異世界転移したさきは幼女な魔王の城でした。
もうひとつ同時進行?になる作品『この俺が異世界転移したならばっ!』があるので、投稿が遅れるかもしれませんが、作者は楽しいのでご了承ください☆
夕暮れ時、俺はいつも通りの帰り道を歩いて帰っていた。家から15分のところにある交差点で信号を待っているとき、それは起こった。
「ここの信号長いんだよなぁ…」
誰にいうわけでもなく呟く。そういえば夕暮れ時というと、なんだか心霊的な気分になる。夕暮れというのは昔から悪魔に会うと言われているからだ。その時間帯を逢魔が時という。
それがきっかけなのかは分からない。逢魔が時だからだったのか偶然だったのか。はたまた運命というやつだったのか。
「早く帰って飯を食べよう。」
そう思い呟いた瞬間。
ブワッという風とともに地面から光が現れ覆われた。
「うぉ!?なんだこれ!??」
思わず叫ぶが光は途切れることなくどんどん強くなっていく。それに伴い周りがさらに見えなくなっていく。
「うぉっ!目を瞑っても眩しいぞ!?なんだ!?病気になったのかおれ?!」
そんな訳がないが慌てていて変なことを叫んでしまう。しばらくそのまま耐えていると、どんどん光が小さくなっていった。
「う…なんだ?さっきの…それにまだ周りが見えない……」
目を手で触りながら周りを確認しようともう片方の手を迷わせる。
「んっ…」
片手に柔らかいものが触れる。なんだこれ?モミモミモミモミ…
「やわら…かい?」
やっと目が慣れてきた、俺はいったいなにを触っていたんだ……?
「目が見えるようになりましたか?異世界から来た変態様。」
「うぉ!!…え!?メイドさん!?」
目を開けて触れていたものを見ると、目の前にメイド姿をした女の人が立っていた。ショートカットにした艶やかな黒髪にメイドカチューシャと呼ばれるものを着けていて、黒を主体としたメイド服を腰のところをリボンのように纏めている。
顔は可愛いより綺麗と言うべきだが、その表情は無表情。あまり感情は伺えないからか人形のような印象を受ける。ただ…とてつもなく綺麗だった。
「…気が付いたのでしたら私の胸から手を離すべきではないでしょうか?」
「ご!ごめん!!」
自分でも驚きの早さで手を離す。つい見とれてしまっていた。今までここまで綺麗な人を見たことがなくアタフタしてしまう。やばいやばい女の人の胸初めて触っちゃったよ!?これはあれか!責任を取らなきゃ駄目なんだろうか!?
「では、大丈夫ならついてきてください。」
「は、はい?」
ついていく?どこに?というかここはどこだ?俺はさっきまで交差点にいたはずなのに、周りを見ると屋内にしか見えない。どこか西洋の洋館の一室のような部屋に俺はいる。薄暗い雰囲気だが…俺は誘拐されたのか?それしか考えられないよな……?
「異世界から来た変態様、戸惑うのもわかりますが、その説明の為にも今から行く場所についてきてください。」
「あ、はい…」
と、とりあえずついていくしかないよな…
というかさっきから俺を呼ぶときに異世界から来た変態様と呼んでるけど、異世界ってなんだ?
「あ、あの…」
「お!おい、テュオールさんよぉ、そいつは人間かぁ?俺にくれよぉ!美味しそうなやつじゃねぇか!」
「うわっ!」
なんだこいつ!?案内されるまま、豪華にみえる廊下のような道を進んでいくと曲がり角からまるでゲームに出てくるような蛇と人間を会わせたような二足歩行のへんなやつが出てきた。
「はぁ…この人間は魔王様のお客様だ。不用意に近付くと殺しますよ?」
「っ!わ、悪かったよ…俺たちの飯かと思ったんだよ…ちっ……」
メイドさんの口調が変わりなにやら怖いことを言う。というかなんだあの怪物!?とてつもなく怖かったんだけど!
「め、メイドさん!?あ、あれは……?というかメイドさんを恐れてた?なんなんですかさっきの…」
「…え?なにかありました?」
おっとぉ!急になにを言ってるんだこのメイドさん!すごい!こんなに感情のない『え?なにかありました?』なんて言葉聞いたことないや!
「いやいや、メイドさん?なに?今さっきの蛇人間?みたいなやつって…めっちゃ怖いんですけど…」
「そんな慌てないでください、見苦しいですよ異世界から来た変態様。」
「えー…」
なんでこのメイドさんはこんなに落ち着いてるの!?見苦しいなんてこんなに綺麗な人に言われたらすごい悲しくなるんだけど!?さっきから突っ込みたいことばかりでなにがなにやら……
「つきましたよ、さぁ、入ってください。」
「は、はぁ…」
目の前には重々しく大きい扉が立ち塞がっていた。どうやら俺を連れてきたい場所というのはここらしい。入りたくないなー!
「さあ、早く入ってください。」
「わ、わかりました。」
扉に手をかけると見た目とは裏腹に意外と軽いことがわかった。軽いはずが、ギギギという重々しい音とともに扉が開いていく。
中は今歩いてきた廊下より明るい。どうやら上の方に照明があるようだ。というか、広い。まるで勇者が魔王と出会うときの魔王の部屋のようだ。いままでの廊下もそんな雰囲気があった。
「…よく来たな、人の子よ。こっちへ来るがいい。」
奥の方から声が聞こえる、多分俺をここに連れてきた張本人だと思うが…というか声が若々しいというか、女性だよな?女性というか、女の子だよな?話し方は変な感じだが…とりあえずここは言われた通りにするしかないか…
「あの…なんで俺はここに連れてこられたんでしょうか?」
声の方に歩きながら話しかける。
「ん?まあ説明をするからこっちへ来い。会話というものは顔と顔を合わせなければ始まらん」
変に律儀なやつだな?俺としては聞きたいことがたくさんあるのだが…あ、やっと人が見えた。ん?小柄だな。声に似て体も小さいのかな?
「分かりました。で、一体なんで俺を……?」
「そうだな、説明をする前にまずは自己紹介といこうか。」
そう言いながら俺の目の前にいる『幼女』は話始めた。
「………え?」
「どうした?自己紹介は大事だろう。あぁ、我から自己紹介をしろと言うことか。確かにそれが通りというものだ。」
「いや…えっと……え?」
「我の名前はシア=シュドロム=クローネだ。この世界の魔王として君臨している由緒正しき王者なのだ!!」
フハハハと豪快な笑い方をするが声が可愛らしいせいで、その笑い方も可愛く感じる。
「異世界から来た変態様、こちらがこの世界の魔王のシア様です。異世界から来た変態様が考えてらっしゃることは分かりますが、その疑問は声に出さない方がよろしいかと。」
「は、はぁ。」
いつの間にか魔王と自称する女の子の前にメイドさんが立っていた。ほんとに何者なんだ?この二人は…
「あの、異世界とかこの世界とか…なにを言ってるんですか?」
「ん?ああ、お前は我によってこの世界に召喚されたのだ。」
「は?なにを言って…」
いや…でも確かにさっきの蛇人間も作り物のようには思えなかった、メイドさんやこの幼女も普通の雰囲気ではないし…俺は…本当に異世界に来ちまったのか?
「ふふん、我から自己紹介したのだ。お前も自己紹介をするといい、長い付き合いになるかもしれないからな。」
「あ、えっと…皇 空って言います。16歳です。」
どうやら俺は異世界にしろ、誘拐されたにしろ、変なところに来てしまったらしい