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東方幻探課  作者: 犬上高一
そうだ。守矢に行こう
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第45話 妖怪の山

つたねぇ文章だなぁと思いつつ。ゴール目指して頑張ります。

後最近のお話は文字数の目安を5000字くらいにしておりますので初期の頃の短文とは打って変わっています。

ある時、幻探課に一人の男がやって来た。男は幻探課に依頼があって来たのだという。男の依頼とは山の上にある神社に供え物を頼みたいという事だった。

彼らは不思議に思った。何故供え物を他人に頼まねばならないのかという事だ。

その事について聞いてみた所案の定これには訳があったのだ。


「実はその神社がある山ってのが少々厄介でして、天狗が支配する山なんですよ。」

「天狗??」








そして現在彼らは人里から山へと向かっている。


「昔々の幻想郷が出来た頃からその山には天狗が住んでいたという噂ですが、少し前にその山の上に新しい神社が引っ越してきて、そこをお参りするにも天狗が山を登らせてくれない。だからいつもは神様が里にやってくるのを待っているんですが、今年はやって来ない。供え物も魚や野菜や酒などだから出来るだけ早く届けてほしいってことらしいですよ。」


そう言ってクロを走らせるのは陸佐だ。っていうか運転しなくてもクロ一人で走るんですが。今回は蓮子とメリーは留守番だ。場所が場所だけにと言う話なので、蓮子がかなり渋っていたがしょうがない。


「でもこの依頼結構大変じゃないですか?」

「何が?」


話を聞くかぎり優海は天狗が簡単に山に登らせてくれるとは思えないからだ。


「まぁいざとなったら山の上飛んでいけばいいから。」

「(飛ぶの私だけどね)」

「それに花見の時うな重ごちそうになる約束しちゃったから。」

「「「「それか!!」」」」






―――――――――――――


所変わって妖怪の山の麓。ここは天狗の縄張りの境界線であり、いつも見回りの天狗が要る所である。

・・・の筈なのだが何故かいない。では、どこにいるのかと言うと答えは簡単。


「王手!!」

「あちゃー!!」


天狗と言ってもいろいろいるので真面目な奴もいればこうしてサボる奴もいる訳である。


「5戦3敗。今日は私の負けかー。」


そう言ったのは頭に緑の帽子を被り緑のリュックを背負ってきゅうりを食べながら将棋をする河童の河城にとり。


「じゃ、約束通りこれは貰っていくわよ。」


そう言って賭けの商品である酒が入ったひょうたんを手に取るのが、先程説明した仕事をさぼっている天狗の犬走椛。

天狗と言っても人種と同じように実は種類があって彼女はその中の白狼天狗というあまり地位の高くないらしい種族だ。もっとも地位の高い人が見回りやってるとは思えないが。


「所で椛。あんた大丈夫なの?」

「何が?」

「見回り。」


将棋盤を片付けながら言うにとり。


「別にいいのよ。わざわざこの山に入ってくるバカな人間や妖怪はいないし。毎日毎日同じ景色を見る身にもなってほしいわ・・・。」

「それもそうだね。」






――――――――――――――


その妖怪の山に入ってくるバカな人間+人外5人。


「おかしいなぁ・・・話じゃ山の麓には見回りの天狗がいるからそれに話を付ければ通れるって聞いたんですけどね。」

「いないんなら通っていいってことじゃないの?」

「そうですね。事後承諾でも問題ないだろうし。」

「(絶対問題ある気がする・・・・。)」


山道を上へ上へと上って行く一同。大体山の中腹辺りまで来た頃に


「ちょっとあなた達。こんな所で何してるの?」


ハッチを開けて声のした方を見てみるとクロの屋根上に一人の少女がいた。頭には赤い帽子(?)を乗せて、肩からカメラを下げた黒い髪に黒い瞳の少女。そう彼女こそ幻想郷最速のゴシップ記者―――射命丸文である。


「いえ、ちょっと上の神社に用事があるので」

「山の麓には白狼天狗がいたはずよ。その娘はどうしたの?」

「え?誰もいませんでしたよ?」


瞬間頭を抱えてその場にしゃがみ込む文。


「あぁ・・・まったく何やってるのよあの娘は・・・。あんたが何か問題起こすと監督責任取らされるのは私なのにあぁ・・・」


ぶつぶつと―――後悔と自身の身に降りかかる処罰についてぶつぶつと繰り返す文。とりあえず声を掛けようかと陸佐が屋根の上に上がろうとした時、突然文が勢いよく立ち上がり握り拳を震わせながら叫ぶ。


「椛のばかあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」










「今なんか聞こえたような・・・。」

「気のせいじゃない?向こうの山のやまびこが聞こえてくる時だってあるし。」

「それもそうね。」












「こうなったら・・・実力で排除ぉぉおぉおぉぉおおおおお!!」

「お、落ち着いて落ち着いて!そのカメラ!もしや幻想郷最速と名高い新聞記者の射命丸文さんですよね!?」


何時の間にか扇子を取り出して鎌鼬で陸佐を真っ二つにしようとした文に抱き付くのは後ろのハッチから出てきた優海だった。


「・・・なぜ私の事を?」

「慧音さんから聞いたんです!この幻想郷最速でとても素晴らしい新聞記者がいるって!!」


――――と言うのも実は妖怪の山については出発する前に慧音から指導を受けていたのだ。その中の一つにとある鴉天狗に出会った際の対処法があった。


「この鴉天狗は幻想郷最速を誇るスピードの持ち主だ。コイツは趣味で新聞を書いているのだがコイツの書く新聞はどれもゴシップ記事ばかりで碌な記事は“ない”。」


ひでぇ評価だ。


「何時の間にか写真を取られて記事にされる事もあるので注意だ。だが逆に言えばそこが彼女の弱点なのだよ明智君。」


口調変わってるし明智君って誰だよ。


「とりあえず彼女の新聞をべた褒めし、よいしょよいしょと持ち上げればやっこさんは調子に乗る。その状態で話を着ければ山を登るのも楽になるのだよ明智君。」


明智君しつけぇよ。


で、話を戻すと


「いやぁ、まさかここであの“有名”な射命丸さんに出会えるとは光栄の極みです!!」

「ぜひ一度会ってみたかったんですよいやはや!!」


他の者もここぞとばかりに屋根に上がってきて彼女の事をべた褒めしまくる。ちなみに96式の上部には4つのハッチがあるのでそれぞれ一人ずつ上がって来れる。







「そんなにおだてたって何も出ませんよぉ」

「「「「「(ちょっろ!!)」」」」」


意外とちょろい鴉天狗であった。







「もう少しで山の頂上です!みなさん張り切って行きましょー!!」

「「「「「(ノリノリだなー・・・)」」」」」


鴉もおだてりゃ木に登る。もう褒められまくって木どころか天に召されるくらい嬉しそうな表情(かお)だ。


「(よっぽど嬉しかったんでしょうね)」

「(新聞褒められたのよっぽどだったんでしょうね)」


「らんらんらーん♪」


もう鼻歌歌いながら踊りだしそうなっていうか踊ってるし。グルグル回り出してるし。あ、なんかぶつかったし。


「イテテ・・・うっかりぶつかってしまいました。私ってば―――――。」


文が絶句したのには別にぶつかった際にカメラが壊れたとか服が破けたとかそう言う訳では無く唯たんに知り合いの天狗にぶつかっただけで。














「・・・貴女何をしているの?」


それが偶然散歩中の天魔だっただけの話である。









―――――――――――――


「弁明があるなら今のうちに聞こうか文。」

「ナニモアリマセン」


簡潔に説明しよう!天狗社会の中でもトップに君臨する天魔に見つかった射命丸文は現在妖怪の山にある広場の真ん中で正座をさせられ同胞である天狗達に取り囲まれ必死で弁解と説明をしている文である。

黒髪の、背は鷲子ぐらいだろうか?凛々しい表情の彼女の背中には黒くて大きな翼が生えている。


「(何であたし達まで正座しなきゃいけないんだい・・・。)」

「(私に聞かんでください・・・。)」


ついでに文の後ろに正座させられる幻探課の面々。


「まぁ大方貴女の新聞をべた褒めされて調子に乗せられてうまく場を誤魔化そうとされたんでしょうけど一応掟は掟だからネ?掟は破る為じゃなくて守る為の物だからネ?守れなかった場合被害をこうむるのはドコノダレナノカシラネ?」

「スミマセンデシタ」


散歩を邪魔されて機嫌が悪い天魔様。語尾がカタカナになってます。そして文はもう言葉がF8キー状態になっているんですが・・・。


「とりあえず貴女は後で椛と一緒に部屋に来てネ?それとこちらの不手際とはいえ規則は規則。掟は掟だから早く帰って貰ってネ?」

「そんな!!ここまで来て――――――――――」


優海が抗議の声を口にした途端首筋にひやりと冷たいものが当てられる。


「今日は良い青空ねぇ。真っ青なお空が気持ちいいわぁ・・・。所で紫色を作るには青色に何を足せばいいと思う?」


色々と怖いです天魔様。


「まぁそう言う訳だからさっさと行きなさ「―れが―――だろうなぁ――。」・・・。」


ゆっくりと、途中で割って入ってきた人物の方を見る。そこに居たのは――――


「誰が責任を取るんだろうなぁ〜」








「責任を取るとは・・・どういう事?」

「そりゃー部下の責任は上司の責任だかですからねー。しっかりと責任は取らないと。」

「ふんっ・・・部外者が知ったような口を利くな。さっさと失せなさい。」

「ああ、ありがとうございます。それではみなさん行きましょうか。」


え?と皆が揃って首を傾げる。


「そちらの偉い方から許可が頂けたのでね。早く仕事を済ましてしまいましょう。」

「ちょ、ちょっと待て!いつ私が許可を――――!!?」




「先程『さっさと失せなさい』って言いましたよね?でも『山を下りなさい』とは言ってませんよねぇ?」

「そんな屁理屈がッ――――――」

「では、博打でもしませんか?」

「博打・・・だと?」


突然の提案に皆唖然としている。


「そうです。我々が勝ったら山頂の神社に貢ぎ物を届け里に帰るまで一切合切手を出さない。そちらが勝ったら我々をとっとと山から降ろす。」

「それではこちらの利益が少ないように思えるが?」

「いえいえ大利益ですよ。仮に負けたとしても貴方達天狗は『賭けに負けたから山を通した』ので決して『見張りがサボっていたから山に侵入された』という不名誉を背負わなくて済むのですよ。」

「・・・・・・・・・・・・・。」


ぬけぬけと言う陸佐に対し天魔は疑問をぶつける。


「ならば何故博打なのだ?今この幻想郷に置いては“弾幕ごっこ”という決闘ルールが存在するではないか。」


それに対し陸佐は


「楽しいじゃないですか、博打。偶には弾幕ごっこ以外の勝負も良いなものですよ?」


そこで我慢できなくなったのか一人の白狼天狗が天魔に対し訴える。陸佐のにやけ面が癇に障ったのかその声に含まれている怒気は生半可な者では無い。


「天魔様!このような珍妙奇天烈な人間のいう事を真に受けてはいけません!さっさと斬ってしまえばよいでしょう!!」

「おやぁ?同族の方はすんなりと通してくれましたよぉ?」

「黙れ!!」

「まぁ待てツッキー。」


意外と可愛い名前だった。


「ちなみに博打の内容は?」

「『丁半』などはいかがですか?」

「ふむ、それならばよかろう。」

「天魔様!!」

「まぁよいではないか。確かにコイツのいう事はもっともだ。このままでは天狗の名に泥を塗る事になるが勝っても負けても損は無い。むしろ我々にはほとんど得しかないと言ってもいい。」

「しかしッ!!」

「まぁ丁半は殆ど運試しだ。確率は五分五分。先の見えた勝負よりは良い。」

「では、お受けになると?」

「ああ。」


その声を聞いた陸佐は、クロの中からサイコロとコップを取り出す。

怪しさ倍増のサングラスをかけ、カンカン帽をかぶった彼の姿はさながら昭和の怪しいおじさん。


「でははじめましょう。“丁半どちらでございましょうか?”」




―――――――――――――――――


今回のルールは互いにサイコロの目を当てあう方式にした。その方が賭けになるだろう。どちらかの予想に合わせて永遠に引き分けにするという卑怯な手に乗られても困るという事らしい。まぁ人間らしい小さな心配であるが。


まず初めは私―――天魔の番だ


「丁半どちらでございましょうか?」

「・・・・・・半・・・。」


少し迷って私は答える。


「よろしいですね?」


男―――陸佐が最終確認をしてからコップを開ける。中のサイコロの目は『3』―――半だ。

次は男が当てる番である。


「丁半どちらでございましょうか?」

「・・・丁。」


湯呑みを開けてみると中のサイコロは『6』――――つまり丁である。

そして2順目へと突入して行く。



「・・・丁だ。」

「よろしいですね?」


いちいち面倒な奴だ。そんなに言うなら変えてやろうか。

私が頷いたのを見て男が湯呑みを開けると中の数字は『1』。半だ。


「・・・チッ・・・。」


こんな事なら先程変えて置けば良かった。一寸前に戻って先程の選択を無かった事にしたい。


「それではお願いします。」


男から差し出された湯呑みとサイコロを受け取る。何の事は無い。要は奴が外せばいいのだ。そう自分に言い聞かせて湯呑みの中にサイコロを入れ、振る。




――――――カンッカンッ




サイコロが湯呑みにぶつかる音が響く。別にぶつかる音が大きい訳では無い。唯単に周りが異様に静かなだけである。風も水の音も鳥の鳴き声さえも聞こえない。ある意味不気味な状態だ。

・・・いったいこれはどうした事だ?




―――――カンッ!




そこで私は湯呑みを振るのを止めた。


「丁半どちらでございましょう?」


別にこれは奴の口調をまねただけである。ずばり言ってしまえば挑発だ。

男は口に咥えている煙草の灰を落とすと


『半で』


瞬間私の心臓が音を立て始めた。この男の自信はなんだ?いったい何なんだ?きっぱりと、最初から決めていたような。確信したような顔で言い放つこの男の自信はいったいどこから来ている?

・・・落ち着け私。仮にも天魔と呼ばれている私がこんな人間との賭け事一つで息を荒げてどうする?奴は私が外したからこれを外してもまた次をやればいい。その保証がついているからこそこうして堂々と言ったのではないか。


・・・しかし仮に奴が当てたら私は負けなのだぞ・・・。


確率は2分の1。どちらかが勝ちどちらかが負けるという引き分けのない白黒きっぱりの勝負。


―――これが博打・・・。鍛え上げた自分の実力で勝負する弾幕ごっこと違い、すべてを運という不確定要素に頼るもの・・・―――


私はゆっくりと、ゆっくりと湯呑みを開ける。



――――外れろ・・・外れろッ!!――――


心の中でそう叫ぶ私は緊張と不安でいっぱいだった。



そして出た目の数は『1』



「私の勝ちですね。」


その言葉が私の頭に響いて来た。


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