第４１話 事の発端
今回は序章です。次が本番です。
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「・・・う・・・うあ？」
「あ、起きた。」
布団に寝かされていた鷲子がうめき声をあげて起きる。
傍にいたのはメリーだ。
「ここ・・・は・・・。」
見慣れない和室の部屋。そこに鷲子は寝かされていた。
「永遠亭っていうの。さっきの人達が運んでくれたんです。」
「（さっきの・・・あぁ、あの赤と青の服の。）」
そう言って先程あった女性を思い出す。かなり目立つ服装をしていたので一発で出てきた。
「待っててくださいね。今呼んできますから。」
そう言ってメリーが立ち上がろうとした時。狙っていたかのように永琳が入ってきた。
「具合はどうかしら？海鳥鷲子さん？」
「おかげさまでこの通りさ。」
上半身を起こして右腕を動かして見せる鷲子。分かりやすく言うと元気ですという意味である。その様子を見て安心したような表情を見せる永琳。
「そう。ならもう大丈夫そうね。大した怪我はしていないし。」
「まぁね。所で、他のはどうした？あたしと一緒のが数人いたはずなんだけど・・・。」
「彼らなら寝ているわ。さっき一人起きたんだけど打ち所が悪かったんでしょうね、眼鏡割れてたわ。」
鷲子の頭に思い浮かぶ顔。っていうか眼鏡を掛けていた面子なんて一人しか知らない。
「あぁ・・・眼鏡割れたんだ・・・。」
可哀想に・・・と同情する鷲子。ちなみに当の本人は現在、割れた眼鏡を前に悲しみに暮れていた。
「真人の方は未だ目が覚めないわ。吹き飛ばされた時に頭でも打ったんでしょう、かなり大きな“こぶ”が出来てたわ。」
「そっちもそっちで可哀想だな。」
「まぁ命に別状は無いからいいとしましょう。他の人達も怪我は無いし。」
「そうか・・・。」
ホッと胸をなでおろす鷲子。全員無事で何よりだ。とそこである人物の顔が浮かんでくる。
「そう言えば、あの赤マントのガキ共はどうした？」
もう口がヤクザ並みに悪いです鷲子さん。という目でメリーは見ていた。
「彼女達なら今捕まえて部屋に閉じ込めてあるわ。」
ここでさらりと監禁宣言。それを聞いた鷲子は、若干目を輝かせながら
「それじゃ、仕返しをしないとな・・・。」
そう言って布団から起き上がるのだった。
「うぅ・・・ちくしょうぅ〜・・・」
一方で、永遠亭の一室に監禁されている赤蛮奇と今泉影狼。
赤蛮奇は先程から悔しそうに壁を睨みつけ、影狼は大人しく座っていた。
「まぁ、ここから薬やら何やら盗んで行った訳だから当然と言えば当然よね。」
「そっちじゃない！あの弾幕ごっこの事だ！！」
壁から視線を外して今度は影狼を睨みつける。赤蛮奇はここに閉じ込められたのが悔しくて怒っているのではない。まぁ閉じ込められたことも悔しいと言えば悔しいが、それよりもあの弾幕ごっこが赤蛮奇を苛立たせる原因だった。
空も飛べないような唯の人間に負けた。その事実を再認識するたびに怒りが湧いてくる。
一方の影狼の方はというと涼しげな表情で座っているのみである。
「ちくしょうッ！」
ついにイライラが頂点に達して襖を殴りつけようとする赤蛮奇。だが、殴りつけようとしていた襖が突如開いて拳は空振る。空ぶった拳にバランスを取られた赤蛮奇はそのまま倒れてしまった。
「イテテ・・・誰よいきなり襖開けるの・・・は」
考えられる面子なんて限られてるじゃないですか。
「ハロー。」
そこにいたのは腕を組んで口を釣り上げて赤蛮奇たちを睨めつける鷲子だった。
永遠亭の一室。和の香りが漂うこの部屋で、人間妖怪約数名が集まっていた。今回の事件の関係者たちだ。永琳、鈴仙、影狼、赤蛮奇、優海、鷲子、メリー、蓮子、真人、陸佐。この者達が今部屋に居る。ちなみにてゐはあの後どこかへ連れて行かれたらしく姿が見えない。
「で、貴女達。どういう訳で薬を盗んだりしたのかしら？」
「何の事かしら？」
「とぼけても無駄。この毛は貴女のでしょう？」
そう言って永琳が懐から例の毛を取り出す。色が一緒なその毛を見た影狼はふっと笑うと
「見つかっちゃあしょうがないか・・・。」
「影狼！」
「その通り、ここの薬を盗んだのは私よ。」
「どうして？」
「実は―――・・・」
影狼と赤蛮奇には友人がいた。可愛い人魚の妖怪で名をわかさぎ姫と言う。所が彼女が１週間ほど前から妙な熱を出して倒れてしまった。
二人は何とかして熱を下げようとあらゆる手を尽くした。美味しい料理を作ったり薬を持ってきて飲ませたりもして見た。だが、結果は芳しくない。
「未だにその娘は熱でうなされてるわ。助けたいけどどうしようも無いのよ。」
「はぁ・・・。」
そこまで聞いた永琳は溜め息を吐く。
「そういう事ならここに運んで来ればいいじゃないのよ。どうして薬を盗んだりと面倒な事を・・・。」
「だって・・・。」
今度は赤蛮奇が答える。
「永遠亭に病人を連れて行ったら、白髪の年増が妙な薬の実験台にするからって兎の妖怪に聞かされて――」
「ごめんなさいちょっと席を外すわね」
そう言うと永琳は何所から取り出したのか、緑と赤と黄色のマーブル状の液体の入った注射器を取り出して部屋を出て行った。
―――すこしして部屋の外から女の子の悲鳴と思われる声が聞こえてきた。
「ま、要は病気にかかった友人を助ける為に薬や食料を盗んだ。と言った所ですね。」
「そうよ。」
「事情は分かりました。後で・・・さっきの人に治療してもらいましょう。」
名前覚えてない陸佐。
「いいんですか？」
「だってさっき言ってたじゃないですか？ねぇ兎さん。」
「鈴仙です。」
「そういう事よ。分かったらとっとと病人を連れてきなさい。」
何時の間にやら戻って来ていた永琳。先程の悲鳴の事もあって全員ビビッている。
「その代り、迷惑かけた分の御詫びの品位欲しいわね。」
「そ、それくらいは用意出来るけど・・・。」
「なら、決まりね。」
「今夜は宴会よ。」
