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鏡のお姫様にハロー

少し長いです。

部屋に入る。入ってすぐの全身鏡で俺を見る。



見れねぇ!!



なんだよこれ、鏡に映るのは自分の全身ではなく

知らない女の俯く姿。何?こんな明るいうちからアレか?

成仏できなかった…とか、この地に住む…とかいう?

さすがに、恨みを与えるほどギスギスした人間関係を

俺を始め家族は送ってないだろうから、生霊的なものじゃないだろうけど。


女は、俯いたまま鏡の前に立ち尽くす。


髪は、真っ黒で俯いて正確には分からないけど腰辺りまでありそうだ。

体つきから若いくらいしか解らない。しかし、細いなぁ。

真っ黒に髪に、細すぎる体、パジャマを着て無言で立ち尽くすのマジ怖ぇぇ。



『鏡よ、鏡よ、鏡さん。世界で一番美しいのは、だーれ』




怖ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ。


消え入りそうなか細い声で、鏡(=俺!?)に聞いてきた。

この台詞、アレだよな。

魔女がある国の王妃になって地下で魔法の鏡に聞いたアレだよな。

俺、魔法の鏡かよ。可愛い真面目な姫を向かえる王子がよかった。

…って何言ってんだ、俺。とりあえず言わないと割られるんだよな、鏡。



「それは、今俯いているお嬢様です」



とりあえず、アレだ。

女性はすべて“お嬢さん”って言っとけとお昼の帝王司会者が言ってたから

とりあえず、お嬢さんとかにしといた。そして、目の前の魔女が顔をあげた。



魔女じゃなくて、可愛いお姫様でした。



って、何言ってんだよ!!

顔をあげたら、瞳の大きいまつげ長い多分俺より若い女の子。

俺に話しかけられたのがそんなに意外だったのか、縮こまり瞳をうるつかせて

怯え慌てだした。何その犯罪的な可愛さ。


『ど、どどどどうして貴方が映っているんですか?』


「知らない。お前こそ何で、映っているんだ」


『知らないわ。ここは私の部屋よ。

異空間につながっているとか、何とか不思議道具だったのこれ!?』


「あっはっはっは!!お前面白いヤツっ」


『知らない!!もぅ』


「あ、待って!!」


あまりに可愛い妄想をご披露されたから、爆笑したら

真っ黒にフェードアウトしたあと、自分の全身が映った。


なんだったんだろう。


とりあえず、日本顔で日本語話していたから日本人なのだろう。

あれから、何日話しかけても女の子は出てこなかった。

弟にその現場を目撃され、夕飯のネタにされた時は久々格闘喧嘩した。


なんだ?彼女いないからって痛すぎる妄想に入ったのか?


悶々しながら毎日同じことを繰り返す。

学校行ってバカ騒ぎして家に帰って宿題してゲーム。

友達が家に来たがったけど、いつあの子が現れるか分からないから呼ばなかった。


それから、半月…その日も、塾で体力をそがれ帰ってきた。


そして、ナルっぽく鏡を見るのはもう癖…に、



『ハローハロー、応答願います』



女の子は、頭に冷却シートを貼りベッドに横になって目を閉じて呟いていた。

前あった時より、更にやせた気がする。具合悪そうだ。

夢でも見ているのだろうか。台詞からすると、宇宙飛行士になった夢だろうか。


儚げな彼女の可愛い妄想に、そがれた体力が戻ってきたようだ。心が熱い。



『はろーはろー、おうとうねがいます』



息も絶え絶えの、苦しそうな彼女から出る返答を求める台詞。

その言葉は、寂しさと悲しさと切なさと、ちょっとした失望と。

聞いているこっちが悲しくなる声色で呟き続ける。



『はろー…は、ろー……………おうとう、して……』



藁をもすがる切実な声と、閉じられた瞳から流れる一筋の雫が俺の心をつかむ。

寝言に答えちゃいけないとか、そんな事かまうもんか!!



「ハローハロー、こちら俺ん家。そちらの体調はいかがですか?」



それまで、寝ているのも辛そうな彼女がガバッと音がしそうなほど

勢いよく起き上がる。おいおい、大丈夫かよ。顔を見てまたほっこりする俺の心。


「ハローハロー、そんなに勢いよく起き上がって大丈夫ですか?どうぞー」


『だ……大丈夫っ………ですよ。ど、ぞ……ずっびっ』


嗚咽を漏らすほど、しゃくりあげるほど声をあげて泣き始めた。

まだ、こちらは寒い。向こうは知らないけど。

寒そうな格好なので、上着を着せたかったが鏡越しなのが悔しい。

泣きやんでから、俺らは色々話した。


彼女は、2つ下のもうすぐ15歳。一人っ子。

体が弱く学校を休みがちだと言うが、学校自体に何かありそうな口ぶりだった。

普段は、家で寝てばかり(それが趣味だと言う彼女がなんか悲しそうだった)

らしいので、話をしようと思ったけど眉毛が辛そうにしわを寄せ

体を支える腕もプルプルしてきたので、この辺で終わらせた。


それからというもの、彼女の方から扉を開けないと

君には会えないから、君の体調のいい時に話しかけてくれ。

と言ったら週に1-2度1時間ほどしゃべるようになった。

15歳の癖に気を使ってくれるのか、風呂入って一段落したときとか

宿題で煮詰まった時とか、そんな時に『ハローハロー』と声をかけてくれた。


彼女と何を話したらいいか迷っていたら、

日常の話が聞きたいと言った。知らない人間の知らない話など

つまらないと思ったけど、彼女は小説を読んでいるみたいで面白いと

笑ったので話した。そんなもんかな。


とりあえず、ダチ1号が男女の教師が良い仲なのを冷やかしていたら

応援する女子生徒から猛攻撃を受けたとか、

メイド喫茶にしようと男共が提案したら、男装姿の執事喫茶と

女装姿のメイド喫茶のクラス対抗戦になってカオス過ぎる光景になったとか

学校のマドンナ生徒が、堅物教師と結ばれた時

男共のむせび泣く声と、女子生徒が夢見心地の歓声と悔しさによる

悲鳴のような泣き声で近所から苦情が殺到して大変な卒業式だったとか

終始そんなアホのような話だったけど彼女は花開くようにふわりと笑った。


それから、何度か話をする機会があったあと、それは起こった。


最近、ダチを連れてくる事があったけどその中の一人が妹と同行してきた。

鏡の中の少女と同い年の女の子。

快活そうでイマドキのノリ主義で流行と男の好みに煩そうな女の子だった。


みんなで、コンビニに菓子を買いに行く事になった。


「先輩」


てっきり、俺が最後かと思ったけど妹が残されたらしい。

振り返ると、鼻につく香水と長いまつ毛、そして…柔らかい感触。

何をされたのかすぐに分かったけど、視界の端が揺れた気がした。



大きく目を見開きいつも以上に真っ白な顔をした彼女。



「あ」


気づいた時には、俺と後輩しか映らなかった。

しまった…誤解された。深い絶望の表情からそれはすぐに分かった。

しかし、こちらから話しかけられない以上どうしようもなかった。



誤解されたまま、嫌われてしまった。



ダチ妹には、異性として見られないと断った。

あれから何度鏡に話しかけても、張り付く様に見張っても彼女からの応答はなかった。


それから、3年。

大学2年になった。それなりに彼女もできたけど鏡の少女のような

温かい感情もなければ、ときめく想いもなく自然消滅的な終わり方を繰り返した。


それから、ある高校の文化祭に行った。


ダチの新米彼女の通う高校で、一人じゃ心細いからついて来て…とか何処の女だ!

ダチ(無論男)の気持ち悪い誘いを渋々受け入れて、車で1時間近くの

高校に行くと、外部との交流盛んな高校なのか老若男女入り乱れていた。


しかも、ダチは新米彼女と消えるしよ!


なんなんだよ。一人で回れってか。アイツ今晩奢らす。

立ち止まるのもなんだから、校内全部回る事にした。


そこで、彼女を見かけた。


3年経ち、相変らず線が細いけど少しふっくらした感じだった。

そして、少女から女に変わる途中のアンバランスな魅力をかもし出していた。

そこにいつもの儚げな雰囲気をまとい

周りの生徒の中で一番艶っぽく愛らしいかもしれない。

周りのヤローどもも虎視眈々と狙っている。チッ…お前ら


「んなとこにいたのかよ。探したんだぞ。あ、じゃ頑張ってネー」


「ば、離せ!!」


「俺は、これから用事あるんだよ。帰るぞー!」


せっかく彼女に会えたのに!!

しかし、体育会系の主将を務めたやつに体力でかなうはずもなく、

あの子のクラスの前で新米彼女と別れたあと、引きずるように追い出された。


幸いにも、鏡の少女と新米彼女は同じクラスだったみたいなので

新米彼女から名前と住所を聞きだして翌日そこに向かった。

平日(彼女は代休、俺も授業なし)だから親はいないだろう。

いや、変なことしねぇよ!?


ブザーを鳴らすと、足音が聞こえた。



「ハローハロー、どちらさまですかどうぞー。っと…はぃ」



あのときより元気のない声が聞こえた。嬉しい、生の声だ…ドアが開く




「ハローハロー、こちら女の子を捜し続けて旅をしている男です。どうぞー」




3年ぶりに間近で見る大きな瞳は、俺の目と心を捉えて話さなかった。

大粒の涙を流す綺麗な女の子を腕に捕らえて、想いを呟いた。







「やっと…逢えた」

男性視点です。


彼は、普通の少年でした。特に問題もなく友達とバカ騒ぎをして

家に帰ればむさくるしい(けど見目麗しい)兄弟となんでもない雑談と、ゲームバトル。


そんな中に現れた、儚げな少女との非日常会話。


なんって、脳内妄想炸裂の話をしてみました。



お付き合いくださりありがとうございました。番外編書けたらいいなぁ。

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