81.水は踊り、草葉が舞う
〈円天世界ニルヴァーナ〉から隔絶された世界【天外領域】。発動した瞬間に発動者と発動者が選択した存在をこの領域内へ転送する。
この領域を構築するには『ある存在の力』と生まれる時に授けられた『土台』が必要になる。この世界において【天外領域】を使用できる者は10も存在しない。
【天外領域】は発動した者の影響を受けて変質する。その変質した領域は発動者にとって最大限力を振るえる空間となる。
火の力を持つ者なら炎に包まれた領域。水の力を持つ者なら水。土なら土。という具合に。
これを戦闘で使えば【天外領域】内において発動者は絶対的な立場となる。
彼らはこの【天外領域】内部では『神』に等しい存在と成る。
◆◆◆
水面を高速で駆ける。蹴り出された水は後方へ激しく吹き飛ぶ。
水を斬り裂きながら進むのは聖剣を構えたシータ。彼女は足が水に沈むより速く走ることによって水上を疾走する。
黒い髪と紺碧の瞳の残光が尾を引きながら相対する青髪の女へ迫る。
「シッ!!」
「あら」
『閃撃・烈日』 聖剣による強烈な突き技。それは名無しの女の胸を貫く軌跡を描く。
ジェーンドゥは右手から膨大な水を出現させるとそれをシータに叩き付ける。聖剣の剣先と水の壁が衝突。シータが繰り出した突きの威力に出現させた水が一瞬で弾け飛んだ。
水を貫いた剣先がジェーンドゥに迫る。
水との衝突で軌道がずれた剣先をジェーンドゥは半身になって躱す。
シータはその勢いのまま走り抜けると“光華の泡沫”を発動させる。彼女の足に光の泡が集まっていく。
「危ないわ。こんなの当たったら痛いじゃない。酷いわ」
「……これは防ぐんだ」
そしてシータはジェーンドゥから十数m離れた位置で『止まる』。彼女はルミーの結界を借りず自力で水面に立った。それを成すのはシータの足下に集まった光の泡の力である。この泡が水を弾きシータの体が水に沈むのを防いでいる。その光の泡沫は聖剣にも込められていた。
シータの眼光が鋭さを増し、そこに込められた威圧が水面を波打たせる。
「ジェーンドゥ、だっけ? 都市が滅ぶまで私達を足止めする。……確かそう言ったわね」
ジェーンドゥは笑みを浮かべる。その笑みは耳まで裂けるような凄絶な笑みだった。
「ええ言ったわ。私様達は確かにそう言ったわ」
「……そう。わかった―――」
シータが消える。
そこには大きな波紋が一つ起きただけ。
ジェーンドゥの視界からシータの姿が完全に消え去った。
「これは予想外」
こうも完全に自身の視覚を振り切られるとは考えもしていなかったジェーンドゥは驚きの声を上げる。……しかし焦っている様子は無く、むしろその声には称賛の色さえ含まれている。
ジェーンドゥ。彼女の背後には既に聖剣を構えたシータが立っている。その目の光。それはもう悪魔と相対する時の色に染まっていた。
閃光の雨がジェーンドゥに降り注ぐ。
一瞬と呼べる時間の狭間で放たれた刺突は36発。
「―――ジェーンドゥ……貴女はここで仕留めます。都市に住む全ての人々の為に」
『閃撃・爛然天光』。シータが放つ刺突連撃最速の技。これをまともに受けて原形を残す存在は数少ない。浄化の光が込められた閃光は悪しき敵を滅殺する。
『閃撃』はシータが数多の流派を取り込み昇華した剣術である。誰よりも、速く、重く、鋭く、巧みに。そうして生まれたのがこのシータだけが使える世界最強の剣術である。
「痛ーい……。本当に酷いことをするわね」
「…………」
―――そしてジェーンドゥは数少ない存在の1人であった。
穴だらけ。手脚は千切れかけ、胴体には向こう側が見える穴が空き、頭は上半分が吹き飛んでいる。それでもジェーンドゥは生きている。笑う。口の周辺しか頭部が残っていないジェーンドゥはそれでも笑う。彼女の肉体は半壊……それよりも酷い状態になっている。しかしそこには『在るべき物』が存在しなかった。
赤色が無かった。警戒したシータは後ろへ下がり距離を取る。
「……その身体……『水』?」
「その通り」
ジェーンドゥの傷口。そこには在るべき血も肉も骨も存在しなかった。
そこに見えるのは水であった。ジェーンドゥの体表の直ぐ下、そこにはこの領域を埋め尽くす大量の物と同じ『水』で構成されていた。
「美しい私様達の体はこの美しい水で出来ているのよ」
足下の水面からまるで蛇のように水が噴き上がるとボロボロのジェーンドゥの肉体に殺到する。その水は欠けた肉体を埋めるように固定されていく。
「私様達は『満たす者』」
そして噴き上がった水が戻るとそこには傷など最初から無かったように完全復活したジェーンドゥの姿があった。彼女は黒と赤の右目で剣聖を見詰める。
「さあこの領域を満たしましょう、私様達の美しさで。そして貴女達は溺れ溶けて消えるのよ、私様達の美しさに」
ジェーンドゥの足下の水が高く高く盛り上がる。人間10人を縦に並べたよりも高いそれはまるで水で作られた独り舞台のような形に形成される。その高みからジェーンドゥは全てを見下ろす。
あれだけの損傷を意に介さない不死身の肉体。そして水を操るという能力に加えてこの領域は水で満ちている。圧倒的にジェーンドゥに有利な状況。それを自覚している彼女は余裕綽々といった表情を浮かべて相手の負けを宣告して―――
「断る」「それは拒否します」
「……あら?」
ジェーンドゥの独り舞台。
何時の間にか、そこには先程のように視界に捉えきれない速度で移動していたシータがジェーンドゥの正面に立ち、向かい合う。
そしてシータとジェーンドゥを中心にして球体状に展開された『結界』が張られていた。2人は水舞台の一部と共に結界内に閉じ込められた形になる。
結界の外にあった水舞台はジェーンドゥから切り離された影響か、その高く伸びていた水が一気に重力に引かれて落ちていく。
落ちた水は周囲に大きな波を発生させる。
その波が走っていく先には杖を構えたルミーが居た。彼女は水面の上に作り出した結界の足場に立ちながら迫り来る波に向けて杖を輝かせる。そうするとルミーの正面に結界が盾のように出現して迫る波を周囲に受け流した。
「ジェーンドゥ。絡繰りは不明だけど貴女、不死に近いみたいね」
「……不死に近いのでは無く、私様達は『不死』そのものよ」
球状結界の中という限定された空間で両者は向かい合う。
「不死そのもの、ね。……なら―――」
シータが静かに言葉を放つ。そうした彼女の聖剣を持つ手が僅かにぶれる。
ジェーンドゥの首が跳ね飛んだ。
聖剣の一振りによって首を断ち斬られたのだ。
「―――その不死が尽きるまで、死に続けるがいい。名無しの女」
「……あはっ……」
舞う首。その状態でジェーンドゥは笑う。
―― 白 ――
結界内が白光で満たされる。
それはシータが目にも留まらぬ高速で繰り出した剣閃、その息を吐かせる間も与えぬ連撃によって発生した太陽の如き白光である。36の2倍の斬撃、『閃撃・炯然光波』が敵の肉体を微塵に斬り裂き続ける。
剣撃の威力の凄まじさを物語るように結界は白く輝きながら激しく震える。
ルミーはその光景を一瞥すると視線を外す。
「あれで決着……とはいかないようですね」
ルミーの視界にあるのは波が引いた水面。そこは戦いの余波で飛沫が上がるような波紋が立っている。―――しかしその場に更なる変化が発生する。
「水で作った分身、ですか」
ルミーを取り囲むように発生したのは水で作られた人形。その姿はジェーンドゥによく似ている。それが百ではきかない数が現れる。
そしてルミーの正面に立つ個体が口を開く。
『そうよ。水を自由自在に操れる私様達はこんなことも出来るのよ。……ああ、でもこんな水人形じゃあ私様達の美しさの千分の1も表現出来ないわあ。やっぱり私様達が一番ね』
魔力に高まりによってルミーの修道服がはためき髪が揺れる。
「シータちゃんと相手をしながらここまでのことを出来るのは素直に感心します」
『美しい私様達なら出来て当然のことよ。……でも―――』
水人形。その全ての腕が変化する。それは竜の腕のように太く、鱗に覆われ、大きな指の先は巨大な爪になる。その腕1本で人間1人分はありそうなサイズである。
水人形の目が赤く輝く。
『―――流石にあのまま閉じ込められて『光の聖女』に斬られ続けるのは疲れるの。だから貴女、『地の聖女』にはあの結界を解いてもらうわ』
水人形が水面を滑るように移動しながら爪を構えルミーに襲い掛かる。
「それはつまり、貴女が力尽きるまで閉じ込め続ければ決着が付くということですか」
激突音が鳴り響く。
「―――では我慢比べといきましょうか。名無しの女さん」
爪がルミーの届くことはなかった。その全てが彼女を包むように張られた結界で防がれていた。ルミーは結界の中から爪を突き込もうとしてくる水人形に向けて杖を突き付ける。その杖が眩い黄色に染まる。
「『聖杖デメテル』を持つ私の守りを破ろうとするのは……不毛であると伝えておきましょう」
邪竜との戦いの折には手放していた聖杖。大地の力を宿し絶対なる守護をもたらすその杖を用いて発動された結界はあらゆる物を撥ね除ける絶対障壁となる。
どれだけ力を込めようと爪が結界を砕くことは出来ない。その事実に水人形は―――
「……素晴らしいわ」
―――首を斬られた時と同じ笑みを浮かべた。
◆◆◆
「―――私様達は貴女達を少々侮っていたようね」
緑髪の女は目の前に立つ2人を『見上げる』。
木々と緑が埋め尽くす【天外領域】。それが無残な姿を晒している。
足場となっていた木と緑の草葉は『毒』により黒く枯果て、まるで叩いた炭のように崩れ落ちていく。そんな黒い大地が彼女達を中心に広がり続ける。その勢いは樹木で出来た地平の彼方まで届くのではないかと言わんばかりの早さ。
天を覆っていた木と緑の草葉は『劫火』によって炎上している。こちらは文字通り炭と化し、火を纏ったそれがまるで雨のように降り注いでいる。その炎もこの樹木が果てしなく広がる空を全て燃やさんと言わんばかりに焼却していく。
そんな毒と炎に挟まれた世界で、それを成した2人は並んで名無しの女を見下ろす。仰向けに倒れたジェーンドゥの体はこの世界と同じく無残な状態だ。
手脚の一部は欠損しており残った部分も炎によって炭化し崩壊している。残った胴体と頭部も毒に冒され黒ずんだ赤紫の発疹が皮膚を覆い尽くしている。常人なら既に何度死んでいるかわからない損傷である。
「……で、あんたは私達に何の用だったの? いい加減吐きなさいよ」
炎のドレスと羽衣に身を包んだディアンサスは脚を組んで座るような体勢で宙に浮かんでいる。熱気によって彼女周辺の空気が揺らぎ、それと威圧が合わさり相手を苛む。
「後はこの空間から出して欲しいわね。セーギさんの晴れ舞台が見られないじゃない」
手脚の防具から毒を滴らせたロベリアは左手に握ったジェーンドゥの右脚を見せ付けるように振りながら尋ねる。口の端からは赤紫の蒸気が漏れている。
絶体絶命と呼ぶべき状況で、それでもジェーンドゥは笑う。
「私様達をこんなに痛め付けるなんて、やはり流れの聖女は野蛮ですわ」
「言うわねこいつ」
「まあ野蛮なのは否定しないわ。だって私なんて暴力団の頭なんだし」
ディアンサスは眉を顰め、ロベリアは微笑みながら手に持ち掴んでいる脚を握り潰す。脚は乾いた音を立てて砕ける。そしてロベリアは紫煙を吐き出しながらジェーンドゥへ話し掛ける。
「それより、ジェーンドゥ。何時まで寝てるのかしら? 大して効いていないのでしょう?」
握り締めた拳を開く。そこからこぼれ落ちるのは肉片や骨ではなく『木屑』。
粉砕機に掛けられた木材の如く粉々になった木屑がロベリアの足下に落ちる。
ロベリアの言葉を裏付けるようにジェーンドゥはその顔に浮かべた笑いをより深める。
「いえいえ、そんなことは無いわ。……見て、この【天外領域】の中を。こんな風に何もかも破壊されれば相応に私様達も『消耗』するわ」
そう言った途端、世界が変わる。
毒が広がり続けて黒く染まっていく地面がその時を境に止まる。空に燃え広がる炎も消え去り延焼が止まる。
ロベリアとディアンサスが力の行使を止めたわけではない。毒は無害化され、炎は樹木に込められた樹液で消火されたのだ。
次に起きた変化はジェーンドゥの肉体だった。
ジェーンドゥの胸、その中央から芽が出る。それは小さな緑の芽だった。それが瞬く間に蔦と葉を伸ばしてジェーンドゥの無残な状態にされていた肉体を包み込む。
その芽が出たのはジェーンドゥの体だけではない。それは毒や炎に冒され憐れに朽ちた天地にも生えてくる。その速度たるや布に染み込む水のような早さで広がっていく。
「凄いわね」
ロベリアはそう言いながら脚を持ち上げる。その足裏が草に包まれたジェーンドゥへ向けられる。そして振り上げられた足が彼女の強靱な力によって大砲のように撃ち出される。
踏み付けが直撃する。その破壊の衝撃は草に包まれたジェーンドゥをバラバラに吹き飛ばし地面を強く踏み抜く。爆弾を炸裂させたような轟音を立ててロベリアが踏み付けた場所を中心に巨大なクレーターが刻まれる。
「あれだけ暴れたのにもう修復するなんて」
「本当に何なのかしらこの空間」
衝撃が収まり切らない内からロベリアとディアンサスは周囲に気を払っている。2人は背を合わせるように位置取りすると疲れたような溜息を吐いてこの世界へ目を向ける。
あれ程荒れ果ててた緑の世界が復活した。そして変化はそれだけではない。
『私様達は『育む者』。そして『完全』なる者』
人形。
ロベリアとディアンサスの周囲には取り囲むように植物で作られた人形が大量に出現していた。その人形はジェーンドゥを模した姿をした蔦人形だった。
人形の目が赤く輝く。
『これ以上貴女達に虐められ続けると私様達の美しさが損なわれそう。だから全力で抵抗させて貰うわ』
「うざっ。あんたが絡んで来たんでしょうが」
炎の羽衣が翼のように羽搏きそこから撃ち出された無数の火の粉が蔦人形を貫く。
周囲全ての蔦人形が燃え上がり、篝火のように周りを赤く照らす。
「そういうの良いからさっさとここから出しなさいよ。私はセーギに会……っ、お祭りが終わったらどうするのよっ!?」
ロベリアが言っていた、セーギの晴れ舞台、という言葉に釣られて「セーギに会いたい」などと恥ずかしいことを言いそうになったディアンサスは顔を赤くしてジェーンドゥを睨み付ける。これに関しては完全なる八つ当たりである。
炎が激しく燃える中、炭と化した蔦人形が倒れる前に言葉を発す。
『……先程も……『セーギ』……と言ってわ。誰、かしら……?』
こっちの質問には答えないのに向こうは質問をしてくる。そんな相手の態度にディアンサスは眉根を寄せて額に青筋を立てる。今にも吠えながら炎で燃やし尽くしそうな威圧を発する。
それをロベリアは手を翳して制する。ディアンサスは燃え滓になっていく人形からロベリアへ視線を向ける。そこに浮かんでいた表情を見たディアンサスはとりあえず怒りを抑えこの場は彼女に譲る。
「気になるかしら? ジェーンドゥさん」
『……何者? ……この都市の、超越者は……聖女4人……』
ロベリアは一歩踏み出すと人形へ声を掛ける。
「ジェーンドゥさん。私達を都市が滅ぶまで足止めをするって言ったわね」
『…………』
「それってつまり、この間に都市が滅ぶだけの『脅威』が迫っているわけね。貴女はそれを私達に邪魔されたくないのよね? それに今『4人』って言ったわ。じゃああの子達も私達と同じようにこんな場所に閉じ込められている、そうよね?」
ロベリアの顔が赤い光りに照らされる
「そんなに私達に邪魔されたくなかったのね。それでこんな風に私達を閉じ込めた。それって『私達が自由なら失敗する恐れがある』ことよね。そう考えるとその脅威は私達の力が在れば食い止める……返り討ちに出来る物って考えられるわ」
『……それが、どうした……というのです、『鉱の聖女』』
ロベリアの表情は……嗤っていた。
「セーギさんのこと、知らなかったのね? だから私達4人さえどうにか出来れば良いと、それで『満足』してしまったのね。……可哀想に」
『……可哀想? 私様達……が?』
「そうよお。だって貴女達が何かを企んでいても、どんな脅威が来たとしても―――」
空間を薙ぐような蹴りが放たれる。そこから発生した暴風というべき風圧がロベリアを中心に拡散。崩壊寸前だった蔦人形を粉々に吹き飛ばす。
「――――――」
燃え滓が舞う中、ロベリアから離れた正面に完全復活したジェーンドゥが立っている。彼女はロベリアの口から出た言葉を耳にして驚愕で目を見開いている。
蹴りによる風圧のように周囲へ響いたロベリアの言葉。全幅の信頼を寄せているであろうその言葉が頭の中で繰り返された。
――セーギさんは打ち砕く――
ロベリアの体から毒が噴き上がる。ディアンサスの炎が火力を上げる。
『外』には信頼できる者が居る。なら自分達がこの『中』ですることは決まっている。
「ディアンサス。お痛をした子にはお仕置きが必要よね?」
「そうね。とびっきりのが必要ね」
聖女が笑う。これから始めるのは単純な力押し。
焦土とする。毒と炎でこの領域を何度も。繰り返し何度も。焦土とする。
殺して死なない者など存在しない。彼女達が取る手段は相手が死ぬまで殺し続けること。
目を見ればわかる。彼女達にはそれを実行できる力も意志もある。
それを全身で感じたジェーンドゥは―――
「……聖女達が全幅の信頼を寄せる相手?」
ジェーンドゥは、『彼女達』は確信する。自分達の企みが全て無に帰すと。
それは失敗であると同時に―――
「……素晴らしい」
―――願いはした、しかし手が届かないと諦めた結末。それに手が届くだろうと確信した。
違う世界。隔絶した領域で双子は笑う。どれだけ離れていようと、どれだけ障害があろうと、彼女達の繋がりを遮る物など存在しない。
だからジェーンドゥはこの2つの【天外領域】で見聞きして体験したことを共有出来る。
姉が知れば妹が知る。妹が知れば姉が知る。
―――虫ケラさん。今日が貴方の踊る最後の舞台になりそうよ?―――
双子は全力で聖女達へ抗う。契約に縛られた道化は幕引きまで壇上で愚者を演じなければいけない。―――本当の意味で自分達の行いが愚かで、そして無駄なことに成るのを期待しながら双子は戯ける。
双子の笑み。それが劣勢になるにつれて仮初めの物から『本物』に変わっていったことに聖女達は気付かなかった。
◆◆◆




