表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

彼女と僕シリーズ

好きよ好きよも嫌いのうち

作者: 朝永有

「今週のグルメです! 今日は、今話題の創作料理をご紹介します!」

 夕方、彼女がつけたテレビではグルメ特集が放映されていた。

 有名な女子アナウンサーとグルメに詳しい男性芸能人、そして創作料理を作る年配の女性料理研究家、合わせて3人が画面に並んでいた。

「本日は何を使うんですか?」

「今日はですね……」

 料理研究家が一呼吸おいて、エプロンのポケットから食材を取り出し、画面に見せつける。

「これ! アボカドです!」

 おお! と感嘆の声を上げた男性芸能人が言葉を続ける。

「アボカドですか! アボカドは女の子みっんな大好きですからね!」

「はい! 私も大好きです!」

 女子アナがとびっきりの笑顔をカメラに見せつけた後、料理研究家が料理の説明を始めた。


「あのさ」

 彼女が呟くように話しかけてきた。このときは、少し怒りを覚えているときだ。

「どうした?」

「どうして、勝手に女子が好きなものを決められなくちゃいけないの?」

「まあ、確かにおかしいかもしれないな」

「おかしいよね! 『女子みんな好き』ってさ、じゃあ男性はどうなんだよって思うよねさらに、それが嫌いな女子は――」

 彼女はそう言いかけたところで言葉を止め、画面を凝視した。僕もその目線に合わせる。

「ここにチーズですか? きゃあ~! 私チーズ大好きなんですよ!」

「アボカドにチーズですか! 女子みんなが好きな食べ物ばかりなんて、贅沢ですね~!」

 女子アナはチーズに興奮し、男性芸能人はその食材を褒め称える。

「これで完成で~す!」

 そして料理研究家が自慢げに皿の上に載った料理をカメラに見せ、残りの二人は拍手と笑顔でそれをたたえた。


 彼女はテレビに消して、その目を僕の方を向けて言う。

「チーズやアボカドが嫌いな人は女子じゃなく何者なんだよ!」

「人間だろ?」

「こういう番組は、そういったことを平気でやるよね! 他にあるとしたら、『男性は丼物が好き』とかだね!」

 どうやら僕の意見は彼女にとってどうでもいいらしい。

「男女で食の好みとかを勝手に決めつけるのは差別でしょ! 男女共同参画社会のこの現代で!」

「どうした!? そんな専門用語を使って!?」

「いや、この差別は無くすべきでしょ!」

 彼女は勢いそのままで僕に迫ってくる。

「ということで、今日の夕飯は牛丼で決定!」

「マジかよ」

「マジです」

「じゃあ、チーズでもトッピングつけるかな……」

 そうして僕らは部屋の外へと出た。


読んでいただき、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ