第42話 酒乱参上
注意。
久々に暴れました。
嗚呼、文章力が欲しい!!
――――――
今永遠亭では、せっせと宴会の準備をしている。宴会と言ってもそこまで人数は居ないからどちらかと言うと食事会の方があっている。
先程二人の友人である人魚のわかさぎ姫は今、薬を飲んで部屋で休んでいるらしい。原因は
「腐りものでも食べたんじゃないかしら?」
らしい。当の本人にその事を聞いてみると顔を青くし目を逸らした。
「さて、用意が出来たわよ。」
「待ってました!」
「あら、珍しく豪勢な食事ね。」
「あ、姫。」
「「「「「「「「「姫????」」」」」」」
その単語に全員が反応し振り返る。そこに居たのは、見事な着物を着た綺麗な黒髪の少女だった。この少女、名を蓬莱山輝夜という。
「あらあら、本日は沢山の客人が来たわね。何かお祭りでもあったのかしら?」
「まぁ、いろいろとありまして。」
「ふぅ〜ん。まぁいいわ。」
そう言うと輝夜は全員の方に向き直って
「初めまして、私はこの永遠亭の主。蓬莱山輝夜と申します。」
「あ、初めまして。私らは人里で探偵稼業をやっている者です。」
「えっと、病気になった友人の付添人です。」
「そう固くならずに。とりあえず料理を頂きましょう。冷めると美味しくないわ。」
そう言われて、全員が席に着く。
永琳が一同を見渡すと、両手を合わせて
「それでは頂きます。」
「「「「「「「「頂きます。」」」」」」」」
―――――――
「ちょ、それ私のから揚げ!!」
「ん?誰だ私のおかずを盗った奴は!?」
「これだけは・・・譲れない・・・。」
「メリー・・・貴女こんな脂っこいもの食べてると太るわよ?私が食べてあげるから・・・その箸を離しなさい・・・。」
「蓮子こそ・・・最近太ったんじゃないの?食べ過ぎは体に良くないわよ・・・?」
何故か楽しい筈の宴会が、いつの間にやら料理の奪い合いへと発展している。落ち着いて食べているのは陸佐と影狼ぐらいである。
ちなみに優海と鷲子、真人、赤蛮奇、鈴仙は全員大皿に乗ったおかずの取り合いをしていおり人の料理を盗んでいるのはてゐである。
永琳と輝夜の二人は、輝夜が嫌いな野菜を永琳に押し付けようとして一悶着。
蓮子とメリーは・・・あ、取っ組み合いに発展してるわ。
「さて、みなさんそろそろお酒はいかがですか?」
輝夜を説得(力で)した永琳が酒を運んでくる。
「お酒♪お酒♪」
笑顔で尻尾を振りながらいう影狼に、全員が一瞬驚く。だってさっきまでの影狼とのギャップが凄いんだもの。
「はいどうぞ。」
「ありがとうございます。」
永琳が順番に酒を配って行く。
「はい鷲子さん。」
「お、ありが(ゴスッ!!)ヘブシッ!?」
酒を受け取ろうとしていた鷲子に突然チョップが降り注ぐ。
「な、なにすんだよ陸佐!?」
「すいません。この人にお酒はやらないでください。」
「あらそうなの?」
「いや、飲みたいんだけど・・・。」
「ダメです。」
「え、でも・・・。」
「ダメです。」
「い、一杯くらいは?」
「ダメです。」
鷲子の願いはいつもより声のトーンが低くなった陸佐によりすっぱりと斬られた。
こうして何故か鷲子は酒を飲ませて貰えないまま宴会は続くのであった。
――――――
皆が酒を飲みほろ酔い状態になったある時
「あ、厠借りてもいいですか?」
「ええ、そこの廊下をまっすぐ行って右に曲がった突き当りです。」
「ありがとうございます。」
そう言ってトイレに立った陸佐が部屋を出て行ったのと同時に鷲子の目が光る。
「あ、しゅうこしゃんダメですよ〜おしゃけ飲んじゃ。」
若干呂律の回っていない蓮子。だが鷲子は
「いいのいいの。一杯くらいならばれないって。」
そう言って盃に持った酒を一気に飲む。
「プハァ―・・・あぁ〜喉に染みる〜。」
「彼女結構親父臭いわね。」
「黙っていれば綺麗なんですけどねぇ―。」
何時の間にか隣同士になっていた輝夜とメリーは、そのまま二人揃って酒を飲んでいる。陸佐が居ない今、止める者が居ない状態で鷲子は酒を飲み続けるのだった。
んで、陸佐はというと厠から出て部屋へ向かって歩いている。
月明かりに照らされた夜空は星が満点に輝いていた。
――外の世界じゃあこんな星空は見られないよな――
後でみんな揃って写真でも取ってみようか?そんな事を考えながら歩いている内に、部屋の前に着いた。中からは賑やかな声が聞こえてくる。
「只今もどりまし・・・た・・・。」
そこで一旦動きが固まる。戸を開けたそこには、
「おぉ〜りくしゃおかえり〜。ほれ〜あんひゃもいっはいのみなはいよ〜。」
「鷲子さ?!・・ちょ・・そこはッツ!・・・だめぇぇぇ////」
「ほれほれほこがいひんじゃろ〜?」
「ひゃ!?///・・・あ・・・うんッ!!////」
べろんべろんになって何を言っているか分からない鷲子。そしてその鷲子にホールドされているのは優海と鈴仙の二名である。3人とも服がはだけており鷲子の腕が二人の下半身に伸びており、その腕が動く度に2人は声を上げ身をくねらせる。
周りを見ると、影狼、赤蛮奇、蓮子、メリー、てゐが3人同様服が乱れた状態で倒れている。
何をされたかは、ご想像にお任せしよう。
「あ・・・酒・・・飲ませたんですか?」
「いや、どうやら陸佐さんがトイレに行った隙に飲んだらしくて。」
「あちゃー・・・。」
部屋の隅っこの方に避難していた真人と永琳と輝夜が寄ってくる。
「こ、これは一体・・・?」
「・・・あの人、酒癖悪いんですよ・・・。とてつもなく。」
「酒癖って・・・。」
この酒癖の悪さが、鷲子に酒を飲ませてはいけない理由である。
「世の中にはいるもんなんですね。こういう人が。」
「いや、言ってる場合じゃないでしょう!早く二人を助け出さないと!!」
「あ、不用意に近づいたら―――」
陸佐の忠告を聞く前に、鷲子の魔の手に落ちかけている二人を救出しようとする真人。だが、
「ふみゃああっつ!」
「ぐぼつ!?」
近付いた瞬間鷲子の手が横薙ぎに走り、真人を直撃した。同時に何かが折れてはいけない物が折れる音が3人の耳に聞こえてくる。
被弾した真人はそのまま1m位吹っ飛ばされアバラを押さえて蹲っていた。
「だからダメだって・・・。」
「もう・・・ちょっと・・・早く・・言って・・・。」
ギリギリ話せるらしく命に別状は無いらしい。
「ど、どうするの?コレ?」
輝夜の若干震えた声に陸佐は
「酔いつぶれるまで待つしかありません。」
きっぱりと言い切った。
「睡眠薬入りの酒があればいいんですけど?ありますか?」
「一応睡眠薬はあるわ。」
「さすがに私達まで犠牲になりたくは無いので、さっさと眠って貰いましょう。」
「取ってくるわ。ついでに骨折を治す薬も必要ね。」
そう言って走って薬を取りに行く永琳。
「さて・・・と。」
永琳を見送った陸佐は、手近にあった酒瓶を持つと鷲子の方へと歩いて行く。
「どうですか鷲子さん?もう一杯如何です?」
「お、ひがひくねぇ〜りくしゃ。」
「ささ、どうぞどうぞ。」
二人の下半身に突っ込んでいた手を開放し、酒を飲み始める鷲子。
「ぷふぁ〜・・・やっはり幻想郷のしゃけはひとあひじがふわ。」
「そうでしょそうでしょ。ささ、もう一杯。」
そう言って鷲子に酒を進める陸佐。気取られない様に顔は笑顔である。だが、目は笑っていない。というか笑える状況では無い。
「御二人とも、此方のお酒も美味しいですわよ。」
何杯か飲ませた時に、ちょうど永琳が入ってきた。実は、陸佐が鷲子に酒を飲ませていたのは、酔いつぶれる時間をすこしでも早める為と、こうして永琳が睡眠薬入りの酒を持って来やすくするためである。
そうとは知らずに永琳の勧めた睡眠薬入りの酒をぐいぐい飲む鷲子。丁度飲み干した瞬間に、全身から力が抜けて行き盃を床に落とす。
「ふわあぁああぁぁぁ・・・。」
そう大きな欠伸をすると、酒乱鷲子はぱたりと床に倒れて寝息をたてはじめた。
「・・・すごい効き目ですね。」
「即効性のを入れておいたわ。」
二人の目の前には、先程までとんでもない酒乱だった姿は無く唯の鷲子の寝顔があるばかりであった。
こうして永遠亭の小さな異変は幕を閉じたのであった。




