表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/32

4 高い剣なのに!

 ドラゴンの大きな爪がペルシャを引き裂こうとした刹那、鉄の切っ先が(すんで)のところでそれをはじき飛ばした。


「えっ……?」


 ペルシャは驚いたように目を見開く。そうして少し硬直した後、はっとして叫んだ。


「な、なんで戻ってきたんですか!?」

「分かんねーよ!!」


 俺は息を切らしながら目一杯喚いた。


「分かんねーけど……!! 嫌なんだよっ!! お前が死ぬのはッ!!」


 腰までかかる金髪、緑色の翡翠のような瞳。


 姉さんとは似ても似つかないのに、なぜか重なってしまうのだ。


「ガアッ!」


 間髪入れずドラゴンはその重量とスピードに任せた致命の一撃を繰り出す。咄嗟に剣を構えてガード姿勢をとったが……一撃が重すぎる!


「うぐっ……!」


 体ごと押し流され、踵に大量の土が盛り上がる。剣はミシミシと音を立てているが、まだ壊れる気配はない。装備が一級品だと言うのは本当のようだ。


「おお……止めるか! 全く少年……君はどうなっても()()だな……!」


 フラムの応援が俺に少しの力を分けてくれる。


 俺は死にたくない。かと言ってフラムもペルシャも死なせなくない。


 なら、勝つしかないだろ。


「うおおおおおお!!」


 覚悟を決めろ――――!!


 瞬間、再び世界が止まった。光がゆらゆらと煌めき、一本の道を創り出す。


 右に大きく踏み込みながら手首を返して体を逸らし、切っ先でドラゴンの爪を持ち上げるように円運動を加えていく。


「ギャオ――――!?」


 ドラゴンの体が大きくよろめいた。圧倒的体格差などものともせず、少しずつその巨体が持ち上がっていく。


「すごい……どこにそんな力が!?」


 ペルシャが目を丸くする。だが驚いているのはむしろ俺の方だ。


 最初にゴブリンと戦った時から、この体がまるで()()()()()()()()ように感じるのだ。どこまでも非力でFランク冒険者な俺に、こんな馬鹿力が出せるはずがない。


 どういう訳か、この体がどう動けばいいか知っているのだ。


「うおりゃあああ!!」


 ズドンッと大きな音を立て、ドラゴンの体が横転する。俺はわずかに輝く光の道筋に沿ってドラゴンの前足に飛び乗り、再び高く飛んで剣を逆手に持ち直した。


(かぶと)割りだ……!」


 フラムが満足そうにニヤリと笑うと、刀身がドラゴンの首に深々と突き刺さり、そのままその命を絶やした。


「これは正しく……獅子奮迅(ししふんじん)の活躍……ですね」

「うむ、僕の仲間は優秀だろう?」


 ペルシャは頬を少し赤らめ、ほんのちょっぴり涙を浮かべていた。


「しかし随分深く刺さったな、抜けないじゃないか。全く初日からダメにしおって。僕の金だぞ」


 フラムはふぎぎっと無理やりに剣を引き抜こうとするも、ジンジンと赤くなった自分の手を見て簡単に諦めた。


「フラム……俺……なんで……」


 信じられなかった。ドラゴンを倒せるなんて。


 それにこの感覚。まるで幾千もの戦いをくぐり抜けてきたかのような身のこなし。


 上手く言葉にできないが……何かがおかしい。


 忘れているだけで、俺は昔、勇者(ゆうしゃ)か何かだったのではないかと錯覚しそうになる。


「さあな。前世が最強の剣豪か何かだったんじゃないか?」


 フラムは茶化すようにそう声をかけると、ドラゴンの背中からひょいと飛び降りた。


「頼りにしているよ、少年」


 空は夕暮れに染まり、森の中は微妙に薄暗くなっていた。


「あの、良かったら里に泊まっていってください。お礼もしたいので……」


 ペルシャはぐいと目元の涙を拭うと、晴れやかな笑顔を浮かべた。


 ここから街は遠い。夜になれば魔物も活発になる。ギルドへの報告は明日にして、ペルシャの誘いに乗ってエルフの里へ向かうことにした。

「面白い」「続きが読みたい」


と思った方は


ブックマーク


★★★★★


をお願いします!励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ