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急に走ったせいだろうか、教室の近くにまで戻った時には呼吸が苦しくなってしまっていた。



(あんのバカ先輩)

心の中で悪態をつく。ひ弱なお嬢様の体はいきなりの運動に悲鳴をあげた。ぜいぜいと呼吸は乱れ、足元は覚束ない。

それでも歩みを止めない私はお嬢様としては少し乱暴に教室の扉を開ける。昼休みだからだろう、教室は廊下まで生徒たちの喋り声が聞こえていた。




「あーやっときた!遅いよ芽衣香ちゃん」

「え?」

いち早く私に気づいた幸穂ちゃんが私に駆け寄る。次の授業まであと15分はある。私なにかやり残したことがあったかな?



「ええと、私なにか忘れていましたか?」

「ううん、違うけど!やっぱ話の中心人物がいないと進まないからっ!」

「???」

訳がわからない。話についていけず頭の上にはてなマークを浮かべる私を、幸穂ちゃんが引っ張った。その先には人だかりができていて、希美ちゃんやクラスの男子、クラス長の姿もある。そして、その中心で椅子に偉そうに座っている人物に驚いた。




「は、隼人様?」

「芽衣香、遅い。どこに行ってたんだよ」

「せ、先生に頼まれ事を任されてしまっていて」

明らかに不機嫌そうな隼人を見て、とっさに嘘を吐いた。司先輩と会っていましたなんて言って、またお仕置きされるのはごめんだ。

隼人は不機嫌そうな顔を更に歪ませた。



「今度っからは俺に言えよ。お前に無理させるなんてその教師の頭どうなってるんだ」

「あ、あはは……」

とりあえずお茶を濁す為に苦笑いを浮かべといた。かの学校で私に頼み事をしてくる先生は隼人のおかげでゼロになりそうだ。




「ねーねー!それよりも芽衣香ちゃん、劇やろうとしてるってホントなの!?」

「え……」

もしかして言ったの!?という抗議を兼ねて隼人を見る。隼人は別段慌てる様子もなく『昨日の事話しただけだ』と冷静に返してきた。



「で、できたらいいなという話です。あまり期待をされてしまうと……」

「あーちがくて!人手が足りないならクラスのみんなも一緒にやっちゃおうよって話になって!」

ええ!?

びっくりして固まってると、もう他のみんなの中では決定なのかドンドン話が進んでいく。




「やっぱ三角関係ってのは憧れるよね!」

「あの三城先輩も入ってくれるんだったらみんな期待するだろっ!」

「ここは王道に中世ヨーロッパ風にしない?」

「ち、ちょっと待って!」

なんだか話の中心にいるはずなのに全くついていけないんですけどっ!

と慌てていたら、クラス委員長である大貴君が説明してくれた。




「この学校は9月に学校祭やるのは知っているよね?」

「え、ええまぁ」

「そこで、一クラス一個ずつ、歌やら劇やら合奏やら、なんらかのパフォーマンスをしなくちゃいけなくて……。このクラスにはピアノ弾ける人が少ないし、そこで紫龍さんの考えている劇に便乗させてもらえないかなぁって」

なるほど。クラスのみんな(+隼人と司先輩)で、学校祭でのパフォーマンスとして劇をやらせて欲しいということか。




「で、でもいいのですか?隼人様や司先輩が主役で……」

クラスで行うのに、劇の主役が隼人や司先輩だと怒られてしまうんじゃないだろうか。それに、折角クラスでやるのだからなにかしら目立つ役をやりたいって人もいるだろうし……。




「いいと思うよ。だって、みんな今年が初めてだからよく分からないし、だいたいの人が賛成してくれたから。あのイケメンの三城先輩と隼人君が特別出場とか、注目間違いなしだよ!」

「で、でも……」

「それに、どのクラスのパフォーマンスが良かったか先生が採点するんだよ。そこで1位に選ばれたら……」

「選ばれたら?」

キラキラとした大貴君の瞳を見て、思わず期待を高めてしまう。




「なんと、お菓子とアイス貰えるんだって!」

「…………」

金一封か?と思った私は汚れてるなぁと実感した。



「隼人様も、いいのですか?」

「別に。人手は多い方がいいし、それに兄貴のアドバイス通りにいくなんて、癪に障る」

さすが俺様。ぶれませんななぁ、と私は思わず感心してしまった。



「だったら司先輩にも許可を貰いましょう」

「おー!頼んだぞ紫龍さん!」

「それで、芽衣香ちゃんの中ではどんなお話やるか決まっているの?」

幸穂ちゃんの質問に、私はにっこりと笑って見せた。





「優しきお姫さまと格好いい騎士の身分違いの恋……、なんてのはどうでしょうか?」


少し短くてすみません(_ _)



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