だ。
イメージの中では完璧だったが、実際に着てもらうと想像以上だな。
「すごく動きやすいです!」
「可愛いですわね! 気に入りましたわ!」
「かっこいいデス! 強くなった気がするデス!」
「わたしも……好き……です」
「ちょっと露出多くないかな? でもあまり見ないデザインだからいいかな!」
「そうですわね! それぞれ少しずつ違うのがいいですわ!」
「お兄様の私達に対する気持ちが込められている気がしますわ!」
「肌触りもいいよぉ」
「見た目だけじゃなくて、いろんな効果も付けてくれたんだね!」
妹達が、それぞれ感想を言ってくれる。
気に入ってくれたみたいでよかった。
「顔を隠すには、右手を顔の前にかざすとお面が出てくる。お面は外して空中に投げれば勝手に消えていつでも取り出し可能だ」
それを聞いた妹達は、顔の前に手をかざしお面を装着する。
「これで顔が隠れるということですね! 素晴らしい機能です!」
こういうギミック的なのはイクス大好きだからな。
「ちなみに手を前に伸ばすと、専用武器が出てくるようになってる。今回は俺が生み出した武器を設定してるけど、自分の好きなのに設定できるようにしておいたよ。あと、面も武器も召喚方法が設定出来るから色々試して好きなように使って欲しい」
イクスには刀を。
ジーコには弓を。
サンキにはグローブを。
シロにはロッドを。
ウドには短剣と銃を。
ロッカとチセにはステッキを。
ハーピにはだいふくさんを。
キュウカには扇子を。
「これは、見たことのない剣です」
「イクスのそれは刀と言ってな。切れ味がいいことが特徴だ。抜刀術なんかも使えると戦闘の幅が広がるな」
「私は矢がないようですわ」
「ジーコは弓を引くと自動的に矢が生み出される仕組みになっているよ」
「私はグローブデス!!」
「サンキのグローブは魔法を纏える様にしてあるから、グローブに何かを纏って戦うのがおすすめだね」
「これは……杖……ですか?」
「シロのそれは杖の中でもロッドと言ってね。シロの魔法をサポートしてくれると共に魔力を自動で回復してくれる効果もあるよ」
「短い剣は使えるけど、これは何?」
「ウドのそれは銃って呼ぶんだ。持ち手を握った時に人差し指が触れるところがあるだろう? そこを引き金って呼ぶんだけど、引き金を引くと先端から高速で魔法の玉が打ち出される。貫通力と連射力に優れた武器だよ」
「私達のは短い杖ですか?」
「そうですわね。色が違うようですが」
「ロッカとウドは杖の中でもステッキと呼ぶものだ。シロと同じで魔法をサポートしてくれるけど、二人の得意な魔法用にそれぞれ特化させてある」
「だいふくさんだぁ!」
「ハーピのだいふくさんも、魔法を使いやすくしてあるから。あとは眠りやすいように工夫しておいたよ」
「これはなんですか?」
「キュウカのそれは扇子って呼ぶ物だ。開いたり閉じたりする事が出来て、開いてる時に仰ぐように振ると風の斬撃を飛ばす事が出来る。逆に閉じてる時は短剣の様に近接戦闘が出来るような強度にしてある。あと裏機能だけど、扇子を開いた状態で口元を隠して喋ると、会話相手を洗脳出来る機能も付いてる」
馴染み深い武器であったり、全く見たこともない武器があるので一通り説明しておいた。
今日は使わないので、今後自分なりの使い方を研究して欲しい。
「ま、今日は武器を使う事が無いからな。早速、孤児院へと向かおうか」
俺は妹達を連れて、孤児院へと転移した。
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「すみません、孤児院の子供達に会いにきたのですが」
「はいはい、今出ますので少しお待ちくださいね」
イクスが孤児院の扉を叩いて挨拶をすると、扉の奥から女性の声が聞こえた。
「ごめんなさいね、こんな所まで来て頂いて」
扉が開くと、30代くらいの女性が立っていた。恐らくこの人が孤児院の責任者だろう。
「あら、話は聞いていましたが可愛らしいお嬢さん? 達でいらっしゃったのですね。どうぞ中へお入りください」
「はい。失礼いたします」
ちなみに俺は透明化の魔法で着いて行ってる。
「会いたいと言っていたのは、こちらの子達です」
扉から続く廊下を抜けリビングだと思われる場所に着くと、大きなテーブルに5人の女の子達が座っていた。
どの子も妹達より小さい子達ばかりだ。
「親が居なかった子達はもっと居たのですが、大きい子達は住み込みで働ける場所を騎士団の方々に紹介して頂きました。ここに残っているのは、まだ働けないくらい小さな子達です」
「そうですか……こんにちわ皆さん。お元気ですか?」
イクスはどう切り出していいかわからないようで、とりあえず挨拶をした。
それを聞いた女の子達の中で、一番お姉さんだと思われる一人の子が喋り始めた。10歳くらいに見えるが、妹達が大人びすぎていて年が近そうに見えない。
「はい……助けて頂いたお陰で元気です。本当にありがとうございます」
「ありがとうございます」
「私達は当然の事をしたまでですわ。それよりも、今まで耐え続けた自分たちを誇ってください」
練習をしたのだろうか、お姉さんの言葉に合わせて他の子達もお礼を告げた。
それを受け取ったジーコも、なんと言うのが正解なのか探り探りのようだ。
「あの……これ……」
そう言いながら一番小さいと思われる5歳くらいの子が、丸めて手に持っていた一枚の紙を机の上に広げた。
そこには、9人の女の子の絵が描かれていた。
「これは、私達ですか?」
「うん……」
「——とても上手ですね。頂いても良いですか?」
「うん……お礼!」
奴隷と会う時には認識阻害を使用するように言っていたから恐らく顔は見えていないはずだが、想像で描いてくれたのだろう。
キュウカがその子から絵を受け取る。
「私達には、もう何も残されていません。毎日死んだ方がいいと思って生きてきました。でも、孤児院のユニおばさんに死んではいけないと言われ、皆さんが私達を懸命に助けてくれた姿を思い出して、ここにいる5人で皆さんのようになりたいと話していたんです」
何も残されていないけど、強く生きたい。
そう言う女の子達の目には、希望の光が灯っているように見えた。
この世界の女の子達は、何故こんなにも強いのだろう。
「私達も考えていました。助けた人達が、死んだ方が良かったと思うほど絶望をしていたら、私達には何が出来るのだろうと。でも、そんな心配がいらないくらい皆さんはお強いです。それがわかってよかった」
「そう思わせてくれたのは、きっと皆さんが助けてくれたからだと思います。大人じゃ無い皆さんに助けて頂いたからこそ、憧れる事が出来ました」
妹達に奴隷の救出をお願いしたことは、結果的には良かったということか。
「あの……お姉ちゃんって呼んでもいい?」
絵をくれた女の子と同じくらいの歳の子が言った。
「もちろんですわ! あなた達は、今日から私達の妹ですわ!」
「そうですわ! 困ったことがあったら何でも言うんですのよ!」
ロッカとチセが女の子を撫でながら言う。
「よかったね、リン!」
「うん! アル姉ちゃんの他に9人のお姉さんが出来たよ!」
ん? 妹達の妹ということは、俺の妹ということにならないか?
どうやら、俺の妹が5人増えたみたいだ。変装も必要なくなってしまったな。




