赤と白
放課後の学校。
部活動が行われている最中、カーテンが閉めきられた薄暗い教室の中で会談は行われた。
赤と白。
テーブルに置かれたチェス盤越しに二人が対峙する。
女は駒をつまんだ。
「今回の件、どう落とし前をつけるつもり?」
赤のボーンが前進する。男は白の駒を手の中で遊ばせた。
「落とし前?何故」
白のナイトが斜めに跳ねる。
女がグラスを傾けた。
「とぼけないで」
冷えきったトマトジュースが注がれる。
「あなた達以外いないでしょう。こっちの団旗に白のペンキで落書きするなんて」
男は箱を取り出した。
「それは君たちの妨害行為に対しての報復だ」
男はココアシガレットをテーブルの上へ並べていく。
「副団長を拉致、監禁。作戦会議中にクラッカーを持って襲撃。こちらの練習場でフェス…」
女はココアシガレットを男の口にくわえさせる。
「細かいことを気にする男は嫌いよ。それにあなたもフェスでは結局一緒に歌ってたじゃない」
鋭い金属音が響く。野球部のノック練習が始まったのだ。
「とにかくだ。今回の件、こちらから謝罪することはありえない」
男はキングを後退させた。そこに赤のクイーンが迫る。
「謝罪なんて求めてないわ。私が欲しいのは勝利だけ。完璧な勝利だけよ」
再びグラスが傾けられる。しかし、男はそれを無視して瓶に入ったトマトジュースを飲んだ。
「それは無理な相談だ」
刹那、野球ボールが窓に直撃し、ガラスの破砕音が教室に鳴り響く。咄嗟に男は女に覆い被さった。テーブルはひっくり返り、物が床に散らばる。女はココアシガレットをくわえて言った。
「甘いわね」
外の喧騒と熱気が室内を満たす。
二人は乱れた教室を直し終わると背中を向けた。
夕日が差し込み二人の間を別つ。
「ケリをつけよう」
「決着をつけましょう」
体育祭は三日後に迫っていた…