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第一部 一章 終

「…………」


 奴隷競売会。

 政府公認の非道徳的パーティーが目の前で行われている。

 目深にフードを被って、顔を隠した少年がその光景を忌々しそうに見つめていた。 

 煤のついた汚い頬に、小柄で痩せた体つき。

 目の奥の光だけが爛々と輝いており、異様な殺気を放っている。

 首輪に付けられたタグは、NO230。

 これから売られる奴隷の一人だ。

 

「レアー。準備はいいか」


 彼の隣。中年の白髪混じりの男が、少年に尋ねた。

 こちらは反対に筋骨隆々で、元空賊と言われても信じてしまいそうなくらいの威容だった。

 

「……こっちはいつでもいける。後は時間になるのを待つだけだ」


 レアー。そう呼ばれた少年が初めて喋った。

 妙に堂々とした声だ。これから売られる奴隷とは思えないほど。

 隣の男性も同じく、油断無くオークション会場を眺めている。その視線は獲物を探す鷹のような、鋭いものであった。


「それにしても、一瞬肝を冷やしたぞ。『漆黒の狩人』に殺気を送るなど、なんて馬鹿な真似を」


「……ごめんヨアヒム。我慢できなくって」


「まぁ、あいつを憎むお前の気持ちはよく分かる。まさかこの場面で相対するとは思わなかったからな」  

 

「半分人間のくせに、神に味方する、我ら人類解放軍の倒すべき敵の一人だ」


 レアーは奥歯を噛み締めた。

 

 ―――『漆黒の狩人』

 

 人類解放軍の地上部隊が次々と、クロノスという半神半人に壊滅させられている。

 一年前からこのニュースは、地上を飛び交っていた。

 圧倒的な破壊力と、空間支配能力を持つ神の兵器『パリス』に対して、人は無力なままでいなかった。

 人類解放軍という組織を作り、近代兵器を製造して、これまでずっと劣勢ながら戦ってこれたのだ。

 しかし、クロノスが地上制圧部隊に選ばれてから、連戦連敗。

 彼の繰るアドニスという機体と一緒に、クロノスの名は漆黒の狩人として恐れられるようになったのだ。 


「ティターンもティターンだ。不甲斐ない。あいつの作戦のせいでわたしの仲間は皆……」


「よせ。隊長は精一杯やっていらっしゃる。漆黒の狩人のことは今は忘れろ。この作戦に今後の人類の未来が掛かっているのだから」


「……未来、か。ここで神族をたくさん殺したら、本当に幸せな未来が待っているのかな」 


「なんだ。弱気になっているのか。ふんっ、これだから女は……」


 その瞬間。微細な光が影から光った。

 男の背中がまっすぐ伸びる。この瞬間、濃密な殺気が空間に一瞬だけ漏れた。 


「それ以上言ったら殺すわ。わかる、ヨアヒム?」


 少年、改め、少女は指の隙間から出した針を、中年の脇腹に突きつけた。

 とても薄い透明の針だ。しかし先から紫色の汁が垂れている。

 強力な毒針だった。


「っ……。わかった。侮辱する気はなかった」


 ヨアヒムの声が上ずる。生意気な小娘にしてやられ、少し口調が荒かった。

 しかし、ここまで完璧に不意を突かれたらぐぅの音も出なかったようだ。

 うなだれるようにして、首を縦に振る。


「次はないから。覚えておいて」


「くはは。女と組まされると聞いて不安だったが、その分じゃ随分と手馴れてるみたいだな」


 一転、破顔する老年の戦士。ルアーのことを多少認めたようだった。

 随分とサバサバした性格のようで、もう先ほどのことは忘れたように振舞っていた。


「これでも解放軍の戦士よ。修羅場はくぐってる」


 ルアーは唇をへに曲げた。

 女と舐められるのは、我慢ならない。

 結局のところ、負けず嫌いなのだ。


「そのようだ。……あと十分か。そろそろ準備を」


「ええ。だけど、―――この爆弾を裏通りに仕掛ければいいだけなんて、少し物足りない気分だわ。あんな狂信者達に大事な仕事を任せるなんて」


「我らは囮だ。ただ命令だけ果たせばいい」


 レアーは服の中から、春本を取り出した。

 そう。帝国兵から取り上げられかけた、あのエロ本である。

 表紙にはあられもない女性の姿が描かれており、それを見た彼女の頬が少し赤くなる。 


「まったく。どうしてこんな本にカモフラージュするのよ」


「馬鹿馬鹿しいだろう。まさかエロ本が爆弾などと誰も思わないからな」


「いちいち説明しないで。そんなことくらい解ってるわ」


「そうか。そろそろだ。行け」


 レアーの背をヨアヒムが押す。

 ちょうどその時だった。奴隷競売会の司会者が、「NO230、壇上へ! 見目は悪いですが、成長期の身軽そうな少年です。ご自宅の煙突掃除にでもいかがですか」と、彼女を競りにかけ始めたのだ。


「…………」


 レアーは不機嫌そうな顔を隠そうともせず、フードは脱がずに壇上へ上がっていった。

 その手は服の中。本の中、起爆スイッチを手動でオンにし、司会者の方へ近づいていく。

 司会者は目で「さっさと来い」と苛立ちを見せていた。ルアーはせいぜい怯えた少年の振りをして、相手に近づいていく。

 会場からルアーに向かって野卑な声が多く飛んでいた。筆記するまでもない下品な言葉だ。主に婦人の声が多かった。

 少年好きのマダムだろうか。見窄らしくとも、整った顔立ちで中性的な魅力のあるルアーだ。磨けば光るということで、今日一番の歓声が湧いた。

 カツカツカツ……。

 ルアーの靴が、木の床をゆっくりと踏みしめていく。

 これからこの会場にいる全ての者に不幸を与える。彼女はゆっくりとゆっくりと会場中を見渡した。

 壇上には大きな机が一つ置かれ、たくさんの奴隷に関する資料が置かれている。

 その机の中に、爆弾を入れようというのだ。

  

 チクタクチクタク。


 腹の中で、音が聞こえ始めた。

 思わず背筋から冷や汗が流れる。 

 レアーは慎重に、サラシの上で抱きしめていたエロ本をそっと、机の中に入れる。


 あと10分でこれは爆発するのだ。


 しかし、これは単なる狼煙にすぎない。

 

 さらなるテロの連鎖を生むための。


 そのための仕掛け。


(覚悟しろ。糞神族)


 皇族の住む天球城にも、人類解放軍の仲間が潜んでいる。

 あとは結果を待つだけだった。









 メサルティム帝国は三つの爆弾を抱えている。

 デイリーキャッスル。帝国で一番大きな新聞社が神歴1999年に発行したコラムに、そんな言葉が印字されていた。

 ―――爆弾。

 栄華を極める帝国に相応しくない剣呑な単語だ。

 しかも三つもあると言う。

 

 まず一つが、元老院議員の汚職と国民の政治不信。

 帝国には明確な三権分立はなされていないものの、建前として『元老院』『皇帝』『教会』といった権力の分割は行われている。

 主に立法、及び皇帝の専制を監視する元老院。

 全て上級神格を持つ貴族で構成されている上院、そして下級神族、その他属国の王などは下院に配されている。

 この上下両院はもちろん上院の方が力関係が上で、下院は別にあってもなくても良い便宜上の機関となっていた。

 その上院で昨今、賄賂や汚職にスキャンダル。果ては国の内部情報を他国に売る輩まで現れて、その退廃ぶりは国民の目に余る事態になってきた。

 基本報道の自由が許されているメサルティムでは、全てではないが、議員の悪い情報が国中に出回るのも素早かった。

 今では純真至上主義者と、リベラル派での争いも始まり、右派左派乱れての混乱ばかりがメディアで流されている。


 次に人類解放軍。

 神暦2010年頃から活発に動き始めたテロリストの集団である。

 その活動としては、13年・デロス植民地事件、20年・ガイルーン爆破事件、23年・ウルク紛争、28年・帝都メルニシティ制圧事件、そして33年・ラモ爆破事件。

 一番最後のラモ爆破は、諸兄にとってもまだ記憶に新しい事件だろう。

 さてこのエルミラの解放を訴えて悪逆の限りを尽くす凶悪集団だが、帝国情報局が掴んだ情報によると、近々帝都に大規模な侵攻を予定しているとのことだ。

 なんとも恐ろしい話である。帝国軍にはますますの防衛力の強化を要請したい。


 最後に皇帝の病。

 メサルティム神聖帝国現皇帝アレス七世のご病気が悪化しているらしい。

 ご存知のとおり神族は大量の魔素を、肺から全身に送ることによって驚異的な身体能力を得ている。

 陛下はその肺の機能に問題を抱えておられるそうだ。

 もってあと数年。主治医の話では、回復はほぼ絶望的とのことだ。

 そこで問題となってくるのが、後継者のことだ。まだ陛下がご存命なのに、こんな話をするのはなんだが、国民としては気がかりであろう。

 まず第一行為継承者のフィオガ様、そして第二位のルキナ様と二人のご兄妹だ。

 お二方とも素晴らしい才能に恵まれた希望の星なのだが、太陽がこの世に並び立つことはできまい。

 必ずどちらかが月にならねばならんのだ。

 どちらが太陽になるのか?

 それを巡って、また右派と左派の元老院議員が諍いを起こしているらしい。

 噂では右派の議員の代表とも言えるブランディー家の嫡男が、左派の代表であるキール議員の自宅に火を放ったそうだ。

 このまま帝国が二つに割れ、内乱になどならねばいいのだが。


 この三つの国難、記者としては速やかに排除してもらいたいと願っている。




 三つの国難。その三つのうち一つが、正に現実になろうとしていた。

 天球城の遥か頂き、雲を突き破って天へと昇るエレベーターの55階。

 天守閣とも呼ぶべき黄金色の尖塔の中で、一人の老人の命の灯火が今にも消えようとしていた。

 

「覚えておるか、ルキナ。お前が幼い頃、母が弾き聞かせてくれたバイオリンの曲を。紫陽花の時雨。なんとも物悲しく悲哀に溢れた、栄華の欠片もない皇族にふさわしくない曲だった。しかし、わしの耳にはひどく切なく響き、胸を強く打った」


 燭台の炎に顔を薄紅色に染められ、痩せた頬を震わせる老人。

 メサルティム神聖帝国皇帝アレス七世が、遅く生まれた自らの娘にとつとつと昔語りを聞かせていた。


「覚えております。わたしがまだ四歳の頃でしたね。母様は歌もうまく、よく寝物語に歌を歌ってくれました」


「うむ。そうであったな」


 ルキナは父を尊敬していた。

 王宮という暗黒と栄華の入り交じったカオスの世界で、アレスはよく頑張っていた。皇帝などお飾りと影で馬鹿にする元老院議員が最近数多いる中、父は右派左派両方に睨みをきかせ、けっして他人に媚びたりしなかった。全てにおいて中庸。人生を中立の立場で全うしたのだ。

 帝国は絶対王政の時代を離れ、じわじわと貴族政治へと移行している。

 全ては皇帝が病がちになってからのことだった。行政権のほとんどを皇帝が握っているとはいえ、議員の三分の二が反対すれば皇帝の決定を覆せる仕組みとなっている。そのためたびたび貴族側とアレスで諍いが発生することがあった。

 ここ数十年の間に、元老院の力が急速に強まっている。

 ルキナは側で議会を見て、嫌というほど現実を思い知っていたのだ。

   

「そう言えば―――」


 喉から搾り出すように、アレスが言葉を紡ぐ。


(喋るのももう苦しいでしょうに……)


 ルキナは心の中で父を案じたが、口には出さなかった。

 もはや父の余命はいくばくもない。このまま後は好きにさせてやりたかった。


「中庭に紫陽花は咲いておるか? 白連草は? 天球城の花壇はわしが命令して作らせたのだ。白と紫のコントラストの美しい、正に帝国の繁栄そのもののようだった」


「紫陽花はまだ先でしょう。ですが白連草はもう咲きそろっておりますよ。わたしはあの真っ白で透明な花弁が冬になると、貿易風に吹かれまるで舞い散るように空へと昇っていく様が好きです」


「うむ。冬の夜会ではあの花を見るためだけに、大勢の貴族らが城に集まったものよ」


 アレスにはもう現実が見えていないのだろうか。

 死を前にして、心がついに折れたのか。それとも、身体を壊して、精神も病んだのか。

 皇帝は見舞いに行くと、過去の話ばかりルキナに聞かせる。しかし、ルキナは嫌な顔一つせず、父の話に相槌をうっていた。御年265歳。神族の中でもずば抜けて高齢だ。むしろ今までよく持った方だと、感心してしまうくらいに。

  

「フィオガはどうしておる?」


「兄上ですか? 今夜開かれるパーティーの準備をしているはずですが」


 ここにきて、初めてアレスは過去以外に関心を向けた。 

 

「パーティー……。おお、そう言えば今夜じゃったか。ルキナ、お前も出席するのか?」


「はい。クロノス……、友人と約束しましたし」


「そうか。心許せる友は、貴重じゃぞ。この歳になってようやっと気づいた。わしの人生、真に友と呼べる者が果たしていたかどうか。ふふ、皇帝になどなるものではないな」


「そんな! 父様はご立派でした。わたしは心より尊敬しております」


「ははは。長生きはするものじゃな。老いてからできた孫のような娘であるお前が、素晴らしい宝に見える。じゃが……」


 ここで、父の瞳に翳りが見えた。

 意識が朦朧としているのだ。ルキナの手に重ねられた骨と皮だけになったアレスの手。その手がブルブルと震えだしていた。

 

「ルキナ。わしは悲しい。お前がこれから血塗られた皇族の道を一人で歩もうと言うのに、わしは何もお前にしてやれん」


「元老院の者どものことを仰られているのでしょうか? わたしはあのような雑魚どもに……」


「違う。違うのだ。ルキナ、前だけを見るな。可愛い娘よ。天を見よ。地を見よ。そしてなによりすぐ側を見よ。世界は敵で満ち溢れておるわ」


「……何を」


「わしが皇帝になって一番最初にしたことは、自らの弟を暗殺することじゃった。そして次にしたことは、反逆する地上の国家を根こそぎ消滅させること。皇帝の地位を守る為に、わしの剣は何百万という血を吸ってきた」


「でも。それは……、それは帝国を守るために、致し方なかったことなのでしょう?」


「その通りだ。だが、愛すべき帝都の民を、戦に巻き込み、意図して見殺しにしたこともある。わしの命令に逆らう大衆を焼き払ったこともある。……ああ、長い年月をわしは生き過ぎた。皇帝とはなんと罪深いものなのだろうな」


「確かに失ったものは大きいのかもしれません。でも、得たものもあるでしょう? わたしはお父様がそれほど罪深いようには思えません。民は時として愚かなもの。その時々によって我々が、粛清することも必要でしょう」


「……上位存在としての神の義務か。おお、ルキナよ。お前は賢い。それゆえに愚かでもある。未だに裏切られたことのないお前に、この世界はさぞや美しく映っているであろう。愚かなのは我々も同じなのだ」


「父様は……老いて。神族の王としての責務にお疲れなのです」


「フィ、フィオガもそうだ。あやつの世界は単純すぎる。正義か悪。有益、無益。有力、無力。おぉおお、我が帝国は栄華を極め過ぎたというのか! 始祖よ! 我が先祖ガシャトリア! わしはどうすればいい!」


「ち、父上!?」


 父が何を言っているのか分からなかった。

 いきなり「フィオガ!」と連呼し、血走った眼で、虚ろに叫ぶ。

 

「フィ、フィオガ……。フィオガフィウオガ! フィオガァァアア、貴様貴様きさまあああぁあ! 下賎の血を引く悪魔の息子、貴様の首を撥ねねば! ルキナをぉぉお!」


「と、父様っ」

 

 ベッドの上でのたうち回り始めるアレス。

 まるで水の中で溺れているかのように、天へ向かって手を振り上げる。

 その手をルキナは怯えながら掴んだ。

 眼は落ち窪み、唾液を口の端から垂れ流す。その常軌を逸した行いに、ルキナは思わず椅子から腰を浮かしていた。


「父様! あなたと兄上との間、いったい何が……。敵とは兄上のことなのですか?」


「禍々しきは我が息子よ。禍つ星の皇子。厄災の子よ」


「それは、神託か何かか……もしや、教会が何か。っ誰か、誰かいないか! 陛下が苦しんでおられる!」


 ルキナはもはやその場に黙って立っていることはできなかった。

 彼女の左手が知らず、自分の右手へと触れる。


(熱い)


 目線を落とせば、赤い雫が指先からこぼれ落ちていた。

 あの時、熱波のようなアレスの魔素が、ルキナの皮膚を傷つけていたのだ。

 感情の高ぶりを魔素は忠実に再現していた。

 

(では……兄を憎む父様の気持ちは本当だということなのか)


 思えば仲の良くない親子だと、幼心にもそう記憶していた。

 彼らが話をするのは、年に二回ほど。それも儀式か祭典にしか、兄は出席しない。否、父がさせなかったのだ。

 

(兄上の悪い噂は、わたしも知っている。だが、あれは元老院議員が吹聴した嘘八百ではなかったのか)


 噂―――。

 最近はほとんど地上で、戦争に明け暮れているフィオガ。

 彼は捕虜にした何万というエルミラを、串刺しにしたり、飛竜の餌にしたりと、随分な残虐行為に耽っているとのことだ。

 

(義姉様との婚約から少しは丸くなったと思ったが)


 ルキナの頭に、フィオガとの思い出がさっと浮かんだ。

 いつか兄にクロノスを紹介した時のことだった。


『ははははは! ルキナ、遠慮するな! あの半神半人が好きなのだろう! ならば男娼にでもして、飼ってやればいい!』


「~~~~っ」


 彼女の頬がさっと赤くなり、恥辱と後悔に唇を噛み締める。

 碌な思い出がなかった。

 兄はルキナに何か怨みでもあるのか。そう言いたいくらいに傍若無人だった。

  

 と、その時だった。

 

「ル、ルキナ様! 陛下はご無事ですか!」


 アレスの主治医がやっと到着したのは。

 

「疲れてお眠りになったのか。お呼びしても反応がないのだ」


「呼吸と脈は異常ありませんな。姫殿下はおさがりを。あとはわたしが」


「うむ。頼む」


 ルキナは真っ白な顔で、死んだように眠る父の寝台から逃げるように離れた。

 足早に扉を抜けて、階段を飛ぶように駆けていく。

 エレベ―タ-について、やっとのことで息を吐いた。


(クロノス……)


 なぜか無性に、彼に会いたくなった。

 ぶっきらぼうで、無表情で、人を小馬鹿にしたような冷たい少年。

 

 それなのに……。


(あいつに会いたい……。会いたいよ。クロノス)


 ルキナの足は自然とパーティー会場である片離宮へと向かっていた。

 時刻はもう夕刻を過ぎている。

 このままだと完全に遅刻だった。

 



これでラノベでいう一区切り。

起承転結でいう一巻の『起』となります。

感想お待ちしております。

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