11話 妹達とツイスターゲーム
俺は脳内で、妹達とツイスターゲームをした。
今は夕食を妹達と共にしていた。
「それで、魔術委員になる2人を決めなければならないのですが……」
キュウカが申し訳なさそうに話をする。
何故申し訳なさそうかと言うと、妹達が揉めているためである。
「兄上と共に仕事をするのは長女である私の役目!」
と主張するのはイクス。
「何言ってんの! 長女って言ったって産まれた時間はそんなに変わりないじゃない!」
反論するのはサンキ。
「しょうがないから間を取って、私が魔法委員とやらになって上げましょう! べ、別に兄様と一緒がいいわけじゃないのですからね!」
ツンデレを発動するジーコ。
「ならジーコは引っ込んでなー。私達は兄さんと一緒の魔法委員になりたいんだからね」
ジーコに精神攻撃を仕掛けるウド。
「あの……わたしも……」
オドオドしてるシロ。
「「定員が二人なら私達で丁度よろしいじゃありませんか!」」
息ピッタリなロッカとチセ。
「ルド……お腹いっぱい……寝てもいい?」
変わらないハーピ。あと寮の食堂に枕を持ち込んでじゃダメだよ。
ふむ。妹達がこうして仲良くしてる姿も可愛い。
このままずっと妹達を眺めていたいところだが、寮の食堂が閉まる時間も近い。
ここは一つ、提案してみるか。
「決まらないようだから、一つ、ゲームをしよう」
本来であれば、魔法戦闘などで決着を付けて、強い順に魔法委員に入ってもらうのがいいのだが、妹達の実力ならば誰が入っても問題ないだろう。
それに妹達同士で戦わせたくはないしな。
「お兄ちゃん、一体、何のゲームをするのですか?」
キュウカが訪ねてくる。
小さい頃から魔法で前世の遊びを再現して、妹達と遊んできたから、ゲームという言葉は妹達にとっても馴染み深かった。
「それはな、ツイスターゲームだ」
ツイスターゲーム。
知る人ぞ知る、悪魔の遊び。
リア充達に許された神々の遊びだが、リア充達はこんな遊びはしない。
何故なら奴らは即ベッドの上でツイスターするからだ。
前世の俺は、ツイスターゲームをしたことさえ無いのに、ベッドツイスターなんて夢のまた夢だった。
俺は妹達と、ツイスターゲームをしたい!!
妹達よ、今こそやろうではないか。
神々の遊びを!!
「ふむ。なかなか面白そうなゲームであるな」
「あたし、こういうゲーム得意! 負けないもんね!」
運動神経のいいイクスとサンキはノリノリだ。
「兄様と一緒の委員会……兄様と一緒の委員会!」
「ジーコ、素直になりなよ」
心の声がダダ漏れのジーコと突っ込むウド。
「わたし……できる……かな……」
「大丈夫ですわ! 今こそ勉強の日々を思い出すのです!」
「そうですわ! 要は作用と反作用ですわ!」
励まし合っているシロ、ロッカ、チセ。
チセ、多分それは違うと思う。
「眠い……」
「ほらハーピ、もうちょっと頑張ろ?」
姉であるハーピの世話をするキュウカ。
和むなこのペア。
よし、役者は出揃ったようだ。
「創造魔法・ツイスターゲーム!!」
俺はツイスターゲームを上級魔法で創造する。
完璧だ。
本来のツイスターゲームは、縦4列、横6列で色が4色だが、今回は俺含め10人で行うため、みんなが1マスずつ離れるように列を増やしている。
ちなみに俺は真ん中だ。ルール違反? 何を言ってる。ゲームマスターがルールだ。
さて、始めるとしよう。
「それじゃ、スピナーを回すぞ」
俺は合図を送ると、魔法でスピナーを回す。
まずは……右手を赤か。
ふむ。初手は皆余裕なようだな。どんどん行こう。
それから3手、4手と進めていく。
すると、早くもこのゲームの醍醐味がやってきた。
「お兄様! そこどいて下さいまし!」
まずはロッカか。その勝負、乗った!!
「悪いが俺も動けない、脚の下を潜らせるしかないな」
「な、それでは……失礼致しますわ!」
人数が多いからな。この段階で相当無理な体勢になっているようだ。
ロッカ、先の手を読む力がまだ足りないようだな!
次の手、どう受ける!!
俺は意図的にスピナーを、ロッカが苦しい位置で止める。
「左手を青だ! さぁどうする!」
「ぐぬぬ……お兄様! 失礼します! ウィンドウ!」
なんと、ロッカは魔法で俺を浮かせてその隙に手を置いた。
なかなかやるな。優れた判断力だ。
このままでは、俺は落ちて失格になってしまう。
だが、甘いな。
俺は浮遊感が無くなると、元々手足を置いてあった場所に、完璧に着地する。
もちろん、ロッカに覆い被さる形で。
「ロッカ、残念だったな。いい判断だったがまだ甘い」
俺はロッカに覆い被さりながら、耳元で囁いてやる。
「お兄様……それ以上、耳元で囁かないで……くだ……にゃは」
ロッカは、変な声を出しながらその場に倒れ込んでしまった。
ふむ。ロッカには刺激が強かったか。
さて、次のターゲットは誰に……
と思って他の妹達を見渡せば、皆、顔を赤らめて目が血走っている。
どうした、ちょっと怖いぞ。
とりあえず俺はゲームを再開する。
2手、3手と進んでいくが、何かがおかしい。
妹達が、迫って来ているのだ。
これは不覚だったな。まさか協力プレーで倒しにくるとは!
いいだろう! この兄が受けてたとう!
イクスは体幹がいいが、がっつきすぎて視野が狭まってる!
「あひゃん……」
ジーコは大胆さにかける! こういう勝負は時に大きく賭けに出ることも大事だ!
「にいさま……」
サンキ、ルールを守れ!
「あわわ!」
シロは身体の動かし方を少し勉強しなさい!
「……はわぁ……」
ウドは相手の嫌がるところをつくのが上手いな!
「負けちゃ……った」
チセ、太ももの匂いを嗅ぐな!
「にゃはぁ……」
ハーピ! 胸が大きい! 柔らかい!
「ウドォ……おやすみぃ……」
最後はキュウカか。
なんと、ぐちゃぐちゃになったせいなのか、キュウカは俺の下でブリッジの状態を保っている。
「お兄ちゃん、苦しいので、どいて頂けますか?」
「それは聞き入れられないな。俺も兄として負ける訳にはいかない」
そう、兄としてだ。
「はぁ……それならば仕方ありませんね」
キュウカはそういうと、ブリッジを解放して俺に抱きついてきた。
「優しく(降ろ)して下さいね?」
グハァ!!
俺はその言葉を受けて、思わず上体を起こしてのけぞり、背中を付いた。
もちろんキュウカは抱きついたままだ。
「あれ? 私はまだ床に着いてないけど、私の勝ちでいいの? お兄ちゃん」
あぁ、もういい。お前の勝ちだ。
その笑顔が見れただけでも満足だ。
初めて俺を負かしたということで、キュウカは凄く喜んでいた。
他の妹達も意識を取り戻したのか、皆悔しがってる。
あぁ、ツイスターゲーム、最高だったな。
あれ、なんでツイスターゲームすることになったんだっけ?
ま、いっか。楽しかったし。




