#02 追ってくる者
ガラッ!
青池は近くにあった扉を開けた
「どうやらここは出荷前の商品をしまっておくスペースみたいね」
青池はそう言うと倉庫の中に入った。その倉庫にはぎっしりと段ボールがつまれていた。戸田はその倉庫の中を歩き回っていると、液体を踏んでしまった。なので戸田は何かと思い足下を見るとそこには血が広がっていた
「何故血が?」
戸田がそう言うと青池は一つの段ボールを指差してこう言った
「この段ボールから血が漏れてるわ。中を見てみましょう」
青池はそう言うと段ボールを開けた。段ボールの中にはビニール袋に入った何かがあった。戸田がそのビニール袋を取り出すと、それが何かすぐに分かった
「生首だよね?これ……」
青池はそのビニール袋の中に入っているものを見るとそう言った。しかしこれが人間の首かゾンビの首かを調べるために、戸田はビニール手袋をすると、ビニール袋からそっと生首を取り出した。しかしかなり腐っていたためどちらの首か分からなかった
「見てしまったか」
突然二人の後ろからそんな声がした。なので二人は後ろを向くと、そこにはマントを羽織っている人間がいた。戸田と青池はその人を見るとすぐに普通の人ではないと分かった。何故ならその人物は手に剣を持っていたのだ……
「ネイブ、これが私のコードネーム。まぁ二人とも殺すから意味ないけど」
ネイブはそう言うと青池に向かって剣を振った。青池はとっさに装備している短剣で攻撃を防いだ。しかしロングソードと短剣では殺傷能力があまりにも違いすぎる。なので青池は戸田にこう言った
「戸田!逃げるよ」
青池はそう言うと戸田の手を引っ張って窓ガラスを割って外に飛び出した。ネイブが持っているのはロングソード。なので距離さえとれば大丈夫だと判断したのだ。しかしそれは間違えだった。ネイブは二人が窓から外に出たのを見ると、剣をしまい拳銃を取り出した。そして二人に向けて発砲した
「さすがに工場から逃げるのは危険ですよ」
戸田は青池にそう言った。この食品工場は出入り口が建物からかなり離れていた。しかも出入り口から建物まで芝生が広がっていて遮るものが何もなかった。最初は特に意味がないと思っていたつくりでが、今思うと工場から出させないようにする仕組みだったのかも知れない
「この建物の中で仲間が来るのを待つしかないですよ」
戸田にそう言われると青池は工場から逃げるのではなく、建物の中で隠れて仲間が来るのを待つことにした。なので二人はさっきまでいた建物の中に急いで入った
「逃げられたか……」
ネイブはそう言うと拳銃をしまった。そして剣を持つと二人の逃げ込んだ建物に入っていった……
「とりあえずバレずに隠れられたわね」
青池はそう言った。二人の隠れた場所は建物の二階にある男性トイレの個室だった。この建物は古くトイレも自動で電気が付かないので、そういう意味では二人は救われた。しかし昼なのに暗く、トイレもかなり汚かった
「次にやつが来たら発砲してもいいですか?」
戸田はそう言うと拳銃を手に持った
「仕方ない。発砲してもいいけど、殺さないように気をつけて」
「分かりました」
戸田はそう言うと拳銃を両手で持った。戸田が近くにネイブが居ないか神経を尖らせている間、青池は有木にこの事を伝えるために無線機を取り出した
「無線機なんか使ってバレませんか?」
「ごめん。スマホ置いてきちゃったからこれしか連絡手段がないの」
青池はそう言うと無線機を使って報告し始めた。もし戸田がスマートフォンを持っていれば貸してあげたのだが、あいにく戸田もスマートフォンは警視庁ゾンビ対策課の机の上だった。なので無線機の音がネイブに聞こえなければいいなと思うことしか出来なかった。
ガチャッ!
「ここにいるのか」
突然扉が力強く開かれると中にネイブが入ってきた。幸いネイブは剣を持ってトイレに入ってきていた
ガシャッ!
青池は手を滑らせてしまい無線機を床に落としてしまった。それにより完全にネイブに位置がバレてしまった
「ここのトイレか」
ネイブはそう言うと剣を、二人の隠れている個室の扉に突き刺した。その剣は扉を突き抜けて青池の顔の横を通り抜けた
「いまよ!」
青池はそう言うと扉についている鍵を解除して扉を開けた。そして青池はすぐに個室から飛び出した。そしてネイブの顔面を拳で殴った
「この野郎……」
ネイブは殴られた衝撃で倒れてしまった。ネイブの持っていた剣は個室のドアに刺さりっぱなしなので青池は全然怖くなかった。なので拳銃を取り出すとネイブにこう言った
「戸田!手錠をしてから他に凶器を持ってないか調べて」
「了解」
戸田はそう言うとネイブに近寄ろうとした。するとネイブは突然拳銃を取り出し、青池に向けた
「それ以上近付いたらお前を撃つぞ」
パンッ!
突然一発の銃声がした。するとネイブは腕から血を流し、拳銃を落としてしまった……
「ナイス戸田!」
青池はそう言うとネイブの拳銃を拾った。そして戸田にこう言った
「こいつの怪我していない腕とそこのパイプを手錠でつけておいて」
青池がそう指示すると戸田はネイブの左手に手錠をかけた。そしてもう片方に洗面台にあったパイプにつけた
「これで安心ね。残りを調べましょう」
青池がそう言って部屋から出ようとしたときだった。ネイブが二人にこう言った
「残念だがさっきの銃声で仲間がくる。数分後には話せなくなる」
ネイブはそう言った。しかし二人はもちろん殺される気など微塵もない。なので戸田はネイブにこう言った
「みんなまとめて逮捕してあげるよ」
「大人しくしてなよ」
青池はそう言うと暗くて汚いトイレから出ていった。戸田は腕から血を流しているネイブをチラッと見てから、青池を追って部屋から出た……
戸田裕晴
警視庁ゾンビ対策課一班、巡査部長
武器……短剣
拳銃
青池穂色
警視庁ゾンビ対策課一班、巡査部長
武器……短剣
拳銃