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21話 妹の嫁探し

最新話はカクヨムの方で掲載しております。

よかったらそちらでもご覧ください。


「中学級のキュウカさんはいらっしゃいますか?」


「はい。私はここにいます」


「キュウカさん、お取り込み中のところすみません。実は……」


 キュウカと放課後の図書室で勉強をしていた時、キュウカを訪ねてくる人がいた。


「ごめんお兄ちゃん、委員会から急な呼び出しがあって、少し離席するね」


「あぁ、荷物は見ておくからいってきな」


「ありがとう。それじゃ、ちょっとだけ待っててね」


 と言い残し、キュウカは呼びに来た女の子と図書室を出ていった。

 俺は一人で勉強の続きを始めようとするが、ある物の存在に気付く。


 それは、キュウカの荷物の中にあった黒いノートだ。


 このノート、前々から気になってはいたが、何が書いてあるのかわからない。

 俺の監視魔法をもってしても中身を覗き見ることが出来ないのだ。


 恐らく認識阻害の魔法が施されていると思うが、そうまでして中身を見られたくない物らしい。


 普通であればそういった妹達のプライベートや、趣味のことに首を突っ込んだりはしないが、単純に気になる。


 兄として、キュウカがどんなことをしているのかを知っておくのは当然のことだ。


 そう思い、俺は黒いノートに手を伸ばした。


 外見はパッと見、不気味だが普通のノートだ。

 名前を書くと、名前を書かれた人が死ぬノートに似ている。


 一応、鑑定魔法を行っておく。

 監視魔法でも見れないような対策を行なっているのだ。もしかしたら何かがあるかもしれない。


 そう思い試してみたが、ビンゴだった。このノートを開こうとした場合、ノートが焼き払われる魔法が掛けられていた。


 知らずに開けていたらキュウカの大事なノートを焼き払ってしまうところだった。


 ここまでするということは、余程中身を見られたくないのだろう。

 少し気が引けるが、危ないことを行なっていないとも限らない。

 まぁキュウカに限ってそんなことはないと思うが。


 とりあえずここまで来たんだ。軽く中身だけでも見ておこう。


 俺は、焼き払われる魔法を一時無効化し、ノートを捲る。

 すると、ノートには大量の文字が敷き詰められていた。

 よくよく見ると、それはこの学園に在籍する人の情報だということに気付く。


 名前、クラスはもちろん、家柄、容姿、趣味、性格なども事細かに書かれている。


 そしてなぜか女の子の情報しかない。


 こんな情報を集めて一体何をするんだ……と思っていたが、明らかにおかしい項目を見つけてしまう。


 これは……"お兄ちゃんに話しかけた回数"と"嫁総合評価"だ。


 嫁総合評価に関しては、ほとんどがEランク。

 あ、同じクラスのクラウスさんだけCランクだ。


 そして最も驚きがあるのは"お兄ちゃんに話しかけた回数"


 何が驚きかというと、キュウカも常に俺のことを見ていないとわからないという点だ。


 俺は一度ノートを閉じ、周囲にある認識阻害魔法を探る。

 ただ、認識阻害魔法を検知することは出来ない。


 これはキュウカが本気になっているな。

 ならばと思い、検知範囲を半径5kmで行う。


 半径5kmとなれば、学園にある貴重な物や、王都にある骨董品なども検知にかかってくるが、明らかに一つおかしい位置にあるものを見つける。


 それは、上空1kmのところにあった。

 認識阻害の他に、透視、熱感知、生命感知、検知感知、望遠の効果が付与された監視魔法だ。


 そこまでするか……とも思ったが、完璧主義なキュウカのことだ。

 ここまでしてこそなのだろう。


 そして俺が検知をしてしまったということは、


『あ、お兄ちゃん、気付いちゃったんだね。今そっちに戻ってるから待っててね』


 とキュウカから念話が入った。


 棒読み感があったが、もしかしたら恥ずかしいのかもしれない。

 兄を四六時中見ているなんてことは、妹として知られたく無かっただろうからな。


 少し申し訳ないと思いながら、俺はキュウカを待つことにした。



「お待たせしました。お兄ちゃん。ごめんね」


 何事もなかったように自分の席に着き、綺麗な黒髪を掻き上げるキュウカ。


「あぁ、おかえりキュウカ。委員会の方はもういいのか?」


「はい。大した用事でもなかったので。こちらに比べれば」


 早速ジャブを入れて来たな。普段使わない敬語になってるぞ。

 俺としては別にキュウカがどんな趣味を持っていようといいのだが、久しぶりにキュウカと戯れるのもいい。


「こちら? 一体何かあったのか?」


「へぇ、惚けるの? お兄ちゃん。」


「惚けるも何も、何のことかさっぱり」


「こちらのノート、見てしまったのね?」


 ほう、最初から核心を付いて来たか。


「それは、キュウカの大切にしているノートだったかな?」


「そうです。このノートを見なければ、わざわざ上空1kmにある監視魔法を検知なんてしないよね?」


「たまたまそういう時もあるだろう?」


 流石に鋭いなキュウカ。これ以上は誤魔化しきれないか。


「はぁ、お兄ちゃんには流石にバレるかぁ。それで……その……軽蔑した?」


 軽蔑? 何故俺が?


「軽蔑? 俺がキュウカを? どうして?」


「どうして……と言われても、気持ち悪いから?」


 気持ち悪いか……そこがそもそもわからない。

 俺がみんなを監視しているように、妹が俺を監視するのは普通じゃないのか?

 もしかして……俺も気持ち悪いのか!?


「どれが気持ち悪いに当たるんだ?」


「その……お兄ちゃんを監視していたり、お兄ちゃんに近づく女を採点したり?」


「そうだな、監視については俺もしているから普通だし、女の子を採点することに関しては、まぁ危害を加えなければ趣味として問題ないんじゃないか?」


「え?」


「ん?」


 何かおかしい事を言っただろうか?


「あれ……お兄ちゃんも……監視しているの?」


「知らなかったのか? てっきり気付いてて認識阻害を施してるのかと思ったが」


「ただの覗き見防止よ! え? どこまで??」


「どこまでって……基本全て? もちろん妹達全員だよ」


 それを告げると、真っ赤な顔になったキュウカ。


「妹とはいえ、女の子の私生活を覗き見ちゃダメだよ!! ていうことは……まさか……私がお兄ちゃんの名前を呼びながら一人でしてるのも……」


 あぁ。もちろん知っている。

 そういう年頃なのだろうと微笑ましく見守っていたよ。


 慌てふためくキュウカが可愛いので、とりあえず頷いておく。


「はぁ……もういいです……改めて兄妹であることを自覚しました……」


 確かに。そう言う意味ではキュウカが一番俺に似ているかもしれない。

 同じ黒髪だし、俺が妹達に過保護なのに対し、キュウカも俺に対して過保護だ。


「見られてしまった以上は仕方ないね! お兄ちゃんは、お嫁さんとかについては考えているの?」


 こういう切り替えが早い点もそっくりだな。

 それにしてもお嫁さんか……


「全く考えたことは無かった」


「だと思ったよ……お兄ちゃんも15歳! 婚約者がいてもおかしくないんだよ!」


 確かに。この世界は日本と比べて大人という扱いになる年齢が早い。

 それゆえに結婚する平均年齢も低くなる。

 基本的には18歳くらいで結婚するらしいが、早い人は10歳になる前から婚約者が決まっている。


「確かにそうだな……それはそうと、みんなもそういう事を考えてもいい歳じゃないか?」


 そう。妹達も既に12歳。

 婚約者がいてもおかしくない年齢だし、実際そういった誘いを受けている場面を見かけることも少なくない。

 その度に殺しそうになる衝動を抑えているが。


「それはその……私達はお兄ちゃんと……」


 なんと、そんなことを思ってくれていたのか?

 確かにこの世界では兄妹で子供を作ることも珍しくはない。


 俺としても、そういう未来を想像しなかったわけではないが、あくまで妹達の自由意志を尊重している。


 何より、妹は正妻には出来なかったはずだ。


「だから私がいろんな女の情報を探っていたのよ。将来の姉になるかもしれないからね。まぁ、今のところ許可出来る人はいないけど」


 なんと、俺はキュウカの御眼鏡に適う人としか婚約出来ないらしい。

 ま、キュウカに認めて貰えない人を俺が好きになることは無さそうだけどな。


「そういうことだから、お兄ちゃんは早く正妻を見つけてね!! じゃないと私達も咲き遅れちゃうよ!」


 それは良くないな。

 もちろん、この先妹達に好きな人が出来て、その人と婚約することになる可能性だってある。

 だが、どうなるにしろ俺の身の回りを安定させておくに越したことはない。

 そうすれば妹達を安心させてやることが出来るからな。


「そうだな。俺もちょっと自分の事を考えてみるよ。もう卒業まで3年もないしな」


 結婚か……考えたこともなかったな。


 あぁ、妹達のことだけを考えて生きていきたい。

 だが、これも妹達のためだと思って頑張ってみるか。


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