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短編【文学】【童話】【ファンタジー】集(2)

けさらんとぱさらん

作者: 蠍座の黒猫

 あるところに、けさらんぱさらんの双子の姉妹がいました。二人の名は、けさらんと、ぱさらんと、いいました。

 二人は世界を漂っていましたけれど、ふいに強い風が吹いてきて、何もわからなくなってしまいました。

「ねえ。」ぱさらんは言います。

「あなたの姿、少しぼやけてるわよ。水鏡に映ったみたいに。」


けさらんは気付きました。

「ここは水の世界なの。大きな山脈が水に溶けてしまったから、全てが水の世界になってしまったの。」

「動物たちはどうしたの。」ぱさらんは少し不安そうです。

「大丈夫。ちゃんとみんないるわ。」

 ぱさらんが見回すと、向こうのほうで鹿が水草を食べています。その後ろ脚は魚のようになっていて、角は柔らかく丸みを帯びています。かと思えば、足元をくすぐって猫が泳いでいきます。こちらは首だけが猫で、もうほとんど毛の生えた魚のようですが、不思議にあまり変わっていません。


 けさらんたちは少し寒くなりました。遥か上の方、光が射してくるほうからなにか降ってきます。

「あ、これは。水の中にも雪は降るのね。」ぱさらん。

「そうね。でも冷たくないわね。」けさらんはお姉さんぶっていいます。

 そのとき、また遥か上のほうから今度は大きな音がしてきました。

――ゴゴゴゴ

「あれは飛行機の音かしら。」ぱさらんは首を傾げます。

そのとき、すいと、うぐいの群れが通りかかり、二人に教えてくれました。

「いいや。あれは波の音だよ。大きな波の王さまが渡って行くんだ。」

二人は、上を見上げました。何か大きなものが動いていくようでした。


 けさらんとぱさらんは、いつも漂っていましたから、今も別に退屈ではなかったのですが、世界が何だか変わってしまったので、少し驚いていました。

「ねえ。うぐいさん。」けさらんが尋ねます。

「どうして、ここの木には葉っぱが無くてみんな灰色なの。」

「それはね。流木だからだよ。生きている木も向こうにあるよ。」

そう言って、うぐいたちはまたすいと、行ってしまいました。


 二人は、流れるままに流されて、気が付けば大きな波の王さまのお城にやってきました。ゴツゴツしている波の王さまのお城の石垣には、気味の悪い像がありました。よく見るとその像の頭の上に、毛足の長い猫が座るようにいて、遠くをみています。


 ぱさらんが尋ねます。

「ねこさん。何をみているの。」

「世界の終わりを見ているのさ。」猫は答えました。

「それじゃあ、わたしたちは。」

「「世界の始まりを見に行くわ。」」

二人はそう言って、ふんわり水のなかを漂って行きました。

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― 新着の感想 ―
[一言] 少し幻想的な世界観や、どこか哲学めいたセリフなど、一度だけでなく何度も読み返したくなるような深みと味わいを感じました。 世界の終わりもはじまりも、きっと形容し難くふわふわとしたものなのでしょ…
2015/08/10 21:16 退会済み
管理
[良い点]  「世界の終わり」と「世界の始まり」を見るのは、はたして世界の中なのか、それとも外なのか。  溶けた山脈に変容した動物達。大きな波は全てを洗い流すもので、水の中に入った者達はそれに飲み込ま…
[良い点] とても透明感のある幻想的なお話に引きこまれました。 不思議な動物達、世界の終わりを見る猫とはじまりを見るけさらんぱさらん、不思議な雰囲気に想像力を刺激されました(^^♪ありがとうございまし…
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