4.二人きりの作り方・いち
ちょっとだけ続き物です。多視点です。
「僕、明日からしばらくここ来ませんから」
「……えぇえー?」
きいてないよそんなの。
はい、言ってませんから。
まぁ、もとはといえば私が理由なのだけど。
一つ年下の彼氏は、いつも私にご飯を作ってくれる。そして、しばらく一緒にいてくれる。
ついつい甘えたくなるのは、彼の人柄の所為だと思いたい。だってあきちゃんはいつだってやさしい。
一人で本が読みたいときは、そっとしてくれる。ぺたっとしたいときは背中を貸してくれる。
あきちゃんがなでてくれた頭はいつまでもほかほかしてる。
魔法の手なんだ、きっと。あきちゃんの手は。
もう私はあきちゃんのご飯より美味しいものも、あきちゃんの手より優しい手も見つけられないだろう。
あきちゃんのせいだ。
一人じゃいられなくなったのは。
そんなだから、私はテスト一週間前だけどあきちゃんの作ったクッキーを食べながら一緒にテレビを観てた。勉強よりあきちゃんとこうしていたかった。
なのに
「なのに、なんで?」
「僕がいると、ちえこさん勉強しないじゃないですか。テスト、もうすぐなんでしょう」
「…………なぜそれを」
「真栄田が教えてくれました」
…なるほど。
真栄田君はあきちゃんの友達だ。そして真栄田君の姉のゆきちゃんは私の友達だ。
ゆきちゃん→真栄田君→あきちゃんの順で伝わったのね。なるほど。
「…ご飯はー?」
「カレー作りました。3日後にまたきます」
「私3日間カレーオンリー!?」
いや、うん、カレー好きだけどさ。
「差し入れ持ってきますから」
「…はい」
余談。真栄田君はわたしのライバルである。
…恋の。
負けないわよ真栄田君。あきちゃんに何言ったかなんてわかんないけど、何日か会えないくらいで私がめげるとでも!?
…うそです。さみしいです。
そんなわけで、私は明日からカレー三昧になるらしい。
…ええい。
どうしてくれよう真栄田君。