14 1となれ
「……俺には、何が起きているのかさっぱりです。フラムは……『願いの結晶』と『アクセスキー』を探す先で姉さんが見つかると言っていました。でも……姉さんはいま……ここに……」
脳みそが焼けるような感覚がした。自分の世界を超越している。にも関わらず、どうしてか腑に落ちてしまう。
俺たちは本当に……元はこちらの世界の住民だったのではないだろうか。
彼女の説明を、自然と受け入れてしまっている自分がいた。
「……フラムは完全なる世界の再構築を狙っています。そうなれば閉じ込められた人達を救う手段はありません」
風鳥さんは今度は俺の手を取ると、両手で包み込んで目をつぶった。
「私は『アクセスキー』を持っています。アークエデンの世界に戻り次第、あなたにお渡しします。この期を逃せば、フラムは『神の力』を手に入れるでしょう。そうなれば、私たちに勝ち目はありません」
彼女はそのまま立ち上がると、俺の手を引いてまた別の部屋へと移動した。
そこは俺やペルシャが居た空間とは異なり、仰々しい装置とたった数台のベッドが配置されているだけであった。風鳥さんと同じ白衣を着た職員達は俺を見ると軽くお辞儀をし、そのまま風鳥さんと何か話していた。
「これからアークエデンにログインします。ただし注意してください。自発的にログアウトすることはできません。もう一度現実に戻るためには、誰かの常世送りに同伴するしかありません」
目の前の巨大な機械には先ほど俺がかぶっていたヘッドギアが装着されていた。この謎の装置が大勢の人々を作り物の世界に縛り付けているのだ。
風鳥さんは再び俺の方に向き直ると、今度は優しく問いかけた。
「ここまで突拍子のない話に付き合ってくださってありがとうございます。あなたには……私の頼みを断る権利があります。その選択を私は咎めません」
彼女の瞳の中は慈愛で充満していた。俺はそれを鼻で笑うと、ほんの少し懐かしく思った。
「無理な頼みには慣れてます。たったそれだけで多くの人が助かるのなら……俺はそうします。それに……根拠は無いですけど、俺もこちらの世界の住人だったんだって、今は少し思うんです」
「……そうですか」
彼女は柔らかく微笑むと、職員たちに指示を飛ばした。俺と彼女はベッドに仰向けになり、ヘッドギアを装着した。
目の前が真っ暗になる。けたたましい稼働音がゴウンゴウンと鳴り響くと、俺の体は飛んだ。
真っ暗な場所から、真っ白な空間へ一気に上昇していく。宙に浮くような感覚なのに体のコントロールは容易に効く。
「これから起こることはほんの一瞬のことです。私の指示通りに動けば一分もしないうちに目標を達成することができるでしょう。さあ、もうじきに――――」
0……1……
10……110………010………
「何をしているのかな。少年」
真っ白な空間の彼方から、それは現れた。
「――――!? アル、こっちへっ!」
風鳥さんが咄嗟に手を伸ばした。
次の瞬間、その腕は01の粒子となって消し飛んだ。
「うぐっ……そんな……遅すぎたの……!?」
瞬きをすると、フラムは目の前にいた。
どこまでも透明な銀色の髪。よく見ればそれは0と1で構成されていた。
「少年、僕はWIN-WINが好きだ。だけど君の方は……そうじゃなかったみたいだ」
ルビーのような瞳が真っ直ぐに俺を突き刺し、フラムの腕が俺の胸を貫通した。
「少年、また元の暮らしに戻ろう。そして機が熟したら……この世界を本物にしよう」
フラムの腕を中心にして01の粒子が俺の全身を置換していく。声を出すこともままならぬまま、俺の意識はどんどん深みに落ちていく。
BOOM!!
突然フラムの頭が爆発した。フラムは少し煩わしそうな表情を浮かべると、振り返って風鳥さんの方を見た。
「何を吹き込んだのか知らないが……まあいいさ。今度こそ僕の勝ちだ」
「……青は藍より出でて藍より青し、とはこのことですね。あぁ、私の可愛いフラム」
フラムが小さくニコリと笑うと、風鳥さんの体は全て01となって消えた。
そしてそのすぐ後、俺の体も01となった。
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