32話 妹達のヒーロー化計画
こちらの作品は、小説サイト「カクヨム」の方で最新話を更新しております。
是非そちらでもお読み頂けると妹達が喜びます。
「すまないな、呼び出してしまって」
「いえ、こちらも事後処理を押し付けた身ですから」
俺は放課後、騎士団長に呼ばれていたため騎士団事務所を訪れていた。
「それで、お願いがあると伺ってましたが?」
「あぁ、実はな——」
騎士団長のお願いとは、先日の大掃除で奴隷商から解放した少女達についてだった。
騎士団が奴隷全員を保護し、家族がいるものは親元に返したのだが、問題は家族を失っている少女達だった。
その子達は、孤児院にいるとのことだ。
「実は、助けてくれた人にお礼を伝えたいと言っていてな……妹達に聞く前に、ルドに聞くべきだと判断したのだ」
「お礼ですか」
今回の件は秘密裏に行っているため、助けたと大っぴらにすることは出来ない。
しかし、妹達に助けた人達の声を聞いて欲しいという気持ちもある。
自分達が守ったものを知って欲しい思った。
「すみません、少し相談させて貰ってもいいですか?」
俺は騎士団長に断りを入れ、念話で妹達に連絡を入れる。
『すまない、実は先日の大掃除で助けた奴隷の子達の中で、みんなにお礼を伝えたいって子達がいるらしんだが、どうする?』
『はいはい、お兄ちゃん的にはどう思っているの?』
監視魔法で事情を把握しているキュウカから返答があった。
『俺としては、会って欲しいと思ってる。自分達で守ったものを知って欲しいからな。だが、公にする訳にはいかないんだ』
『そうですか、私としては是非お会いしたいです』
『私も同じですわ。助けただけであとは無関係なんて後味が悪いですものね』
イクスとジーコは肯定的だ。
『私も会いたいデス!!』
『わたしも……』
『ま、気になってたからね! 自分達がしたことは正しかったのかも知りたいし』
サンキ、シロ、ウドも同じようだ。
『これからどうしていくのかもお話ししたいですわ』
『そうですわね。私達は助けた以上、未来を見守る義務がありますわ』
『ハーピも会うよぉ』
ロッカとチセもしっかりと考えている。
ハーピも、普段は自分から会いたいなんて言うことは無いから、考えてくれているのだろう。
『それでも、正体は隠さなきゃいけないんだよね……? ん〜こういうのはどうかな?』
会いたいという気持ちの確認が出来たところで、キュウカがどう会うかについて提案してくれた。
『仮面をつけて正体を隠すのは? 昔お兄ちゃんとやった、正義のヒーローごっこみたいな!』
正義のヒーローごっこか。よく覚えてるな。
あれは確か俺が6歳、妹達が3歳の頃だった。
俺が妹達に英才教育を施しているとき、善と悪についての価値観をどう教えようか悩んでいた。
そんな時に閃いたのが、正義のヒーローごっこ。
俺がそういう善と悪を初めて知ったのが、小さい頃に見た特撮ヒーローだということを思い出した。
俺が悪役で、妹達が正義のヒーロー役。
あ、ハーピは人質役だったな。
まぁ、正義側からしたら主張が違うのが悪で、逆も然りだから世の中には善も悪もないのかもしれないが、小さい子に良い事と悪い事の区別をつけさせるには良いと思ったんだ。
懐かしいな。最初は悪役の俺に攻撃してくることを躊躇っていたが、俺が記憶を辿って魔法で映像化したヒーローの姿を見せたらすごくハマった。それ以来ノリノリでヒーローごっこをしたな。
特にイクスが一番ハマっていて、衣装なんかも準備してあげた。
『まさか……遂に、私達が変身する時が来たのですか!?』
イクスはやはりノリノリのようだ。念話でも興奮してるのがわかる。
『少し恥ずかしい気もしますが、悪い案じゃ無さそうですわね!』
ジーコも納得している。同じように他の妹達もキュウカの意見に賛同していた。
『そういうことだから、お兄ちゃん! 衣装の準備よろしくね!』
『わかった。任せておけ。騎士団長にも伝えておくよ』
俺はそう伝えて念話を終わらせた。
「確認してみましたが、大丈夫だと言っていました。しかし、正体を安易に晒す訳にはいかないので、少し変装を施そうかと思います」
「そうか、ありがとう。きっとあの子達も喜ぶ。それでは日程は3日後とかでも構わないか?」
「えぇ、こちらで調整しておきます」
「助かる。それじゃ、また3日後によろしく頼む」
「はい。では失礼します」
俺は転移魔法で騎士団事務所を後にする。
こうなったら、最高の衣装を準備しなければ!!
と言ってもオリジナル魔法先生にお願いするだけなのだが。
うむ。戦う女の子達の衣装か……
一つピンと来ているキーワードはある。それは、"巫女"だ。
確か第一王子から聞いた言い伝えに、"九星の巫女"という言葉が出てきた。
本当に妹達が九星の巫女ならば、今からそちらに寄せてもいい気がする。
正体不明の少女達、"九星の巫女"。となれば衣装のベースは巫女装束だ。
しかし、普通の巫女装束では華やかさに欠ける。
よし、改造しよう。時間もあるし。
どうせなら袴じゃなくてミニスカートにしよう。肩もガッツリ出していこう。
ベースはこれにして、あとはみんなの個性に合わせてオリジナル要素を付け足せばいい。
色も、前にお揃いで買ったリボンの色がいいだろう。
イクスは青色。
大きな胸が強調されるようにおへそが出るようにしよう。
武器も剣じゃなくて刀をプレゼントしよう。イクスならすぐに使いこなせるはずだ。
ジーコは赤色。
一番オーソドックスなので、腰帯に大きなリボンをつけよう。
そしてニーソックス。これは外せない。
弓を使うので一番しっくりくるな。
サンキは黄色。
動きやすいように、肩から先は無くして、ノースリーブにしてみた。
これはこれでいい!
シロは白色。
上下に色の変化がないので、フリルなどを付けつつ、どちらかといえばドレスのような仕上がりの衣装にしてみた。
絶対に似合うな。
ウドは茶色。
茶色の袴は見たことがないので、ゴシック風のデザインにしてみた。
もちろんスパッツ付き。新しい世界を開拓した気がする。
ロッカは黄緑色。
お嬢様口調のロッカは、圧倒的ロリータファッション。
もはや袴には見えないが、これが何故か合うのだ。
チセは緑色。
ロッカ同様ロリータファッションだ。
実はチセの方が少し胸が大きくなってきているので、そこがロッカの衣装と違う点だ。
ハーピはピンク色。
色が派手なので、装飾はほとんどしなくても良さそうだ。
それにプラスして、12歳とは思えない胸を持っているからな。
イクスは見せていくスタイルだが、ハーピは隠していくスタイルでいこう。
キュウカは紫色。
巫女装束よりはどちらかというと着物に近いデザインに仕上げた。
妖艶さを持つキュウカにはピッタリだ。
こうして並べてみると、巫女装束感はどこかに消えてしまった。それでもベースが合っているからか、なんとなく統一感がある。
最後に、顔を隠すものだが、巫女に仮面と言ったら狐の面だ。これは口元が見えるタイプにしておいた。
最後に、魔法でギミックを施す。普段はミサンガに収納出来る仕組みにした。
これを付けながら、それぞれが考えたキーワードを口にすると、衣装が切り替わるようにしておいた。変身機能だ。
ついでに、全属性耐性・状態異常耐性・物理攻撃軽減・自動回復くらいの機能は付けておこう。
あまりにとんでも機能をつけすぎて、頼りきりになっても良く無いしな。
ふと時計を見ると、もう日付が変わりそうだった。
熱中しすぎたな。いかんいかん。妹達に披露するのは明日にするか。
喜んでくれるかな。喜んでくれるといいな。




