問1 バナナのねだんは40円です。メロンのねだんはバナナのねだんの20倍です。 メロンのねだんは何円ですか。
別にバナナが嫌いな訳じゃないよ?むしろ好きです。語感で「低級」って言ってるだけです。
問1 バナナのねだんは40円です。メロンのねだんはバナナのねだんの20倍です。 メロンは何円ですか。
回答欄
途中式を以下に書きなさい
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「特性は『バナナ』と出ました。貴女は今日から『マジカルバナナ』です!」
「ガーン!!」
あまりの衝撃に、私は膝から崩れ落ちた。
だって私の憧れるマジカルメロン先輩は高い破壊力と防御力が自慢の高級果物で、そして私のマジカルバナナは手数と燃費が利点の低級果物だったから。
二十年前、突如現れた謎の存在『エチレジア』。生物を老化・腐敗させる彼らは、今この瞬間も全世界で猛威を振るっています。
対抗手段もなく人々が恐怖に震える中、一つの希望が芽生えました。
なんと幼少期に『エチレジア』の影響を受けて急成長した少女には、彼らに対抗する力が発現することが判明したのです。
というか私もその一人だったりします。
幼稚園で突然襲われて、気が付いたら中学生くらいになってました。
もう本当にビックリ!
……え、元幼稚園児がなんで普通に喋れるかって? 不思議ですよね。習った覚えのない算数や漢字も全部分かっちゃうんです。
まるで本来あるべきだった時間をすっ飛ばされて、無理やり数年後の自分にされたみたいな感じです。
もはや何を言っているか、私にも分かんないですけど。
とにかく!
そういう訳わかんない状態にされて、友達や先生が逃げ惑ってて、助けに来たマジカルフルーツさん達も苦戦してて。
もうどうにもならない! って時に現れたのがマジカルメロンさんだったんです!!
緑に輝く球形のバリアを纏った彼女は、あらゆる攻撃を物ともせず。
メロンのオーラを帯びたモーニングスターは軽々と敵を消しとばしていく。
かっこよかったなぁ。
その優雅で苛烈な姿に憧れて、
私は魔法少女になる決意を固めたんです。
そんなこんなで力を得た私が所属することになったのが、国立マジカルフルーツ養成学校。『エチレジア』に対抗するべく数年前に設立された養成機関です。
ここで対エチレジア戦力としての能力を磨き、世界に巣食う彼らを消し去るのが私たちの使命!
そう……だからこそ。
「第一果物小隊、壊滅しました! 付近のマジカルフルーツは現場へ急行してください!!」
「それって確か……メロン先輩の隊?」
市街地の見回り中に届いたその報せは、とてもショッキングな内容で。
「そんな……」
胸元に光るペンギンさんのピンバッチを握り締めました。それは先月の授業でメロン先輩から貰った大事なもの。
手の中が、嫌に冷たく感じる。
背中がゾクッとした。
「っ!!」
偶然現場近くにいた私は、矢も盾もたまらず駆け出しました。報告にあった現場は、あのT字路を曲がった先の小さな公園。
早く行ってメロン先輩を助けなきゃ!
そんな想いとともにカーブを曲がる。そこにあったのは、倒れ伏した高級果物の魔法少女たちと『エチレジア』の瘴気を身に纏って、禍々しく屹立するマジカルメロン先輩の姿。
「そ、そんな……ラジカル化してる……」
『エチレジア』に耐性のある私たちマジカルフルーツ。
普通の人たちより遥かに高いその耐性にも、やっぱり限界というものがあります。
それは育成学校に入って、初めての授業で教わる事。
『エチレジア』に同化されることで発生する最悪の事態。
それが『ラジカル化』。
精神を蝕まれ、瘴気を撒き散らし、仲間たちに牙をむく。
彼女を救う方法はただ一つ。
攻撃魔法で体内の『エチレジア』を消し飛ばすこと。
それはつまり、
「メロン先輩と戦って、勝利すること」
私の言葉に反応するかの様に。
ラジカルメロンとなった先輩は、瘴気と共に微笑んだ。
「はぁ、はぁ、はぁ」
「うふふ。誰も彼も、本当に歯応えがないですわ」
息が上がる。キツい。どんな攻撃も全て通用しない。
何度攻撃魔法『ドールナイフ』を投げてもキリがない。
ラジカルメロンの周囲に張られた緑色のバリア、『アンデスアーマー』が全ての攻撃を防いでいる。ダメージを幾ら積み重ねようとも、バリア内から溢れ出る果汁が一瞬で皹を修復する。
手数で勝負する低級は勿論、一撃の重さが売りの高級マジカルフルーツですら攻撃を通すことが叶わない。
対してラジカルメロンのモーニングスターは、次から次へと仲間たちを叩き落としてゆく。
増援に来た彼女たちが、為す術なく次々と地に伏せる。
現マジカルフルーツ最強と謳われるメロン先輩。
全人類にとっての希望だった彼女が、目の前に絶望の化身として立ちはだかっていた。
「こうなったら……いや、でも……」
これまで低級マジカルフルーツとして、攻撃回数を重視した戦闘訓練を学んできた。
でもそれじゃ、憧れのメロン先輩に近づくことが出来ない。
そう考えてずっと続けてきた個人練習が役に立つかもしれない。
けど、あの魔法の成功率はまだ五割程度。
もし制御に失敗すれば、果汁が暴発するかもしれない。
どうする……一体どうすれば。
希望を求めて逡巡する私を、ラジカルメロンが軽い言葉で貶めた。
「あら、まだやる気? 低級のクセに諦めが悪いわね」
心が軋む。
それだけは聞き捨てならなかった。
他の誰でもなく、メロン先輩の身体が発したという事実が、私の心に黒い斑点を生み出させる。
激しい怒りが、私の背中を突き飛ばした。
「……わない」
「ん、なんですの?声が小さいですわ」
「先輩はそんなこと言わないっ!!!!形成『ドールナイフ』っ!」
叫びながら、右手に攻撃魔法を形成する。
「またナイフ投げ?そんな一束いくらの低級魔法、私にはカスリもしませんわよ」
その通りだ。
この魔法は十分な数がなければ無意味な代物。
そして連射ではアンデスアーマーに歯も立たない。
だけど……数の使い方は連射だけじゃないっ!
「『ドールナイフ』『ドールナイフ』『ドールナイフ』っ!」
「なっ!?なにが起きていますの!?」
私が一つ魔法を形成するたびに、手元のナイフが段階的に輝きを増してゆく。
「『ドールナイフ』『ドールナイフ』『ドールナイフ』『ドールナイフ』『ドールナイフ』『ドールナイフ』『ドールナイフ』『ドールナイフ』『ドールナイフ』『ドールナイフ』『ドールナイフ』『ドールナイフ』『ドールナイフ』『ドールナイフ』『ドールナイフ』『ドールナイフ』『ドールナイフ』っ!!!」
「な、なんですのそれは!?見たことも聞いたこともありませんわ!!!」
黄色い光を薄く帯びるだけだった小さなナイフが、目も眩む輝きを持つ大剣へと変貌していた。
これこそメロン先輩を追い続ける私が辿り着いた新応用魔法。
果汁集約!
形成された『ドールナイフ』と同じ場所に同じ魔法を何度も重ね掛けし、一本のナイフに果汁が集約されることで絶大な攻撃力を得る。連続魔法形成を得意とする低級マジカルフルーツでなければ使えない、まさに私の私による私のための応用技!
暴発はなんとか防げてる。
あとは、こいつを叩き込むのみ!
「覚悟しろ『エチレジア』!!」
「くっ、させませんわ!」
慌てるようにモーニングスターが振るわれる。でも、
「っ!『バナナスリップ』!!」
果汁を足下に溜めて放出することで、地面との摩擦を軽減しつつ推進力を得る移動技。高い機動性で地面を遊具をブロック塀をスライドし続ける私に、モーニングスターは全く擦りもしない。
「くっ!この!ちょこまかと!」
外れたメロンの鉄球が地面を抉り、鉄棒をひしゃげさせる。
何度も攻撃が外れ、彼女の中で次第にストレスが溜まる。
「当たりなさいっ!」
怒りに任せた一振りが隙を大きくした。
脇が甘い!!
強く地面に踏み込んで、足下にも果汁集約を使う。何倍もの推進力が私を勢いよく射出する。
いま助けますからね、メロン先輩っ!
「うぉぉぉぉぉおおおおお!!!!!」
逃げの姿勢から転進、急激に突っ込んでくる私に、対処しきれないラジカルメロン。
身体は動かず、ただ表情を驚愕から怒りへと変貌させた。
「この私がっ!低級如きにっ!!」
「っ!低級を舐めるなぁあ!!!!!!!」
一刀必殺、アポ山スーパーブレード!!
全身全霊の力で振るった刃は、誰もが破れなかったアンデスアーマーを容易く引き裂き、マジカルメロンの中に巣食っていた『エチレジア』を一撃で消し飛ばした。
黄色い果汁の残滓が辺りを染める中、一人の低級魔法少女が立っている。
胸元で誇らしげにペンギンのピンバッジを光らせながら。
『ペンギン印のマジカルバナナ』として語り継がれる、偉大な伝説の幕開けだった。
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よって、メロンは800円とお高いけれど、金額が全てではない!
先生の採点コメント
そういう問題ではありません。
熱意は認めますが真面目に回答しましょう。