3話 9つ子の妹が産まれた
あれから約一年の月日が流れた。
俺は3歳になろうとしている。
母さんは俺との約束を果たし、あれから積極的に営んでいた。
声が凄いからすぐわかったぜ。
興奮? するわけないだろ? 妹達を生み出す神聖な儀式だろ?
拝ませて貰いたいくらいだったよ。
そんなこんなで迎えた誕生日。
母さんは11ヶ月もの間、妹達を身篭っていた。
ていうか、お腹が大きすぎる。
妊婦さんとはいえ、ここまで大きくなったっけな……
まぁ、俺は少し大きい双子とかでも全然大丈夫だぞ。
どんな妹だって愛することが出来る。
「メリー様!」
と、そんなことを考えているとその時はやってきたらしい。
母さんは苦しそうにベッドに横たわり、出産の準備をしている。
俺と父さんは別の部屋で待機することになり、その時を待つ。
「ルド、お前も、お兄さんだな。ちゃんと兄弟の面倒を見るんだぞ」
「はい。父上。早く兄弟に会えるのが楽しみです」
正確には妹達らしいが。
そうこうしていると、隣の部屋から元気な赤ん坊の声が聞こえてきた。
「おぎゃー! おぎゃー!」
元気な子が生まれたらしい。
ちゃんと泣いていることから、転生者ではない普通の子なのだろう。
だが、どこか違和感がある。
そうだ。よく聞いてみると、声が多い。
これが2つ、3つしか聞こえてこないならそこまで気にはならなかったが、明らかに今聞こえてくる声の数は小さい合唱団レベルだった。
「大変です旦那様!! 赤ちゃんが! 赤ちゃんが!」
「なんだ! 何かあったのか!」
「い、いえ! 何があったわけではないのですが……赤ちゃんが、"9つ子"です!!」
ちょ、ちょっと待て……
え? 9つ子!?
「すみません!! それは、男の子ですか!? 女の子ですか!?」
思わず食い気味で聞いてしまった。
「坊っちゃま、みな女の子の9つ子です!」
うわあああああああああああああああああああああ
まぁぁぁぁぁぁああああじか!!!
あぁ、女神様……ありがとう。
俺は今日、9人の妹の兄になった。
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「ルド、みんなの名前は決まった?」
元気になった母が俺に話しかける。
そう。俺は3歳の誕生日にあるものを強請っていた。
それは、"妹の命名権"である。
だが、9つ子だとは予想外だったからな……
嬉しいことには変わりないが、俺は完璧に覚えられても他の人が覚えられなければ意味がないし。
ということで、何が9に因んだものはないかと考えていたとき、ふと思いついた。
日本で暮らしていた頃、中二病の時期があった俺は、陰陽師とかについても調べていた。
確かそれ関連に、"九星"と言うのがあったはず。
占いとかで使われていたんだっけな。
「一白水星」
「二黒土星」
「三碧木星」
「四緑木星」
「五黄土星」
「六白金星」
「七赤金星」
「八白土星」
「九紫火星」
これを少しモジって名前を付けてあげよう。
「イクス」
「ジーコ」
「サンキ」
「シロ」
「ウド」
「ロッカ」
「チセ」
「ハーピ」
「キュウカ」
うん。いい名前が付けられた。
俺はこの子達を絶対幸せにするぞ。
「おぎゃーーーー! おぎゃーーー!!」
おっと、またうんちでもしたのかな。
全く、世話が焼けるほど可愛いってもんだ。