2 ドキドキワクワク!ゴブリン退治
「ゴッブリン、ゴッブリン、ゴブリン退治〜♪」
意気揚々と歩くフラムを横目に、俺は初めて身につけた剣と防具の動きにくさに格闘していた。
「なぁ……俺ほんとに一度も魔物退治なんてしたことないんだって」
「相手はゴブリンだぞ? スライムについで弱い魔物だぞ?」
「じゃあスライム退治でよかったじゃねえか」
冒険者ギルドからゴブリン退治を受注した俺とフラムは、森の奥深くまで長い道のりを進んでいた。
なんでもこの先にあるエルフの里にしょっちゅうゴブリンが侵入するらしい。恐らく根城がこの深い森の中にあるのだろう。
「君には強くなってもらわないと困るのだ。その装備だって一級品だぞ?」
「俺には身に余るよ」
「君はゴタゴタとうるさいなぁ」
どんな一級品だろうと使い方を誤ればガラクタと変わらないものだ。俺の場合は使い方を知らない、という方が適切だろうか。
「おっいたぞ。洞窟の前に一匹……門番ゴブリンと言ったところか」
「勝手に変な名前つけるな」
フラムが指さした先には確かにゴブリンが一匹、洞窟の前をフラフラと歩いていた。
おそらくあの洞窟の奥がゴブリンたちの巣穴なのだろう。つまりあの門番に気づかれると、他のゴブリンが奥からぞろぞろ出てきてしまうかもしれない。
「何してるんださっさと行け少年」
「おわっ!」
フラムが俺の背中を蹴り飛ばし、茂みから体が転がり出た。門番ゴブリンは俺に気づくとたちまち奇声を上げ、手に小さなナイフを持って襲いかかってくる。
「構えろ少年! あとはフィーリングだ!」
「は、はぁ!?」
言われた通り片手剣を腰から抜き取って構える。ゴブリンは小さいながらも凶暴な顔面で迫り、飛びかかってナイフを突き立てようとしてくる。
混乱で頭が掻き乱される中、突然世界がスローモーションになったような気がした。
意識が集中していく。俺とゴブリンの間にうねうねした光の道筋が見えてくる。
何故だろう。どう体を動かせばいいのか、まるで体が覚えているようだった。
右足を一歩前へ、そして体を半身に逸らしながら腕を振り上げる。
ゴブリンのナイフが俺の胸の前を通り過ぎて行く。
そして振り下ろす。
「ギャアアアアア!?」
強烈な一撃が後頭部に直撃し、ボールを叩き落としたようにゴブリンの体が地面に激突した。じんわりと大地に血が広がり、ゴブリンは絶命した。
「お、おおお! すごいぞ! まるで本物の剣士のようじゃあないか!」
フラムは見た目相応の可愛らしい声を出すと目をキラキラと輝かせてはしゃいだ。
ずっとこうなら女の子らしくて可愛いのにな。
「僕の目に狂いはなかった! さあこの調子で――――」
「ちょっとどいてくださぁーーーい!!!」
「ふべっ」
突如大声と共に頭上から何者かが落ちてきた。それはフラムに直撃すると、彼女を押し潰して地面に突っ伏した。
「いったた……人……? こういう時は自己紹介……私『ペルシャ』って言います。見ての通りエルフで……ってそうじゃない! 早く逃げてくださいっ!」
空から現れた耳の長い少女は、たちまち血相を変えて叫んだ。
「ドラゴンが来ますっ!」
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