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23話 妹のために国の掃除をする

最新話はカクヨムの方で掲載しております。

よかったらそちらでもご覧ください。


 王女様の話を聞いた俺は、ひとまず王都に転移して王女様を送り届けることに。

 俺は、王女様が落ち着くのを待って声を掛けた。


「王女様、ひとまず安全な場所に避難して頂きたいのですが、私が転移魔法で王都までお送りします。よろしいですか?」


「転移魔法を使えるのですか? その若さで優秀な方なのですね」


「そんなことはありません。私の妹でも使えますから。それよりも、転移先に都合の良い場所はありますか? 出来れば、この状況を説明出来て、事後処理に動いてくれる方の所が良いのですが」


「それでしたら、騎士団長に頼るのがよろしいと思われます。兄様とも……親しくされてましたので」


 兄様、というワードを口にするのは辛いようだ。少し注意しておこう。


「わかりました。では騎士団長の所へ転移いたします。そちらの方は私が担いで行きますので」


 そう言って俺はセドルと呼ばれた御者の人を担ぎ上げる。


「騎士団長の居場所をご存知で?」


「えぇ、顔見知りです。それでは行きますので手を」


 俺はセドルを担いだまま、王女様の手を取る。

 本来転移には必要ないが、なんとなくだ。王女の肌に触れる機会なんて今後無いからな。


 騎士団長は現在、騎士団訓練場にいるようだった。

 俺は騎士団長の目の前に転移する。


「のわっ!? っと生徒会長と……アシュレイ王女殿下!? どうしてこんなところに!」


「訓練中にすみません、騎士団長。緊急の要件をお伝え致します」


 俺は、王女様との出会いから今までの話を簡潔に説明する。

 途中王女様が補足を入れてくれたことにより、スムーズに状況を伝えることが出来た。


「なるほど、了解した。アシュレイ王女殿下、後の処理はお任せください。第二部隊隊員は直ちに集合!!」


 騎士団長は事後処理のために迅速な対応を取ってくれた。

 担いでいたセドルも騎士団の人に引き渡した。休憩室で休ませてくれるとのことだ。


「兄上! どうなされましたか!」


 声を掛けてきたのはイクスだ。

 そういえばイクスは最近騎士団で稽古を付けて貰っていたな。


 イクスは女性用に仕立て上げられた鎧を身につけた状態でこちらに走ってきた。


「すまないなイクス。訓練の邪魔をしてしまった。緊急事態が起きてな」


「緊急事態ですか……兄上はご無事のようで安心しました。それと、そちらの方は?」


「あぁ、こちらの方はアシュレイ王女殿下だ。ご挨拶を」


「失礼致しました、王女殿下。私、イクス・シスハーレと申します。ルド・シスハーレの妹で御座います」


 イクスは、前にも増して洗礼された騎士の礼を行った。

 その姿を見惚れてしまったのは秘密だ。


「ご丁寧に有難う、イクス。王女アシュレイです。一つ質問しても?」


「なんでしょうか?」


「その……お兄さんのことは、好きかしら?」


 王女様は意味不明なタイミングで、不思議な質問をイクスに投げる。


「あ、あ、兄上をですか!? そ、それは……その……お慕いしておりますが……」


 最後の方はすごく小さい声になっていた。モジモジしているイクス可愛い。

 この王女様、なかなかやるな。こんなイクスの姿を見せてくれるとはいいセンスだ。


「そうですか……羨ましいですわ。お兄さんを、大事になさってくださいね」


 そこまで言われてイクスは気付いた。先日、第二王子が亡くなられたという話を。


「——はい。今は守られてばかりの私ですが、いずれは兄上のお役に立てる様、精進して参ります」


 イクスは王女様の言葉をしっかりと受け取り、訓練に戻っていく。

 王女様としては複雑だろう。もう兄を救えないと知ってしまったのだから。



「アシュレイ王女殿下、お待たせして申し訳御座いません。部下への指示は終わりましたので、後はこちらの者達と王城の方へお戻りください」


「はい、ご迷惑をお掛け致しました。ルド、今回のお礼は近々させて頂きますので。それでは失礼致します」


 晴れない表情のまま、騎士団の人と共に訓練場から出ていく王女様。


「騎士団長、一つお願いがあるのですが、王女殿下の警護を多くしてもらうことは可能ですか?」


「生徒会長、それはどういうことだ?」


「王女殿下は、死んだ人を蘇らせる薬の材料を求めて、森の奥地に行きました。しかしそんなものはこの世には存在しないのです。王女様を陥れようとした人間がいるかもしれません」


「なんだと! アレイ王子殿下だけではなく……アシュレイ王女殿下までも手に掛けようというのか……」


 ん? 今なんと?


「すみません、王子殿下は病気で亡くなられたのでは?」


「あぁ、この事は極秘事項だ。確かに王子殿下は体が弱かったが、それでもこんなに早く死ぬ程のものでは無い。確証はないが……恐らくは暗殺だ。現在調査中だがな」


 なんともキナ臭い話になっていた。

 この王国でそんなことが起きていたのか。


 妹が住むこの王国がそんなんでは、安心して夜も眠れない。

 この際だから、そういったゴミの処理もしておくか。


「騎士団長、私は今後、王女殿下を陥れた奴の行方を探します。ついでに王子殿下の件も調査しましょう。恐らく裏では同一人物が手を引いていると思われますので」


「やめておけ。一学生が首を突っ込んでいい問題ではない。命を落とすことになるかもしれんぞ? もちろんお主だけではない。妹達もだ」


 ならば、なおさら止めるわけにはいかないな。

 今回のことで、俺は暗殺を失敗させた張本人だ。


 何かを仕掛けてくる可能性は十分にある。


「それであれば、もう手遅れでしょう。片足でも関わってしまいましたからね」


「なぜそうまでして……」


「なぜ? 私にとっては当たり前なのです。妹達に危害が加わる可能性があるならば、その芽を早めに狩り尽くす。それが私の存在意義です。もちろんご迷惑はお掛け致しません。この国のゴミが掃除されるくらいに思っておいてください」


 そう。全ては妹達のため。

 俺は妹達を守るためだけにこの世界に転生したのだから。

 もちろんそれが俺の望みでもある。


「……わかった。俺からはもう何も言わん。何かあれば責任も取ろう。一応学園側にも報告はしておくがな」


 いや、騎士団長にそこまでして貰う理由は無いのだが……


「責任までは押し付けません。お言葉だけ有り難く頂きます」


「ならん。その話を聞いて、俺が黙っているとでも? お前はイクスの兄だ。そしてイクスは、将来騎士団長になる器の持ち主だ。将来の騎士団長の兄を蔑ろにしたら、俺がイクスに顔向けできん。」


 なんと……イクスがそんなにも評価されているとは。

 そして、イクスのおかげで俺は今、強力な後ろ盾を得ている。


 本当に出来た妹だ。こんなところでも救ってくれるなんてな。


「——わかりました。イクスに感謝して、やらせて頂きます」


「俺としても、王子殿下暗殺の謎を暴けるのは願ってもないことだ。俺は、あの方に返しきれない恩があったからな。何かあればなんでも言うといい。イクスが崇めている兄だ。期待しているぞ」


 そう言いながら俺の肩を叩き、騎士団長は出口に向かって行った。

 騎士団長にも事情があるのだな。王女様も仲が良かったと言っていたし。


 イクスに胸を張れる様に、一刻も早く妹達が安心出来るように。

 迅速に事を対処するか。


 とりあえず俺は、王城の先端へと転移する。

 ここであれば王都を全て一望することがで出来る。


 まずは情報を集める必要がある。そのためには"目"が必要だ。


 久しぶりに本気を出すか。


「究極魔法 トゥルーアイズ」


 この魔法は、俺が透視魔法と監視魔法の訓練をしているときに見つけた、王城の禁書庫にあった秘密の魔法だ。


 使える人はいないはず。俺は聞いたことがない。

 禁書庫には、この究極魔法に関する文献がいくつも残っているが、今は使用が禁止されているためだ。

 なぜなら、究極魔法は使うと死に至る。


 では、なぜ俺が使えるのか? それは転生時に神様がくれたチート能力その壱に理由がある。


 そのチート能力とは、"魔法生成"


 自分の思い通りの魔法を生成することが出来る能力。

 これで、時間停止や監視魔法なども生成した。もちろん妹達にもある程度は教えている。


 究極魔法は、単純に魔法生成で作り直しただけだ。死なないで使えるように。


 このトゥルーアイズはこういった情報収集には持ってこいの魔法だった。

 なぜなら、"効果範囲内の全人間を見る"能力だからだ。


 すごい情報量が脳に入ってくるので、思考加速も併用する必要があるが、これを使ってわからないことはない。

 名探偵も喉から手が出るほど欲しい魔法だろう。まぁ、あいつらは証拠が寄ってくるから必要ないかもしれないが。



 さて、尻尾を出すまで監視させて頂こうか。

 こんにちは、この王国に住む国民の皆さん。


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