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27 守るため

 雷撃が瞬きするよりも速く射出された。人間の反応速度からはおよそ回避しようのない攻撃。


 俺はほとんど勘で身を逸らし、ファンネルのうち一つを受け流した。


「――――!?」


 雷撃が背中を直撃した。全身を電流が駆け巡り、膝から崩れ落ちる。


 受け流したはずのファンネルが異常な軌道を描いて俺の元へ帰ってきたのだ。


 だとしてもここで諦める訳にはいかない。歯を食いしばり、膝を持ち上げ、地を蹴ってフラムとの距離を詰める。


「無駄さ」


 ぐにゃっと空間が歪んだ。どれだけ走っても、フラムとの距離が一向に縮まらない。それどころか徐々に遠ざかっている。


 再びファンネルが発射された。今度は避ける暇もなく正面から直撃する。


「修復の過程で機能をパワーアップさせておいて良かったよ。こんなことも出来るぞ」


 フラムが指をくるっと回すと、視界が百八十度回転した。地上が天井になり、俺の体が大空へと落ちていく。


 フラムが指を鳴らす。たちまち世界が暗転し、水没し、砂漠化し、そして宇宙へと飛び出した。


「力というものは素晴らしいな少年。今の僕にはなんだってできる……『願いの結晶』だろうと、今の僕なら扱えるぞ!」


 フラムの体に0と1のノイズが走ると、それは彼女の手元に集中し、禍々しいレイピアを作り出した。


 一瞬ささやかな風を感じた。視覚が機能するよりも早く俺の体は動いていた。


「うっ……!?」


 刀身に強い衝撃が走る。フラムのレイピアが俺の剣に打ち付けられたのだ。


 自らの剣の刃が俺の肩に食い込む。グリグリと刀身を押し込む強靭さと破壊力はもはやレイピアのそれではなかった。


「これが最強の武器の力さ! このままだと君の体は真っ二つだぞ!」


 じわりと血が滲み出す。刃はどんどんと食い込み、ついには刀身の半分が体にめり込んだ。


 膝から崩れ落ちる。柄を握り締め全力をかけて押し返すが、刃はビクともしない。


 激痛が走る。もはや全身は動かなくなっていた。


「……君はそんなものじゃないだろう!? 立ち上がるんだ!! 立て!!」


 フラムはキリキリとレイピアを押し込みながらヒステリックに叫んだ。刃は止まることなく沈み込み、とうとう刀身のほぼ全てが肉を切り裂いた。


 ダメだ。押し返せない。


 全身が力に硬直する。一瞬でも緩めれば瞬く間に右半身と左半身が別れるであろう。


 俺はフラムをじっと見つめた。宝石のような真っ赤な瞳しっかりと目の芯に捉える。彼女は少し顔色を悪くし、奥歯を噛み締めた。


「――――!?」


 その直後、フラムの足元に魔法陣が出現した。彼女がとっさに飛び退くと、そこにも新たに魔法陣が出現する。


 巨大な爆発がフラムを包み込む。爆炎から飛び出したフラムに飛び込んだのはスノーホワイトさんだった。


 スノーホワイトさんは短剣をフラムの左腕に突き刺していた。そしてそのまま掻き切るように振りほどき、今度は切っ先が喉元を掠めた。


 その間にめり込んだ剣を引き抜く。刺すような痛みが精神のダムから溢れ、意識が飛びそうになる。数秒間悶絶し、それでも気を持ち直して立ち上がったその時、恐ろしい光景が目に飛び込んできた。


「あ……」


 フラムのレイピアがスノーホワイトさんの腹部を大きく貫通していた。


「スノーホワイトさん!?」


 思わず叫んでいた。


 スノーホワイトさんは口から血を流し、そして(ひざまず)いてフラムをぎゅっと抱きしめた。


 フラムは目を見開いていた。そして無抵抗のままスノーホワイトさんの腕に抱かれ、ただ呆然と立ち尽くしていた。


「アル、あとは……頼みます」


 スノーホワイトさんはそう弱々しく呟くと、彼女の目の輝きが消えた。何かが蒸発するように白い煙と01が彼女の身を包んでいた。


「違う……君たちが僕を邪魔するからだ……」


 フラムは独り言のようにポツポツと呟いた。目を見開いたままたじたじと後退し、スノーホワイトさんの遺体から離れていく。


「フラム……お前……!!」

「何が悪いっていうんだ!? ここが……ここが僕の『現実』なんだ!! 君たちが現実を守るために戦うように……僕も戦って何が悪い!?」


 フラムは怒鳴り散らすように叫んだ。気が動転した様子で、フラムは怯えていた。

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