102話 復活は妹の写真1億枚で(推定)
こちらの作品は、小説サイト「カクヨム」の方で最新話を更新しております。
是非そちらでもお読み頂けると妹達が喜びます。
人は人に観測されて初めて人になれる。
僕を観測する人がいないこの世界では、僕は人にはなれない。
あれ、僕ってなんだろう。
あれ、世界ってなんだろう。
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目の前に広がるのは、灰色の街。
渋谷なのか原宿なのか、それとも全然関係ない街なのか。
今はもう思い出せない。
あそこの看板には何の広告があったかな?
あそこは電光掲示板だったはずだ。
あの店は……飲食店……いや、雑貨屋だったか?
車も一台も通らないし、人にも合わない。
終わった世界。俺だけがいる世界。
なぜこんなところにいるのだろう。
ここに来てどれくらいの時が経ったのだろう。
最初の頃はここが天国かぁなんて呑気なことを考えていた気がする。
気がするっていうのは、それさえも定かではないほどここでは考えるのが嫌になるからだ。
何も考えたくない。
何もしたくない。
早く消えたい。
誰か……助けてくれ。
誰か……?
誰ってなんだろう。
確か、僕以外の何かだった気がする。
気がする? 僕? ダメだ。限界かもしれない。
限界? 何に抗っているんだ?
そうだ。もういっそ、このまま何も考えずにいればいいんだ。
そうすれば楽になれる。
そう、思考を停止して、
そして——
……
…………
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ひかり……?
光だ。
光ってなんだろう。
目が痛い。嫌な感じだ。
だけど何でだろう。
鼓動が高鳴る。
あれ? 初めて気づいた。鼓動があるなんて。
なんでだろう。触れてみたいと思った。
あの光に触れたら……何かが変わるかもしれない。
突然目の前に現れた光に、恐る恐る触れてみる。
すると、光が弾けて灰色の世界に散らばっていった。
何千……何万……なんてものじゃない。数え切れないほどの光の粒が宙に浮かんでいる。
そのうちの一つから、花が咲くように一枚の写真が現れた。
あれは……俺と……女の子が9人?
なぜだろう。俺は彼女達を知っている。
なぜだろう。頬を温かい何かがつたっている。
なぜだろう。会いたいと、そう思ってしまう。
その時、散らばった小さな光の粒が咲き誇るように、写真が次々と現れた。
その全てに俺の知ってる彼女達が写っている。
剣を振る姿。
腕を組んでいる姿。
何かと戦ってる姿。
本を読んでる姿。
笑顔の横顔。
大勢を引き連れて歩く姿。
口元に手を当てて堂々と立つ姿。
何かを抱いて眠っている姿。
髪を掻き分けて何かを書いている姿。
それだけじゃない。
ここにある全ての写真に、彼女達が写っている。
そして、全ての写真を、
俺は知っている。
いや、俺だけが知っている。
俺だけが観測してきた、俺の世界。
俺の全て。
だけど、本当は違ったんだ。
俺が観測されていた。
彼女達がいつも見てくれていた。
あの写真も、あの写真の時も、あの時も。
いつだって彼女達が俺をこう呼ぶから、俺は俺としていれたんだ。
そう。
兄上と。兄様と。兄さんと。お兄様と。ルドと。お兄ちゃんと。
そうだ。俺は彼女達の【兄】だ。
それ以外の何者でもない。それだけが全てだ。
それ以外の名前や、生まれや、思考なんて全てどうだっていい。
俺は彼女達の……妹達の兄だ。
帰ろう。
妹達の元へ。
「僕を置いていくの……?」
置いていかないよ。お前も俺だ。俺もお前だ。
お前はなんだ?
「僕は……【孤独な者】だよ。それ以上でもそれ以下でもない」
違う。俺もお前も同じだ。誰かに観測されてその存在が決められるんだ。
お前を孤独な者と観測する奴がいなければ、お前は孤独な者にはなれない。
お前を観測する奴がいれば、お前は孤独な者じゃない。
さぁ、お前は……誰だ?
「僕は……僕は……俺は……俺だ」
そうだ。お前は俺だ。
「俺は……妹達の兄だ……それが……全てだ!!」
さぁ、帰ろう。
妹達の元へ。
俺の、世界へ。
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「ル……ド……?」
「ハーピ……か……おはよう」
「ルドォォォォ!!」
久しぶりに感じた温もりは、とても柔らかい感触だった。
あぁ、俺は帰ってきたんだな。
「ハーピ姉さん! 気持ちはわかるけど、今はみんなのところへ急ごう!!」
「そう……だね! おかえりルド!! みんなにも早くおかえりしてあげて!」
俺はハーピの頭を撫でて答える。
「あぁ、ただいまハーピ。みんなにもただいましに行こうか」




