プロローグ
-3月25日 16時44分-
まだ冬の名残もある為か、日が沈むのが早く、俺の少しボロい新居は窓から差すオレンジ色の夕日の色に染まっていた。
・・・それだけならまだ良かった、まだ。
「・・・・・・・・」
俺の目の前には見知らぬ人が佇んでいた。しかも背中を向けて。
少し袖が長いフードつきのパーカー、そして膝より少し高めのスカート、顔はフード+後ろを向いているから分からないが服装的特徴で見れば女子なんだろう。
しかし、この街に引っ越してきたばかりの俺に女子の知り合いなんて大家のみかげさんか隣の部屋の仲内さんだけで・・・あれ、多くね?
『え、ちょ、どうゆう事なんだ?!鍵は掛けて行った筈だし、隣の仲内さんは独身って言ってたし、大家さんは・・・』
考えれば考える程、訳がわからなくなる。正にパニックスパイラル。
暖房も入れていないのに全身に嫌な汗が纏うのがハッキリと分かる。
『入りたての住居に空き巣が入るわけないし・・・あ』
一つ心当たりが思考の海から見つかった。
『そういえば、仲内さんがたまに物音や気配がするって・・・ま、まさか』
「ゆ、幽っっ!??」
はっきりと言う前に目の前居た幽霊がこちらを向いていた。
しかも逆光とフード、そして身長の差のせいで顔は見えない、と言うか怖くて凝視できなかった。
昔から物事に集中し始めると周りが見えなくなる自分を今日ほど呪った事は無いだろう、多分。
『考えてないで、外に出れば良かった!どう見てもタゲられました本当にアリガ(ry』
幸いにも俺の立ち位置はドアから数歩程度、振り向けば脱出可能!
と考えた矢先に
幽霊が『走り出してきた』。一直線に俺に向かって
「うおっ!?うわぁああああああああっっ!!??」
突然の出来事に腰が引け、動けなくなり、仕舞にはパニックを起こして思わず叫んだ。
「く、来るなぁぁあ!!」
幽霊はもう目の前、何とか追い払おうと右手に持っていた帰りに買った今後一週間の非常食等が入ったスーパーの袋を投げるが
「っ!」
あっさりと回避されてしまった。幽霊とはこんなにもすばしっこい者なのかと知識の更新を終了した所で
「ふごっ!!!」
腹部に鈍い痛みを感じた。どうやら幽霊はそのままの勢いで俺に突進してきたらしい。
更に腰が引けてたのもあって、俺はそのまま転倒→頭部強打。
ざんねん!わたしのぼうけんはここでおわってしまった!