4 高い剣なのに!
ドラゴンの大きな爪がペルシャを引き裂こうとした刹那、鉄の切っ先が既のところでそれをはじき飛ばした。
「えっ……?」
ペルシャは驚いたように目を見開く。そうして少し硬直した後、はっとして叫んだ。
「な、なんで戻ってきたんですか!?」
「分かんねーよ!!」
俺は息を切らしながら目一杯喚いた。
「分かんねーけど……!! 嫌なんだよっ!! お前が死ぬのはッ!!」
腰までかかる金髪、緑色の翡翠のような瞳。
姉さんとは似ても似つかないのに、なぜか重なってしまうのだ。
「ガアッ!」
間髪入れずドラゴンはその重量とスピードに任せた致命の一撃を繰り出す。咄嗟に剣を構えてガード姿勢をとったが……一撃が重すぎる!
「うぐっ……!」
体ごと押し流され、踵に大量の土が盛り上がる。剣はミシミシと音を立てているが、まだ壊れる気配はない。装備が一級品だと言うのは本当のようだ。
「おお……止めるか! 全く少年……君はどうなっても勇者だな……!」
フラムの応援が俺に少しの力を分けてくれる。
俺は死にたくない。かと言ってフラムもペルシャも死なせなくない。
なら、勝つしかないだろ。
「うおおおおおお!!」
覚悟を決めろ――――!!
瞬間、再び世界が止まった。光がゆらゆらと煌めき、一本の道を創り出す。
右に大きく踏み込みながら手首を返して体を逸らし、切っ先でドラゴンの爪を持ち上げるように円運動を加えていく。
「ギャオ――――!?」
ドラゴンの体が大きくよろめいた。圧倒的体格差などものともせず、少しずつその巨体が持ち上がっていく。
「すごい……どこにそんな力が!?」
ペルシャが目を丸くする。だが驚いているのはむしろ俺の方だ。
最初にゴブリンと戦った時から、この体がまるで俺のものではないように感じるのだ。どこまでも非力でFランク冒険者な俺に、こんな馬鹿力が出せるはずがない。
どういう訳か、この体がどう動けばいいか知っているのだ。
「うおりゃあああ!!」
ズドンッと大きな音を立て、ドラゴンの体が横転する。俺はわずかに輝く光の道筋に沿ってドラゴンの前足に飛び乗り、再び高く飛んで剣を逆手に持ち直した。
「兜割りだ……!」
フラムが満足そうにニヤリと笑うと、刀身がドラゴンの首に深々と突き刺さり、そのままその命を絶やした。
「これは正しく……獅子奮迅の活躍……ですね」
「うむ、僕の仲間は優秀だろう?」
ペルシャは頬を少し赤らめ、ほんのちょっぴり涙を浮かべていた。
「しかし随分深く刺さったな、抜けないじゃないか。全く初日からダメにしおって。僕の金だぞ」
フラムはふぎぎっと無理やりに剣を引き抜こうとするも、ジンジンと赤くなった自分の手を見て簡単に諦めた。
「フラム……俺……なんで……」
信じられなかった。ドラゴンを倒せるなんて。
それにこの感覚。まるで幾千もの戦いをくぐり抜けてきたかのような身のこなし。
上手く言葉にできないが……何かがおかしい。
忘れているだけで、俺は昔、勇者か何かだったのではないかと錯覚しそうになる。
「さあな。前世が最強の剣豪か何かだったんじゃないか?」
フラムは茶化すようにそう声をかけると、ドラゴンの背中からひょいと飛び降りた。
「頼りにしているよ、少年」
空は夕暮れに染まり、森の中は微妙に薄暗くなっていた。
「あの、良かったら里に泊まっていってください。お礼もしたいので……」
ペルシャはぐいと目元の涙を拭うと、晴れやかな笑顔を浮かべた。
ここから街は遠い。夜になれば魔物も活発になる。ギルドへの報告は明日にして、ペルシャの誘いに乗ってエルフの里へ向かうことにした。
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