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プロローグ 死亡
「うっし!今日は一緒に帰るべ、小夜!」
「オッケー恵美!」
いつもと変わらぬ日常。
「疲れたー眠いー。」
「寝るなー起きろー。」
ごく普通の毎日。
「あーそういや明日確テス?」
「そうだよ。」
「勉強してねーわー。」
「いやしろし!」
大して変わらぬ、平凡な世界───
の、はずだった。
緑の信号。踏み出される足。
「恵美!」
「んあ?」
友人の悲鳴。間の抜けた私の声。訪れる衝撃。
「・・・?」
傾く視界。頭に生じる痛み。足音。
「恵美!恵美!?大丈夫!?」
遠ざかる車の音。霞む視界。声が、出せない。
「恵美!いま、いま救急車呼ぶから、ね!?」
いたい。からだが、つめたい。まって。いかないで。わたしを、おいていかないで。
この日この時ある世界で、一つの命が消えた。
けっしてありえぬ原因により消えた命は、魂と共に巡り巡って、別の世界にその身を落とす。
これは、一人の少女の物語。
奇妙な運命を歩む、強く美しく、歪んだ少女の物語。