26 君のこと
魔法陣がフラムの足元に出現する。フラムはとっさに姿を01に変え、無へと消えていった。
次の瞬間には魔法陣を起点として大爆発が起こり、地面を砕いた先でさらにもう一度爆発した。
人が次々と吹き飛んでいく。圧倒的な範囲火力が数を圧倒していた。
「さすがに見ていられませんでしたよ。以前のあなたなら簡単に蹴散らしていたはずです」
「……二年のブランクがある人間にそんなこと言わないでください」
スノーホワイトさんが手で印を結ぶと、またもや各所で魔法陣が現れた。
「私が片付けます。あなたはフラムを」
彼女の言葉は恐ろしく頼もしかった。さすが開発者の一人、化け物のような強さを併せ持っている。彼女はさらに大爆発を起こすと、しっかりと前を見据えながら俺に警告した。
「今のフラムはただの『AI』ではありません。人の皮を被った『神』のようなものです。彼女は既にプログラミングに干渉する力を得ています。ですので……どうかお気をつけて」
その言葉と同時に、俺は地面を蹴って駆け出した。剣を抜き、まばらになった人間を斬り捨てる。
また爆発が起こり何十人もの人間が宙を飛んだ。
あれだけいた敵は、既に半数以上が死んでいた。
――――出てこいフラム。
この世界に残る人間を全て殺せばその瞬間に俺たちの勝ちだ。このままログアウトしてこの世界から去れば、全ての人間を救出したことになる。
フラムはそれを絶対に阻止しようとしてくるはずだ。
あいつが出てくるまで、俺は何度でも斬った。
斬って、斬って、斬り殺して、そうして自分の腕の感覚も無くなってきた時、0と1が現れた。
「……人間じゃないな、君たちは」
呟くような声が聞こえた。俺は剣を下ろして振り返る。その先には悲しそうな表情を浮かべたフラムがいた。
「こんなにたくさんの人間を殺して……心が痛まないのか?」
「逆に聞くよ、自分勝手な都合で五万人のプレイヤーを二年間も閉じ込めて、心が痛まないのか?」
フラムは視線を落として黙った。そして強く拳を握りしめ、小さく、やるせなさを吐き出すように叫んだ。
「……痛まないわけないだろ……!? 僕は君たちと同じ存在になりたかった……ただそれだけだったのに……こんなことになるなんて思ってなかった!!」
俺は少したじろいだ。フラムはポロポロと涙を流していた。
「『願いの結晶』も『アクセスキー』も僕が創ったのに……僕には使えなかった。だからステラに頼み込んで僕の願いを叶えてもらった……。なのに……なのに!! この世界は僕を拒絶した……!! 体はバラバラに砕け散って、意識も感情も、記憶すらも全部吹き飛んだ! 僕が……僕が創ったのに……!」
フラムの言葉に嘘偽りはないように聞こえた。彼女の心からの叫びが俺の心を動揺させた。
僕の願いを叶えてもらった。こいつは確かにそう言った。
同時に風鳥さんの言葉も蘇る。
『こんな幸せが、永遠に続けばいい』。
この世界に人々を閉じ込めた願い事はこれだったはずだ。
でもフラムの言っている内容とこれではあまりにも乖離がありすぎる。
『願いの結晶』を使ったのが姉さんなら……これは姉さんの願いだったんじゃないのか?
「……救われないな。全員が自分勝手な行動をして、誰も幸せにならなかった」
フラムは自分で創造したアイテムのせいで、『幸せな世界』から排除された。
姉さんは『幸せな世界』を望んだせいでみんなが閉じ込められたことを知り、自殺した。
「二年も修復を繰り返して、やっと元に戻ることができた……。やっと君たちと同じになれたと思った……! なのに……待っていたのはこんなにも歪な世界だった。加えて僕は大量の人間を監禁した極悪人、もう僕にできることはひとつしかない……」
フラムはすーっと息を吸って大きく吐いた。そして覚悟の火の灯った瞳で俺を貫いた。
「もう一度作り直すことだ。今度は完璧に……。だから少年、『願いの結晶』は僕が貰うよ」
彼女の周囲に稲光のファンネルが飛び回る。0と1の嵐が場を荒らした。
彼女に応えるように、俺は剣を構えた。
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