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27話 妹達とお風呂

こちらの作品は、小説サイト「カクヨム」の方で最新話を更新しております。

是非そちらでもお読み頂けると妹達が喜びます。


 俺は今、焦っている。


 ここ最近で一番と言っても過言ではない。

 まずい。どうにかしなければ。


 神様からチート能力を授かろうとも、どうしようも出来ない事がある。

 俺が今直面している問題。それは、



 妹パワーが足りない。



 足りない足りない足りない!

 最近妹達と戯れる機会が減ってる気がする!!


 これは由々しき事態だ。


 先日、妹達と共にこの国のお掃除をした。

 妹達には、軽い社会勉強になればいいという思いで奴隷商などの裏家業の始末を任せた。

 結果としては何も問題はなく、最高の成果を上げてくれた。


 それに関しては何も言うことはない。

 だが、あの出来事が妹達にすごい衝撃を与えたみたいだ。


 あれから、みんながより一層自分自身の研鑽に力を入れている。

 何か思うところがあったのだろう。兄として嬉しいことである。


 しかしだ! そのせいで俺との時間が減ってはいないか妹達よ!?

 この前も、ジーコを夜ご飯に誘ったら、


『お誘い頂いたのは嬉しいですわ兄様。しかし本日は弓の訓練でどうしても成し遂げたいことがありまして……申し訳御座いませんですわ』


 なんて言われてしまった!


 兄離れなのかな? もうお兄ちゃんは必要ないのかな?

 そんなことはないはずだ。俺は確かめなければならない。

 妹達との、絆を! 今こそ!


 ということで善は急げだ。


 寝るには早い時間だがら、妹達も何かしているだろう。

 とりあえず監視魔法さん、よろしくお願いします。


 俺は妹達の様子を見てみるが、監視魔法さんに妹達の姿が映らなかった。

 これは……


 風呂だな。


 最近、監視されている事を知ったキュウカが、風呂に入る時は妨害魔法を掛けている。


 ちなみに妹達はいつもみんなでお風呂に入る。風呂も広い部屋を準備した。

 もちろん俺がな。生徒会長になったのは、こういった権力を行使するためだ。


 話を戻そう。


 妹パワーが枯渇しかけている今、なりふり構っている場合ではない。

 今までは兄の威厳を保つために我慢する事があったが、今は限界が近い。


 この対応策として挙げられる選択肢は三つ。


 一つ目は、キュウカの妨害魔法を潜り抜けて、完璧な監視魔法を発動させること。

 これは簡単だ。俺のオリジナル魔法生成があれば、どんな妨害だろうが勘づかれる事なく実現する事が出来る。


 だが、思う。

 監視魔法越しの妹達で満足出来るのか?

 それならば過去に撮った妹達の写真でも満足出来るのと同義だ。

 俺が欲しいのは生の妹だ。ありのままの妹が欲しい。


 故にこの案は却下だな。


 二つ目は、覗きだ。

 監視魔法で覗けるならそれでいいと思うだろう?

 だがそれは間違いだ。あの手この手を駆使して覗くからこそ、崇めることの出来る頂きがあるのだ。漢ならば頂きを目指したいと思うだろう?

 その過程を無くして覗いた物などに、真の価値はない。

 リスク、戦略、そういったものをあらゆる面から計算して覗くからこそ、最高の成果を得られるのだ。


 仕事終わりのビールは美味いだろう? そういうことだ。


 だが、妹パワーが枯渇しかけている今の俺にとっては、これでも足りない。


 ならば最後の選択肢を取る以外ない。

 俺が妹パワーを手に入れるには、最早この方法しかないのだ。


 今までは、兄としての威厳を保とうと抑えてきた衝動。

 それを、解放しなければならない。

 前世で読んだウェブ小説に置き換えるならば、これは"覚醒"。

 俺の人生は、俺が主人公の物語だ。

 ならば今こそ、"覚醒"するしかない!!




「転移」




 おぉ、俺は辿り着いたぞ。天国に。


「やぁみんな、たまには俺と一緒にお風呂に入らないか?」


 プライドなど、過去に置いてきた。

 未来を掴み取るために、俺は俺自身を変えるんだ! 積極的になるんだ!



「お兄ちゃん、




 出て行ってぇぇぇえぇぇ!!」




 うわーん。キュウカに嫌われた。



 ———————————————————————



 俺は今、正座をしている。


 それはそうだ。妹達の入浴中に風呂に凸するなど、どうかしていた。

 俺とした事が、危うく妹達に二度と口を聞いてもらえない所だった。


 全く、常に冷静にならなければな。兄なんだから。


 風呂は追い出されてしまったが、俺の妹パワーは完全に復活した。

 不幸中の幸いだった。

 こんな事をして何も成果が得られなければそれこそ本末転倒という物だ。


「それで? お兄ちゃん。どういうことかな?」


 目の前には、横に並ぶ妹達。

 みんなタオルを胸元に巻いている。俺の妹パワーは限界を天元突破して上昇している。


「すみませんでした。実は……」


 俺は頭を床に擦りつけながら全てを自白する。

 最近、妹達と触れ合う機会が少なかった事。そのせいでフラストレーションが溜まっていた事。妹達と触れ合いたい衝動に駆られてしまい、行動を起こしてしまった事。


「はぁ……別に私は言ってくれれば、拒んだりはしないのに」


「そうですわ……その、急にというのはびっくりしてしまいますわ……」


 ウド! ジーコ!

 言えば一緒にお風呂に入ってくれるのか!?


「兄上、私はいつでも構いませんよ。兄上が好きな時にいらしてください」


「イクス! そうやって甘やかすからダメなのです!」


 イクスは受け入れ態勢がすごい。キュウカには怒られているが。


「そもそも、お兄様が私達に構って貰いたかったのが意外ですわ!」


「本当ですわ! いつもクールで頼りになるお兄様だと思っておりましたもの!」


 ロッカとチセからは、俺はそんな風に見えていたのか。


「わたしも……いやじゃ……ない……です」


「ルドの背中流してあげる〜」


 シロとハーピもこんな俺を受け入れてくれる様だ。


「みんなの意見もまとまった所で、兄様と一緒にお風呂に入り直すデス!!」


 サンキ……今なんと?


「ちょっとサンキ!?」


「キュウカ、いいではないか。寂しがる兄様を私は放って置けないぞ」


 イクスが悪代官のような台詞を言っている。シュチュエーションのおかげで鶴の一声に聞こえるが。


「さ、行きますわよ兄様!」


「あ、ジーコさり気なく兄さんに胸押し当ててる?」


 ジーコが俺の腕を抱きこんで、ウドにいじられている。あ、柔らかい。

 え? 本当に一緒にお風呂入るの?


 ジーコに腕を引かれるまま、脱衣所に連れて行かれる。


「ほら兄様、早く服を脱ぐのですわ……」


 なんて台詞だ。殺傷能力が高すぎるだろ。

 俺は返事も出来ずに無言で服を脱ぐ。服はしっかり丁寧に畳ませて頂きました。


 ジーコが先に行っててくれと言うので、先に風呂場に入る。


 俺はこの後……妹達と風呂に入る。


 さっきまでは想像していなかったが、とんでもない事だ。

 だが、最後の一線を超えるわけにはいかない。


 俺も15歳で妹達は12歳だ。

 そういうことをするのはまだ早い。


 洗い場で待つこと数秒。

 開かれた約束の扉から、生まれたままの姿の妹達が顕現する。


 そんな光景、いや絶景を前に俺は人生初めての強敵と戦う。

 そう、理性に牙を食い込ませる野獣と。


 保ってくれよ、俺の理性!


「兄上、お背中をお流ししますのでこちらへお越しください」


 イクスから魅惑の誘いを受ける。

 俺は指示された椅子へと腰掛けた。


 すると、妹達が俺の全身にシャワーをかけた上で、素手にボディソープを出して塗りたぐる。


 ジーコが右脚、サンキが左腕、ウドは正面の胴体、ロッカは右腕、チセが右脚。シロとハーピはお湯に浸かりながら交代待ちだ。キュウカは後ろで呆れていた。


 妹達の手から伝わる温もりがやばい。目の前にあるウドの胸がやばい。鎮まれ俺のデザートイーグル。理性、早く仕事しろ。


「傷が一杯……私達を守るためにがんばって……いつもありがとう兄さん」


 ウドの二座の霊峰が何かを喋っている。良くない。これは良くないぞ。

 そうだな、ウド、大丈夫だよ。これはみんなを守る為についた名誉の傷だ。

 だから人差し指でなぞっちゃダメ。


「兄上、失礼します」


「あぁ! イクスが兄様に抱きついてるデス!!」


 背中に伝わるこの柔らかさは……なんだ?

 まずい、意識すると野獣が!


 くそ! このままではデッドラインを超えてしまう!!

 もはや理性は崩壊している。このままでは俺のガバメントが暴発しかねない。


 今こそオリジナル魔法を使うべきだ。

 神はこれを見越して俺にこの力を授けたのだろう。


 さぁ今こそ、その力を示せ! 俺が生み出した新しい力!!




「賢者時間」




 ふむ。可愛い妹達に体を洗って貰えるなんて、俺は幸せ者だな。

 この幸せな時間を奪わせない為にも、俺はもっと強くならなければいけない。


 どんなことがあっても、みんなを守り抜いてみせるぞ。


「はぁ……お兄ちゃんそうまでして……」


 どうしたキュウカ。裸のまま立っていたら風邪を引いてしまうだろ。

 シロとハーピを見習って浴槽で待っていなさい。



「さぁ、次は俺がみんなの体を洗う番だ」



 その後、動けなくなった妹達に服を着させてベッドに運んであげた。

 昔を思い出すな。あの頃と変わらず可愛い妹達よ。




 俺の妹に生まれてきてくれてありがとう。


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