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5 雪と猫

 エルフの里に入ってすぐ飛び出たのは、わあっという驚嘆だった。


 直径二十メートルはあろうかという大樹を中心に、大自然と技巧を凝らした石細工の調和が絢爛(けんらん)な光とともに目に強く焼き付く。


 美しい。


 それ以外の言葉を付け足すのは無粋というものだ。


「少しだけ待っていて貰えますか? 母様……長への報告が最優先なんです」


 ペルシャはぺこりと頭を下げると急ぎ足で大樹の中へと入っていった。


「エルフってみんな耳が長いんだな」

「その通りだとも。背丈も大きくスタイルも良い! おまけに魔法を操ると来たら、人間が種族的に勝る部位はひとつもないな」


 フラムはどこか他人事のように人間を自然に貶すと、ああ、そうそう、と思い出したようにつけ加えた。


「あと長寿だ。二百歳くらいまでは生きるらしい」

「……その割にはみんな若く見えるが……?」


 里のエルフは人間でいえば十代から二十代の者が主なように見えた。とても百歳二百歳のエルフがいるとは思えない、若くて活気溢れる部族という印象が強い。


「……加齢のスピードが違うんじゃあないのか?」


 フラムは少し難しい顔をして黙りこくった。


 ――――こいつ、一体何者なんだ?


 神を自称し、『常世(とこよ)送り』の真実を知っていると大見得を切り、その幼い見た目に釣り合わぬ言動を重ね……。


 初めは少女が大人ぶっているだけだと思っていた。俺の名前も、俺が姉さんを探していることも、あの街に住んでいれば耳にしていてもおかしくはない。


 だがこんな小さな少女があんな脅迫じみた取引を持ちかけてくるだろうか?


 それだけではない。この装備だって彼女曰く一級品、ギルドでも子供のお小遣いとしてはやや高額な銀貨三枚を簡単に床に吐き捨てた。


 神を自称するだけあって、とてもただの少女とは思えない。


「お待たせしましたっ! 母様……長がぜひ直接お礼を申し上げたいと」


 大樹の中から戻ってきたペルシャはそう俺たちを呼びつけると、そのまま先陣を切って再び大樹へと入っていった。俺とフラムもその背中を追う。


 大樹の中は幻想的な世界が広がっていた。壁面も床も木ではなく石材が敷き詰められており、ほのかに青白く輝いている。


(かあ)……長、お連れしました」


 ペルシャが深々と頭を下げた先、俺たちよりも数段高い場所に彼女はいた。


 忙しそうに本をめくり、何度も何度も筆をとる。白く美しい長髪に純白の衣装、雪のような女性がこちらに振り返る。


「はじめまして。私は『スノーホワイト』。このエルフの里の族長です。歳は二十六。趣味は読書。毎日この大樹の中にこもって文献を読み漁っています。スリーサイズは上から順に――――」

「母様!」


 スノーホワイトさんがあらあら、と口を抑えた。


 なんとも不思議な人だ。この里のエルフの誰とも似つかない白く美しい髪。少し違うが、フラムの銀髪に少し似て――――。


「……フラム?」


 ふと隣のフラムに目をやると、どことなく肩が震えているような感じがした。目は見開き、表情が引きつっている。


「『禁忌の地』に住まうドラゴンを倒してくださったのですよね。ペルシャを……いえ、この里を救って下さり、本当にありがとうございます」


 スノーホワイトさんは階段を降り、俺たちと同じ段へ立つと、深々と頭を下げた。


 なんだかすごくムズムズする。偉い人に頭を下げられるのは、どうにも落ち着かない。


「いやっ、その……あ、あぁ、そうだ、ペルシャ。君はどうして『禁忌の地』なんかに行ったんだ?」


 気恥ずかしくて、ついつい話題を逸らしてしまった。ペルシャはドキリとした表情を浮かべると、少しどもって、そのまま俯いてしまった。


 しまった。聞いてはいけないことを聞いてしまったか。


「……『常世(とこよ)送り』です」


 ペルシャの代わりにスノーホワイトさんが口を開いた。


「先日、『シャム』という少女が常世送りにあったのです。シャムは――――」

「母様、私が話します」


 ペルシャは顔を上げると、少し複雑な表情を浮かべて口を開いた。


「シャムは……私の大親友でした」

「続きが読みたい」「面白い」


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