「待て」と言ったら永遠に待ってしまいそうな妻に今日も癒される
ヒーローがひたすら惚気けてるだけです。本当にすみません。妻にデレデレするだらしないヒーローの絵面がキツイ方はゴールデンレトリバーの画像を検索してからお読みください。
結婚して1年。
可愛い妻がいる。
妻のマリーの前世は犬なんじゃないかと思う時がある。
公の場では、王太子妃として、よくやっていると思う。
夜会やお茶会、他国との外交など、微笑んではいるが、常に緊張感を漂わせ、周囲を冷静に観察している。
トラブルが起こる前にすぐに報告。
たとえトラブルが起きたとしても、事を荒立てないように機転をきかせて行動してくれる。
有能すぎる妻がこわい。
ただ俺に関することは冷静でいられないらしい。
以前、恐らくロベルト派だったであろう貴族に嫌味を言われた。
俺としては、まあそんなことしかできない小物だなと思ったくらいだが、怒り狂ったマリーはその貴族の右尻に愛用している武器、オオカミなんとかをいつの間にか喰らわせていた。
その時、牙に痒くなる毒を仕込んでいて、噛まれた部位を掻きすぎたその貴族の右尻は、左尻の3倍ほど腫れてしまったらしく、しばらく履けるものがなかったそうだ。(どうやって過ごしていたかは知らん。)
妻を怒らせてはいけない。
そんなマリーだが、自分が1度信用した相手にはとことん素直で無防備だ。
一生懸命なのにどこかズレている時がある。
公の場ではなんとかやり過ごせているのが不思議なくらいだ。
弟のロベルトの一件以来、何となく気まずくなっていた両親も、結婚後、健気なマリーにいつの間にか絆されてしまった。
これまで家族の仲は決して良くはなかったはずなのに、気付けば両親と過ごす時間も増えていた。
喋り出すと止まらないくせに相手の心の変化に敏感で。
相手に気を遣わせずにただ側にいるのが上手い。
護衛や侍女からも慕われている。
ただ座っている時は澄ましているのに、信用している相手が声を掛けると、明らかによそ行きではない笑顔を振りまくからだ。
そんなものを食らったら誰だって心開きたくなる。
見た目も犬に似ていると思う。
蜂蜜のような艶のあるゴールドの髪。
艶々なのに柔らかくて
ついつい撫でて乱してしまう。
アーモンド型の黒目がちな丸い目も
いつもは強い意志を宿しているのに
撫でると気持ちよさそうに細める。
あとはキスも好きだ。
口同士のキスを覚えてからと言うもの、とにかくキスされる。
ただ…それは色っぽい雰囲気というよりも、食べられている感覚の方が近いが…。
激しすぎて押し倒されていることもよくある。
主寝室のドアノブに手をかける。
結婚後はお互い役割も増えたため、婚約していた頃のように四六時中一緒にいることはなくなったが相変わらずマリーの俺を守る姿勢は変わらない。
多分このドアの前で待っているだろう。
前世は本当に犬かもしれない。
だとしたら
きっとたくさん愛された幸せな犬だろう。
遅くなる時もあるから、ベッドで待っていいと何度言っても
「でもレオ様はわたくしがここで待っているかもしれないと思ってドアを開けますよね。わたくし、そのドアを開けた瞬間のレオ様のお顔を見るのが本当に幸せなんです。」
そう言って嬉しそうに笑うから。
今日も期待してドアを開けた。