101話 俺の嫁を返してもらう
こちらの作品は、小説サイト「カクヨム」の方で最新話を更新しております。
是非そちらでもお読み頂けると妹達が喜びます。
俺は怒っている。それは過去一番にだ。
何に? 妹を傷物にした変な黒マント集団に? アーシェを取り込んだヒュドラに?
俺の肉体を消しとばした勇者に? 魔王に?
違う。
俺自身にだ。
妹達が傷ついているのも、黒マント集団が調子に乗ってるのも、勇者が俺の肉体を吹き飛ばしたのも、
全て俺の失態だ。
俺がもっと慎重に動いてればこんな事態には陥らなかった。
だが、過去を悔やんでも仕方がない。
もう時間は進んでしまったんだ。
今回は妹達に本当に助けられた。本当に立派な妹達だ。
今度は俺が助ける番だろ? 妹達の期待に応えられるように、
俺が全てを救ってみせるよ——
「今更イレギュラーが出てきたところでどうということはない」
「君一人で何ができるの? ただの星のくせに」
「会いたかったよルド君。妹がお世話になったね」
誰だよお前ら自己紹介しろよ。あ、あいつはアーシェの私室の写真で見たことあるな。確か……第二王子か?
「あんた、生きてたのか?」
「君と同じさ。妹に会いに地獄から舞い戻っただけだよ」
「ふ〜ん。それじゃ——」
俺は孤独な者になりかけたことで得られた力を解放する。
「もう一回地獄に帰って貰おうか」
全てを滅ぼす精神力の光を黒マントの集団目掛けて放つ。
黒マントの集団は個々に散開し、攻撃を回避した。流石にあの光に触れたくはないらしいな。
「ほう……覚醒した上で自我を保っているのか。興味深いな」
「舐めてるねあいつ、殺していい?」
「ダメに決まってるだろアルゲディ。それに今の奴は危険だ。ここは退散だよ」
「ちぇっ。まぁ楽しみは後にとっておくよ」
どうやらお帰りになるらしい。今日のところは見逃してやろう。今の俺は忙しいのだ。
「既にアーシェはヒュドラに還った。さぁ、婚約者を救えるかな? ルド君」
「妹にそんなことが出来るなんてな。見損なったぞ第二王子」
「僕だって苦しいよ。でもアーシェの運命で僕の願いだ。きっとアーシェも喜んでくれるはずさ」
「あっそ。帰らないなら消すけど、どうする?」
既に他の黒マント達は退散しており、ここには怪しげに光るヒュドラと第二王子、アーシェの抜け殻と妹達しかいない。
「また会えるのを楽しみにしてるよルド君」
「次会う時はしっかり消すから覚悟しとけ」
俺の言葉を受け取って消えるアレイ。
さて、まずはアーシェの救出だな。
横たわっている肉体に触れる。
よかった、まだ体温がある。肉体は使えるな。
魂はヒュドラの中か。
「アルちゃん、ちょっと手伝って貰っていい?」
「もちろんだよ兄さん! 何するの?」
「アーシェの魂を奪う」
「なるほどねぇ……おっけー! 魂までのルートは私が繋ぐから、王女をちゃちゃっと奪ってきて!」
相変わらず頼もしいなアルちゃん。さてと。
アーシェの肉体を抱き上げ、ヒュドラに向かって歩みを進める。
「久しいなイレギュラー。残念ながら星は既に我の中だ。お主ではどうすることも——」
「返してもらう」
ヒュドラの胴体に触れる。アルちゃんのサポートのおかげでどこにアーシェの魂があるかは明白だ。
「ごめんな、苦労をかける旦那で。でも、もう大丈夫だ」
アーシェの魂に精神力で干渉し、俺の魂に取り込む。
「貴様!! 何を!?」
「ウゴクナ」
うるさい蛇は圧をかけてやれば大人しくなると何かの本に書いてあったが本当だな。あれ? 書いてたよね?
アーシェの魂は無事回収できたので、壊れないようにそのままアーシェの肉体へと戻す。
一度肉体と魂が離れたんだ。少し馴染むまでに時間はかかるな。だがこれで安心だ。
「さて、帰ろう」
妹達の治療も既に終えている。精神力の使い過ぎで今は寝ているがな。
「グ……貴様……」
「あ、もう動いていいぞ」
「貴様!! 我を愚弄する気か!!」
「お前ともいずれ決着をつけるからな。また会いに来てやるよ」
「舐めるなよ小僧!!」
うるさいのでみんなを連れて転移する。さらば蛇よ。
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転移した先は我が家だ。
妹達はそれぞれの部屋のベッドに、アーシェは俺のベッドに。
アルちゃんとハーピ、キュウカはエントランスに転移させた。
「ただいまみんな。早速でごめん、それぞれの部屋にみんな寝ているから看病をお願いできるかな?」
転移で帰ってくるのを知ってましたよと言わんばかりにスタンバイしていたメイド妹達に、自室で寝ている妹達を任せる。
「畏まりましたルドお兄様!」
「……!」
最年長のアルが代表して答えてくれた。コルも何か言いたげだが、まだ声は出せないか。
「お兄ちゃん……」
後ろから、か細い声が聞こえる。俺は振り返り両手を広げた。
「おいで、キュウカ」
「お兄ちゃん!!」
キュウカが俺に抱きついてくる。なんでこんなに懐かしい気持ちになるんだろう。日はそんなに経っていないはずだけどな。
「ルドォォォォ!!」
ハーピもたまらず飛び込んできた。ハーピとは救出前に一回ハグをしたけど、あの時は救出優先で少しだったからな。
俺の胸の中で盛大に泣くキュウカとハーピ。
本当に……苦労と心配をかけてしまった。
お返しに出来ることなんて無さそうだけど、今は精一杯の愛情を込めて頭を撫でてあげよう。
もちろん今は眠っている妹達もだ。みんなが起きたら色々説明しないとな。
なんにせよ、俺はみんなの元に帰ってきた。帰ってこれた。




